August 7, 2001
株式会社東芝 医用システム社(カンパニー社長:桂田 昌生)は、マルチスライスCTスキャナの新製品として、X線管球1回転を0.5秒で行い、最小0.5mmのスライス幅で16スライス同時に撮影することによって、高精細な画像を短時間で撮影できる「Aquilion Multislice System(16スライス/0.5秒)」を商品化します。また、日本市場向けには8スライス同時撮影機種の「Aquilion Multislice System(8スライス/0.5秒)」もあわせてラインナップします。国内販売は東芝メディカル株式会社が行い、本日から8スライス型の販売活動を開始します。
Aquilion Multislice System(16スライス/0.5秒) 従来のマルチスライスCTスキャナは、X線管球が0.5秒で1回転する間に、4スライスの画像(最小スライス幅0.5mm)を同時に撮影できました。
新製品は、X線検出器における世界最小の検出素子(スライス幅0.5mm)を従来の4列から16列に増やすとともに、多量のデータを短時間で処理する新開発の収集データ処理システムを採用することによって、X線管球が0.5秒で1回転する間に、最小0.5mmのスライス幅で16スライスの画像を同時に撮影することができるようになり、高精細な画像の短時間撮影を実現しています。
新製品は、穿通枝などの微細血管の描出、高分解能中耳像の描出、高精細肺癌検診、多相造影検査、救急患者の緊急高速検査、体動静止が困難な小児や病人の検査、心臓などの激しく動く臓器の検査などに効果が見込まれます。また、病院経営面でも、検査時間の短縮による検査数の向上、X線管の寿命の伸長によるコストの削減などが期待できます。
なお、新製品の国内販売価格は12億円からで、日本市場において販売開始後1年間で100台の販売を目標としています。
* スライス幅0.5mmで4スライスの撮影が可能な当社従来機種「Aaquilion Multislice System(4スライス/0.5秒)」などによる同じ領域の撮影と比較した場合
マルチスライスCTのもたらした最大のメリットの1つが、isotropic*(アイソトロピック)な、高分解能、高画質のイメージングだと言われています。特に0.5mmスライスによる高分解能撮影は、今まで描出が困難だった微細な血管や患部の撮影を実現しました。
しかし、薄いスライスで広い範囲を撮影するには時間がかかるため、微細な検出素子の更なる多列化による撮影時間の短縮が求められてきました。
このようなニーズに対し当社は、微細な検出素子の多列化に伴うデータ発生量の増大に対応した高速収集データ処理システムを開発し、0.5mmスライスで16スライス同時撮影が可能な新製品を商品化します。
* isotropic
「等方性」という意味で、3D画像を作成する時に、使用するデータが、X軸、Y軸、Z軸の各方向ともほぼ同じサイズの立方体として得られること(どの方向にも等質な高い分解能を有するという意味でこの言葉を用いる)。
藤田保健衛生大学 片田教授はマルチスライスシステムが持つべき最も重要な特性として、これを提唱されています。
1.SSMD方式のマトリクス検出器
SSMD*(Selectable Slice thickness Multi-slice Detector)方式の採用により、高速スキャン、高分解能スキャンのいずれにも対応できます。検出器は、約3万5千超の素子から構成されており、体軸方向にも精度の高いデータが得られ、高分解能でシャープな画像が得られます。中央には最少0.5mm用の素子を配しており、0.5mm×16スライスのisotropic分解能の高画質画像を得ることが可能です。
* SSMD
Selectable Slice thickness Multi-slice Detectorの略。精密加工された検出器。素子の出力を束ねることにより、任意のスライス幅を選択可能にしました。束ねられた出力は収集装置(DAS)に送られます。このDASが16スライスシステムでは16あることになります。
2.高速スキャンを実現
1回転で、16スライスの同時収集とともに、1回転0.5秒の高速スキャンができます。スライス厚0.5mmだと30cmの領域を約15秒でスキャン可能です。
撮影が短時間で終了することから、患者を早く開放でき、また管球に対する負荷も小さく、冷却待ちがなくなるので、スループットが向上します。
* ヘリカルスキャン方式
X線管の連続回転照射と寝台の連続スライドの組み合わせで、体軸方向に沿ってらせん状に撮影データを連続収集するスキャン方式。1断層撮影ごとに寝台をずらして間欠的に撮影データを収集する方式に比べ、臓器全体などの広範囲を高速に撮影できます。
3.高画質 0.5mmのような薄いスライス厚のヘリカルスキャンをルーチンで使用することが可能になり、高分解能ボクセルデータに基づく、高精細で、滑らかな3D画像、MPR画像が得られます。
4.検査効率の向上
一連の検査で必要なスライス厚のうち、1番薄いスライス厚で収集すれば、再構成リトライトでほぼ任意のスライス厚の画像を後から作成することができるため、ルーチン検査、精査、3D作成用のデータを1回のヘリカルスキャンで収集することが可能です。
これにより、従来のような再撮影ということをなくせます。なお、再構成時間は最短0.5秒の高速処理を実現しています。
5.優れた操作性
マルチスライスの大容量データを快適に扱う数々の機能を搭載しています。多くの画像を効率よく扱うためのイメージマトリクス表示や、スキャン後に自動的にMPRを作成する機能のほか、実際にフィルムに出力されるイメージ(仮想フィルム)を表示し、編集が扱えるフィルム処理機能などを搭載しています。
6.リアルタイム技術
世界最速秒速12枚のスピードでスキャン中にリアルタイムにCT再構成画像を表示できるので、スキャン位置や方向の確認、造影効果の確認が即座にでき、救急患者の検査で威力を発揮します。
またこの技術を応用して造影剤の流入を自動検知し、最適なタイミングでスキャンを開始する当社独自の技術「リアルプレップ」も標準装備しています。「リアルプレップ」は造影検査では欠かせない機能として定着しています。
7. 患者被曝の低減
管電流を連続的に変化しながらヘリカルスキャンを行い、撮影部位によって最適なX線量に制御することができます。これにより、患者の被曝量を低減するとともに、撮影部位に依存しない高画質が全撮影領域で得られます。
検出器 | SSMD 896チャンネルx40エレメント |
スキャン時間 | 0.32(ハーフ)、0.5、0.75、1、1.5、2、3 秒 |
収集スライス厚 | 0.5、1、2、3、4 mm |
X線管 容量 | 7.5MHU(MegaCool) |
X線管 冷却効率 | 1,386KHU/min |
X線出力 | 120KV/500mA |
撮影範囲 | 最大500mm |
ガントリ開口径 | 72cm |
ガントリチルト角 | +/- 30度 |
画像再構成時間 | 最短0.5秒 |
リアルタイム画像再構成時間 | 12画像/秒(1スライス512x512再構成時) |
磁気ディスク保存容量 | 生データ4,000回転分、画像データ60,000枚 |
造影剤検知自動スキャン機能 | リアルプレップ標準搭載 |
3次元処理 | 高精細ボリュームレンダリング(カラー)機能標準搭載 |
以上