November 14, 2024
キヤノンメディカルシステムズ株式会社(本社:栃木県大田原市、代表取締役社長:瀧口 登志夫 以下、キヤノンメディカル)は、超音波診断装置「Aplio iシリーズ」のアプリケーション「Liver Package」を用いた非侵襲的な肝病態の評価法を検証する研究を支援しています。この度、多施設共同研究「iLEAD (innovative Liver Elasticity, Attenuation, and Dispersion ultrasound study)」において、「Liver Package」の「Attenuation Imaging(ATI)」、「Shear Wave Dispersion(SWD)」、「Shear Wave Elastography(SWE)」から得られる情報が、肝臓の脂肪化、炎症、線維化と関連があることが確認され、研究成果に関する論文が国際学術誌「Radiology」に採択され臨床エビデンスとして掲載されました。
また、多施設共同研究「ATiMIC Study(Attenuation image Multi-Institution Center study)」では、「ATI」の検査による肝脂肪化の診断の正確性を検証しており、2024年11月15日から米国サンディエゴで開催される米国肝臓学会議(AASLD)にて、研究の成果が発表される予定です。
近年、慢性肝疾患の原因として脂肪性肝疾患が急速に増加しており、アルコール歴や他の肝疾患に関わりのないMASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)が新たに提唱されました。肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、初期は自覚症状がなく、脂肪肝炎、肝硬変、肝がんへと進行する可能性があるため、早期発見が重要とされています。しかし、その評価法や治療のモニタリングに関しては、肝臓の組織の一部を採取し、顕微鏡などで観察をする肝生検が必要であり、患者さんの負担が大きく、臨床で簡単に使える非侵襲的な評価法が求められています。今回の研究成果が、今後、日常的な診療における非侵襲的な肝病態評価へ応用されることが期待されます。
「Liver Package」の特長と多施設共同研究「iLEAD」で得られた評価
【多施設共同研究「iLEAD」について】
本研究は、東京医科大学 森安 史典名誉教授、消化器内科学分野 杉本 勝俊准教授らが、肝生検で診断したMetabolic Dysfunction Associated Steatotic Liver Disease (代謝機能障害関連脂肪性肝疾患:MASLD)およびMetabolic Dysfunction Associated Steatohepatitis (代謝機能障害関連脂肪肝炎: MASH)の患者さんに対して、超音波画像マーカー(DS、AC、SWS)を用いてそれぞれ測定し、各画像マーカーと肝生検による病理学的な因子(炎症、脂肪化、線維化)との関連について評価を行いました。本研究は、日本を中心としたアジア各国、米国、および欧州を含む多施設国際研究として行われ、その成果が2024年8月20日に国際学術誌「Radiology」に掲載されました。本研究で「SWD」、「ATI」、「SWE」から得られる情報による肝臓の炎症・脂肪化・線維化の評価がそれぞれ立証されたことにより、日常的な診療で非侵襲的に肝病態評価を適切に行うことが期待されています。
【多施設共同研究「ATiMIC Study」について】
本研究は、兵庫医科大学 消化器内科 飯島 尋子教授を研究総括者とし、国内11施設が参加しています。本研究では、「ATI」から得られる情報と、肝生検やMRIを用いて肝臓内の脂肪と水の比率を測定するPDFF(Proton Density Fat Fraction)の結果を比較し、「ATI」の検査による肝脂肪化の診断の正確性を検証しています。従来の超音波Bモードによる検査では診断が難しかった少ない脂肪量が「ATI」で診断できるようになれば、客観的な数値によって進行度合いの目安とすることができるとともに、MASLDやMASHを早期に発見することが期待されています。本研究の成果は、2024年11月15日からサンディエゴで開催される米国肝臓学会議(AASLD)にて発表される予定です。
キヤノンメディカルは、これらの研究を通して得られたエビデンスのもと、更なるアプリケーションの開発、普及を進めることで、肝疾患の早期発見、診断のサポートを図ります。