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May 15, 1998

世界初の「架台自走式ヘリカルCTスキャナ」の発売について ― 手術中にヘリカルCTを撮影することができ、手術の安全性や手術精度が向上 ―

 当社は、世界で初めてCT本体(架台)側を連続スライドさせる方式を採用することで、手術室内で術中にヘリカル (*1)CTを撮影することができるX線CT装置「架台自走式ヘリカルCTスキャナ」を製品化し、4月から受注活動を開始しました。

 従来のヘリカルCTは、本体を固定し寝台を移動させることにより身体の連続した断層画像を撮影するため、精密に連続スライドするCT専用寝台が必須で、手術用寝台を使用する手術中(閉創前)はヘリカルCTによる撮影は不可能でした。

 新製品は、本体側を連続スライドさせることで、寝台を固定した状態でヘリカルCT断層像を入手できるため、手術中の病変部位除去の確認や出血の有無の確認などが随時可能となり、手術の安全性、手術精度の向上が期待できます。特に手術視野が非常に狭く周辺に重要組織があるなど、病変の広がりを十分確認できない脳神経外科、耳鼻咽喉科、眼科等に関連した深部病変の手術や脊椎外科等のケースで有用であると思われます。

 新製品は医療機関の要求に合わせた受注生産となるため、販売価格は仕様により異なります。なお、販売は東芝メディカル株式会社が行います。

 *1:X線管の連続回転照射と寝台の連続スライドの組み合わせで、体軸方向に沿ってらせん状に撮影データを遵続収集するスキャン方式であり、当社が基本特許を有しています。1断層撮影ごとに寝台をずらして間欠的に撮影データを収集する従来のCT撮影方式に比べ、息者の一呼吸停止間に広範囲を高速に撮影できます。また、ヘリカルスキャン方式で収集したデータは従来のCT撮影方式と比較して体軸方向に2倍の空間分解能を持つため、高精細3次元表示等の元データとしても不可欠なものです。

開発の背景と狙い

 X線CT装置は、コンピュータを用いて人体の断層を撮影する画像診断装置で、身体にメスを入れること無く人体深部の診断が容易にできることから、医療機関での導入が進んでおり、現在、日本国内で約1万台が稼働しています。
 当社が世界に先駆けて開発に成功したヘリカルスキャン方式のX線CT装置は、臓器全体に対し短時間で精密な検査ができるため、撮影中呼吸を止める必要のある肺の検査のほか、腹部造影検査、救急外傷患者及び治療装置との組み合わせによる手術支援など広範囲にわたり利用が進んでいます。
 従来のヘリカルCTスキャナは本体を固定し、テーブルを連続スライドすることにより連続した断層画像を得ていました。そのため、精密に連続スライドするCT専用テーブルが必須でした。即ち手術専用の寝台を必要とする手術の最中にはヘリカルCTは撮影できないとされていました。しかし、精密な連続したヘリカル断層画像を手術中に適宜確認する事は、手術アプローチ方向や残存病変等の確認に大変有効であることから、手術用寝台でもヘリカル画像が撮影できるCTシステムが望まれておりました。当社はこのようななニーズに対応するため、本体を連続移動させる「架台自走式ヘリカルCTスキャナ」を開発することで、手術用寝台等の固定型寝台でも適宜ヘリカルスキャンができるようにしました。

新製品の主な特長

  1. 手術支援に有用
     本体スライドによるヘリカルスキャンを可能にしたことで、手術の最中にも患者を動かすことなく適宜ヘリカルスキャンを実施し、手術中の断層像が手術室内に設置したモニタで確認できます。そこで万一、残存病変や術後出血が認められたとしても手術室内の操作パネルで直ちに本体を待避させ追加手術を行うことが可能ですので手術の安全性、手術精度の向上を図ることが期待できます。
  2. 高性能・高画質
     本体スライド方式でもCTの基本性能は変わりません。スキャン時間は最短0.6秒。画像再構成時間も最短2秒を実現できます。本体スライドの制御も従来のCT専用テーブルと同等の性能を有し、ヘリカルスキャン時の本体スライド速度は0.5mm/秒から30mm/秒の範囲で0.1mm/秒単位で任意に設定が可能で、スライス幅も、1,2,3,5,7,10mmの6種類をサポートしています。画質は標準型CTと同一の性能を提供でき、末梢血管の検出も容易で、血腫や早期癌などについても診断が容易です。
  3. リアルテクノロジー対応
     本システムにはリアルタイムヘリカル機能を別途装備することができます。リアルタイムヘリカルの働きにより、手術中CTの画像が秒間3コマから6コマのスピードでリアルタイムに手術室内モニターに表示され、手術の経過を迅速に確認できます。さらに、30mA~50mA程度の低mA条件でリアルタイムヘリカルを実行しリアルタイムに画像を確認しながら病変の摘出等を行うことも可能ですので精度の高い手術を行うことができ、患者の負担を極力減せるなど、最小侵襲治療(Minimal invasive therapy)への応用が期待できます。
  4. 人間工学を重視したデザイン・簡単操作
     コンパクト化を図りながらも、世界最大の72cmの本体開口径を確保しており、CTガイド下で手術を行う際や麻酔時に患者へのアクセスが容易となります。また、本体は手術室内簡易操作スイッチで電動で移動させることができます。移動速度は最高50mm/秒で、本体はタッチセンサ機能を有しており本体スライド中に術者や周辺機器に触れた場合に自動的に停止します。簡易操作卓を手術室内に設置しているため、スキャンプランの選択、スキャンの開始・中断も迅速に行うことができます。

以上