January 8, 2021
キヤノンメディカルシステムズ株式会社(本社:栃木県大田原市 社長:瀧口 登志夫 以下、キヤノンメディカル)は、蛍光LAMP法(注1)による「新型コロナウイルスRNA検出試薬 LAMPdirect / Genelyzer KIT(以下、本試薬)」を研究用試薬として、本日より販売を開始します。
本試薬は、株式会社島津製作所のAmpdirectTM技術による専用試薬「LAMPdirect」(注2)を用いており、検体採取後、結果を得るまで約30分(注3)と大幅な時短を実現しました。なお、本試薬の性能評価については、昨年10月に国立感染症研究所のホームページで公表 (注4) され、行政検査に使用可能です。(10月23日付プレスリリース)
すでに販売中の研究用試薬「新型コロナウイルスRNA検出試薬 Genelyzer KIT」は、新型コロナ対策として昨年4月末の長崎クルーズ船乗組員集団感染での行政検査などで活用され、迅速・高感度な遺伝子検査法として評価されてきました。一方、お客様から「前処理法の省力化、さらなる時間短縮を」との声も多く寄せられていました。本試薬は、採取した検体をLAMPdirect溶液に添加後、90℃で5分加熱処理するだけで、ウイルスを不活化、LAMP阻害物質の作用を抑制できます。従来の代表的な抽出法と比較して前処理時間は半分以下、手順も11ステップから3ステップと大幅に省力化することで、手技ミスやコンタミネーションなどの検査リスクも低減します。また、検出用試薬も事前に調製(混合)した「プレミックス試薬」を実現し、検出試薬調製作業の省力化を進めました。
本試薬は、昨年11月8日に国立代々木競技場で開催された「体操国際競技会 Friendship and Solidarity Competition(友情と絆の大会)」の前日までに、実用試験として約200名の大会・報道関係者に対するオンサイト検査を実施、検体受理から最短42分(注5)での検査結果報告を実現しました。国際体操連盟の渡邊守成会長からは、『各種スポーツ大会が新型コロナにより相次いで中止となる中、 開催条件となる感染症対策の大きな武器となり大会開催を可能にしてくれた』と、高く評価いただきました。
今後、スポーツやコンサートなどのイベント会場や、空港・埠頭などの検疫所、災害被災地のボランティア受け入れ、さらには救急搬送者や術前検査のような緊急性の高い医療現場など、より迅速に、かつ高感度な遺伝子検査が求められるシーンでの活用が期待されます。
本試薬が活用されることにより、国内の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大防止に貢献し、感染拡大防止に取り組まれているすべての関係者様の負担軽減に寄与してまいります。
注意: 本キットは研究用試薬です。医薬品医療機器法に基づく体外診断用医薬品としての承認・認証などを受けていません。ただし、「臨床検体を用いた評価結果が取得された2019-nCoV遺伝子検査方法について」(厚生労働省健康局結核感染症課 国立感染症研究所 2020年10月23日版)に記載され、厚生労働省の通知により保険適用の対象となっています。また、本試薬の使用には、専用装置 Genelyzer Fシリーズ に加え、分注ピペット、小型遠心機をはじめとする機材や、試料・遺伝子の取扱技術を要します。
注1: LAMP:栄研化学株式会社が開発した核酸増幅法(Loop-Mediated Isothermal Amplificationの略)
注2: 株式会社島津製作所のPCR検査用試薬「Ampdirect™ 2019-nCoV検出キット」の検体処理液を蛍光LAMPに適用した専用前処理試薬
注3: 前処理時加熱時間5分、測定時間20分、前処理液と検体の混合などその他作業約5分(検体数が多い場合など、30分を超えることもあります)
注4: https://www.niid.go.jp/niid/images/lab-manual/2019-nCoV-17-current.pdf
注5: 対象の検体以外の検体収集などその他作業時間も含まれるため、30分よりも長い