November 8, 2002
株式会社東芝は、16スライス同時撮影が可能なマルチスライスCTとして、世界最小の0.5mmスライス幅での撮影を実現した「Aquilion Multislice (16スライスシステム)」の国内向け販売・納入を本格的に開始いたします。既に9月から日・米・欧の医療施設に設置*し、本格的な臨床が開始されました。当社は、平成15年3月までに「Aquilion Multislice (16スライスシステム)」について国内で75台の納入を計画しています。国内外の医療機関で本システムが本格的に導入されることにより、CT診断は従来の診断分野に加え、循環器疾患診断でも優れた成果をあげていくことが期待されます。 「Aquilion Multislice (16スライスシステム)」は、体軸方向に世界最大32mmの検出器を搭載し0.5mmから2mmまでのスライス幅で16スライス同時撮影が可能です。0.5mmスライスによる高分解能撮影により、従来のマルチスライスCTでは達成できなかった心臓全領域に亘る冠状動脈の描出や、脳血管領域での微細な血管構造の描出を可能としました。また、体躯部の検査においても世界で唯一2mmスライス幅で16スライス同時撮影できることから、頚部から恥骨までの高分解スキャンが僅か8秒で完了することができる等、患者の負担軽減と検査効率の向上を実現します。
* Aquilion Multislice (16スライスシステム) 臨床開始施設
藤田保健衛生大学 (愛知県)
Johns Hopkins University (米国 メリーランド州)
Humboldt University Hospital Charite (ドイツ ベルリン)
製品名 | 型名 | 価格(税別) | 販売目標(年間) |
Aquilion Multislice | TSX-101A | 14億円 | 200台(国内) |
Aquilion Multislice (16スライスシステム)は、心臓・脳における微細血管の抽出、体躯部の広範囲な高分解能撮影において、これまでのマルチスライスCTを超える機能を実現します。
(1) 心臓検査では、世界最小0.5mmのスライス幅と世界最短の時間分解能、加えて世界トップレベルのS/N特性により、従来マルチスライスCTでは達成できなかった心臓全領域に亘る微細な冠状動脈の描出が可能となります。起始部・分枝部等の血管構造の把握、並びに現在CTに期待が集まっている冠状動脈壁の石灰化・ソフトプラーク・壁部の分離評価が飛躍的に向上します。これは16列マルチスライスCTの中でもAquilion Multislice (16スライスシステム)の特筆すべき性能であり、臨床サイトで実証されています。循環器疾患診断の分野において、特に心臓検査での導入が進展するものと期待されています。また、診療のワークフロー変革による患者の負担軽減と検査効率の向上が期待できます。
(2) 脳血管領域での検査(頭部CTアンジオ)では、検出器の優れたS/N特性と、より忠実な画像再構成手法(特許登録済)により、クリップ等からの金属アーティファクトの影響もなく、より微細な血管構造の描出が可能です。動脈瘤、血管狭窄、血管奇形等の診断がよりミクロなレベルで達成でき、CTアンジオが益々定着してゆくものと思われます。それによって、患者の負担並びに病院の経済的負荷が軽減できます。
(3) 体躯部の検査では、Aquilion Multislice (16スライスシステム)は世界で唯一 2mmスライス幅で16スライスの同時撮影ができることから、胴体部分(頚部から恥骨まで)の高分解能スキャンが僅か8秒で完了します。この検査時間の短縮は、呼吸休止が困難な患者にとっては検査受診時の大きなメリットとなり、スクリーニング目的から術後のフォローアップまで、ワンストップボリュームイメージングとして不可欠な検査となると予想されます。
(4) Aquilion Multislice (16スライスシステム)では検出効率の高いX線検出器によって、低線量でも高画質を実現しており、米国の医療情報WEBサイト掲載データによるとAquilion Mulitislice はマルチスライスCTの中で患者被曝が世界最小となっています(www.auntminnie.com に掲載)。
Aquilion Multislice (16スライスシステム)は、診療報酬・保険制度が変革され診療業務の効率対費用が厳しく問われようとする日本の医療環境ニーズに応えるCTとして市場から大きな注目を集めています。
なお、東芝は国内CT市場でトップシェアを維持しており、当社は本システムの本格投入により、マルチスライスCT市場での60%以上のシェアを堅持していきます。
1.SSMD方式のマトリクス検出器
SSMD(*1)(Selectable Slice thickness Multi-slice Detector)方式の採用により、高速スキャン、高分解能スキャンのいずれにも対応できます。検出器は、約3万5千超の素子から構成されており、体軸方向にも精度の高いデータが得られ、高分解能でシャープな画像が得られます。中央には最小0.5mm用の素子を配しており、0.5mm×16スライスのisotropic(*2)分解能の高画質画像を得ることが可能です。
