May 16, 1997
株式会社東芝 医用機器事業部長附 飯沼一浩(58)は「超音波診断装置の開発」の功績により、平成9年春の褒章「紫綬褒章」を受章しました。4月28日(月)に公示され、5月13日(火)に虎ノ門パストラルで伝達式が行われました。
飯沼は、1971年に東京芝浦電気(株)に入社し、以後、超音波診断装置をはじめとした医用機器の研究開発に従事し、医用機器技術研究所所長、医用機器技師長、首席技監などの医用機器事業の研究開発部門の要職を歴任し、医用機器の発展に貢献してきました。
飯沼が、超音波診断装置の研究開発に取り組んでいた1978年当時は、心臓や血管内の血流動態の実用的な検査法は、血管にチューブを挿入し造影剤を注入しながらX線で観察する「血管造影法」以外になく、患者の負担が大きく、危険性も高いものでした。
飯沼は、安全で非侵襲的な超音波ドプラ法の研究に取り組み、断層像と血流を同時に観測できる「複合ドプラ法」を発明して、1980年世界ではじめて実用化し、「血管造影法」に替わる「超音波ドプラ法」の実用化の基礎を築きました。
さらに、「パワードプラ法」を開発し、とくに肝臓や腎臓などの腹部血流の検査に有力な手段の基礎を提供しました。また、断層像上にマーカを設定するだけで心拍出量を正確に測定できる「超音波血流量計測法」も発明し、超音波診断法の分野に定量診断の道を開きました。超音波診断装置の開発は、超音波医学の広範かつ急速な進歩を早vし、医療福祉の向上に大きく貢献することとなりました。
また、これら全ての技術は、超音波診断装置の国内市場・世界市場でトップシェアを持つ当社の製品に応用されているのはもちろん、他社にもライセンスされて、現在全世界で約2,000億円とされる新たな産業分野を生み出し、電子産業の発展にも大きく貢献しました。
(関連特許:特許第1598317号 超音波診断装置 他)
今回の受章にあたり、飯沼は次のようにコメントしています。
「早い時期に良い研究テーマに遭遇できて幸運であり、また、上司、仲間、ご協力いただいたドクターの皆様にたいへん恵まれました。私の行った発明・改良はごく小さな種の部分ですが、多くの方々のご努力により広く世の中で使用され、医療に役立っていることは大きな喜びです。関係者の方々に心から感謝いたします。
高度成長の時期を過ぎた現在の日本では、独創的な研究開発をもとに新たな事業を開拓していくことがますます重要になっています。新しい道を開拓する意欲と執念とをもったとくに若い研究者・技術者の活躍を大いに期待しています。