*1 SSMD
Selectable Slice thickness Multi-slice Detectorの略。精密加工された検出器。素子の出力を束ねることに より、任意のスライス幅を選択可能にしました。束ねられた出力はデータ収集装置(DAS)に送られます。このDAS が16スライスシステムでは16あることになります。
*2 isotropic
「等方性」という意味で、3D画像を作成する時に、使用するデータが、X軸、Y軸、Z軸の各方向ともほぼ同じサイズの立方体として得られること(どの方向にも等質な高い分解能を有するという意味でこの言葉を用いる)。藤田保健衛生大学 片田教授はマルチスライスシステムが持つべき最も重要な特性として、これを提唱されています。
2.高速ヘリカルスキャンを実現
1回転で、16スライスの同時収集とともに、1回転0.5秒の高速スキャンができます。
スライス厚0.5mmだと30cmの領域を約15秒でスキャン可能です。
撮影が短時間で終了することから、患者を早く開放でき、また管球に対する負荷も小さく、冷却待ちがなくなるので、スループットが向上します。
* ヘリカルスキャン
X線管の連続回転照射と寝台の連続スライドの組み合わせで、体軸方向に沿ってらせん状に撮影データを連続収集するスキャン方式。1断層撮影ごとに寝台をずらして間欠的に撮影データを収集する方式に比べ、臓器全体などの広範囲を高速に撮影できます。
3.高画質
0.5mmのような薄いスライス厚のヘリカルスキャンをルーチンで使用することが可能になり、高分解能ボクセルデータに基づく、高精細で、滑らかな3D画像、MPR画像が得られます。
多列化に伴う画像再構成上のひずみを東芝独自の再構成アルゴリズム(特許登録済)によって取り除き、16列マルチの中でもトップクラスの画質を実現しています。尚、この再構成アルゴリズムの採用で16列では困難とされてきたティルトヘリカルもAquilion Multislice (16スライスシステム)では実現されています。
4.検査効率の向上
一連の検査で必要なスライス厚のうち、1番薄いスライス厚で収集すれば、再構成リトライでほぼ任意のスライス厚の画像を後から作成することができるため、ルーチン検査、精査、3D作成用のデータを1回のヘリカルスキャンで収集することが可能です。これにより、従来のような精査のための再撮影をなくせ、患者への被曝も軽減できます。なお、再構成時間は最短0.5秒の高速処理を実現しています。
更に、新設計の寝台を採用する事で、撮影範囲が世界最長(東芝調査)の180cmまで拡張されますので、患者の位置変更無しに全部位を一回の位置決めで撮影可能です。救急時等の対応で患者への負担軽減と検査効率の向上が図れます。
5.優れた操作性
マルチスライスの大容量データを快適に扱う数々の機能を搭載しています。多くの画像を効率よく扱うためのイメージマトリクス表示や、スキャン後に自動的にMPR画像を作成する機能のほか、実際にフィルムに出力されるイメージ(仮想フィルム)を表示し、編集が扱えるフィルム処理機能などを搭載しています。
6.リアルタイム技術
世界最速秒速12枚のスピードでスキャン中にリアルタイムにCT再構成画像を表示できるので、スキャン位置や方向の確認、造影効果の確認が即座にでき、救急患者の検査で威力を発揮します。またこの技術を応用して造影剤の流入を自動検知し、最適なタイミングでスキャンを開始する当社独自の技術「リアルプレップ」も標準装備しています。「リアルプレップ」は造影検査では欠かせない機能として定着しています。リアルタイム技術はIntervention術で有用な「CT透視」にも応用されており、Aquilion Multislice では3断面CT透視を世界で初めて実現しています。
7.患者被曝の低減
管電流を連続的に変化しながらヘリカルスキャンを行い、撮影部位によって最適なX線量に制御することができます。これにより、患者の被曝量を低減するとともに、撮影部位に依存しない高画質が全撮影領域で得られます。
米国の医療情報WEBサイト掲載データではAquilion Multislice は世界最小の患者被曝です。
型式:TSX-101A | |
検出器 | SSMD 896チャンネルx40エレメント |
酬・時間 | 0.32(ハーフ)、0.5、0.75、1、1.5、2、3 秒 |
収集スライス厚 | 0.5、1、2、3、4 mm |
X線管 容量 | 7.5MHU(MegaCool) |
X線管 冷却効率 | 1,386KHU/min |
X線出力 | 120KV/500mA |
撮影範囲 | 最大500mm |
ガントリ開口径 | 72cm |
ガントリチルト角 | +/― 30度 |
画像再構成時間 | 最短0.5秒 |
リアルタイム画像再構成時間 | 12画像/秒(1スライス512x512再構成時) |
磁気ディスク保存容量 | 生データ3,600回転分、画像データ60,000枚 |
造影剤検知自動スキャン機能 | リアルプレップ標準搭載 |
3次元処理 | 高精細ボリュームレンダリング(カラー)機能標準搭載 |
以上