July 9, 2002
株式会社東芝は、高磁場MRI装置の新製品として、高画質・高速撮影、静音化、操作性向上を実現した「EXCELART™シリーズ(SPIN Edition)」を商品化します。新製品は、東芝独自の「SPIN Technology」を搭載することで検査効率を高め、より多くの検査を行なうことができます。新製品の国内販売は東芝メディカル株式会社が担当し、本日より営業活動を開始します。
新製品は、当社が世界に先駆けて開発した8チャネルQD方式を採用した体部用RFコイル「QDトルソSPEEDER」を標準搭載し、画像S/Nを当社従来モデルに対して約1.6倍(*1)に向上することで、より高画質に画像診断情報を得ることができるほか、撮影スピードを従来の最大3倍(*2)に高めることが可能です。
また、検査の際に発生する騒音を聴感で約90%カットして、高級クラスのMRIでは世界一の静音化を実現した当社独自の静音化機構「Pianissimo™(ピアニシモ)」を搭載しており、患者にかかる負担を軽減した診断を可能にしています。
さらに、操作ワークフローの徹底的な見直しを行うことでマウスのクリック回数を約50%(*3)減らして操作性を大幅に改良した新開発のユーザインタフェースや、呼吸などの患者の体動が画像に与える影響をリアルタイムに補正しながら撮影するRMC(Realtime Motion Correction)機能など、撮影における双方向性、リアルタイム性を高める数々の「Interactive(インタラクティブ)」技術(*4)を搭載し、迅速で確実な診断を実現しています。
「SPIN Technology」とは、これら「SPEEDER(スピーダ)」(*5)、「Pianissimo™(ピアニシモ)」、「Interactive(インタラクティブ)」の3つの技術の総称で、「EXCELART™」の性能を最大限に引き出すことで、迅速かつ確実で、患者に負担をかけない診断を可能にする、東芝の高度なMRI技術の結晶です。
*1 新開発のQDトルソSPEEDERを使用した場合における面内平均S/N向上率、東芝従来製品との比較
*2 QDトルソSPEEDERを用いた場合、東芝従来製品との比較
*3 従来製品のスキャンモードと、新開発のシンプルスキャンモードとの比
*4 Interactive技術は、患者、操作者、MRI装置の三者間でのさまざまな情報のやりとりにおいて、その双方向性、リアルタイム性を高め、迅速性・確実性を高める各種の技術の総称です。
*5 SPEEDER技術は、被験体からの信号を複数のRFコイルで並列に受信・処理することによって、撮影スピードを大幅にアップする技術です。一般にはパラレルイメージング法と呼ばれ、その研究の歴史は、東芝とUCSFとの共同研究・発表(1993年)にまでさかのぼります。
商品名 | 形式 | 標準価格(税別) | 販売目標 |
EXCELART™シリーズ | MRT-2001/P3 | 10億5千万円 | 100台/年 |
MRT-2001/P2 | 9億3千万円 |
国内の高磁場MRI市場は毎年成長を続けており、2002年度には約300台に達する見込みです(*1)。この成長の背景には、高磁場MRI装置が持つ高い画像診断能と、検査効率に対する支持があり、今後も、更新時期を迎えた装置を保有する医療施設からの更新需要を中心に伸長が見込まれています。東芝が1999年に製品化した静音型高磁場MRI装置、EXCELART™シリーズは、医療施設での高い評価を得て、2001年度には国内の高磁場MRI市場でトップシェア(*2)を獲得しています。
一方、2002年4月に行われた診療報酬改定では、MRI検査(単純MRI撮影)の保険点数が約3割引き下げられたため、MRI検査を行う医療施設では、検査効率のさらなる向上と、近隣の医療施設からの紹介患者の検査により検査数を増やす必要があり、高磁場MRI装置に対しては、質の高い診断情報が得られるという基本的性能に加えて、より迅速・確実に検査を行う能力が、これまで以上に強く求められています。また、患者主体の医療を目指し、連携する医療施設や地域の患者から広く選ばれる施設となるために、患者に対する検査環境の面での配慮もなされた「患者にやさしい静音型高磁場MRI装置」に対するニーズがこれまで以上に高まるものと考えられます。
今回東芝は、このようなニーズに対応し、「迅速・確実、そしてやさしく」を開発コンセプトとして、「EXCELART™」シリーズの特長である世界一の静音性を継承しながら、画像診断情報の質と検査の効率をより一層高める技術、「SPIN Technology」を開発し、これを搭載した静音型高磁場MRI装置を製品化します。
*1 東芝調べ1.約1.6倍(*)の高S/N性能による高い体部画像診断能
当社が世界に先駆けて開発・採用した8チャネルQD方式を採用した新開発の体部用RFコイル「QDトルソ(体部)SPEEDER」を標準搭載し、画像S/Nを約1.6倍(*)向上しています。この方式は、従来のトルソ用コイルの典型的な方式である4チャネルリニア方式と比べて、使用するコイルエレメントの数を4倍の16個とするなど、高度な回路構成からなる方式です。
約1.6倍の高S/N性能により、胸部、腹部、骨盤部を中心とした広い領域の検査において、空間分解能が1.6倍高い画像を従来と同程度の時間で撮影できます。また、空間分解能を従来と同程度とすれば、半分の時間で従来と同等以上のS/Nの撮影が可能となり、血流や動きを連続的に観察する検査などで、より時間分解能の高い診断情報を得ることができます。
2.最大3倍(*)の撮影スピードなどによる高い検査効率
撮影スピードを最大3倍(*)に高める新開発のパラレルイメージング法、「SPEEDER」技術を 標準搭載しています。高S/N性能を備えた「QDトルソSPEEDER」を用いれば、撮影スピードの高速化にともなって原理的に生じる画像S/Nの低下が補償されますので、画像診断情報の質を保ったまま撮影時間を短縮でき、検査の効率を大幅に高めることができます。
また、「SPEEDER」技術のデータ処理には、専用のデータ処理装置(再構成エンジン)を搭載していますので、検査中に発生するさまざまな処理による負荷変動の影響を受けることなく、 いつでも迅速に画像が得られます。
3.操作回数50%カットの新ユーザインタフェースによる円滑なワークフロー
マウスのクリック回数を約50%(*)減らすなど、操作性を大幅に改良した新開発のユーザインタフェース「SPIN Navi.」を搭載しています。定型的な検査から、高度な精密検査、研究的な検査に至るまで、さまざまな検査シーンに幅広く対応します。例えば、新たに搭載した「シンプルスキャンモード」では、患者登録からフィルミングまでの一連の検査手順が高度にシンプル化・自動化されていますので、簡単・迅速に検査を行うことができます。また、ナビゲート機能によれば、システムが示す手順に沿って操作をするだけで検査をすすめることができますので、操作に不慣れな方でも確実に検査を行うことができます。また、各種の撮影パラメータを必要に応じてフレキシブルに変更できるスキャンモードも備えていますので、システムが備える能力を最大限に活用した高度な検査も行えます。
4.幅広い診断ニーズに応える豊富な臨床アプリケーション
全身各部の検査に対応した臨床アプリケーションソフトウエアパッケージをラインナップしていますので、さまざまな部位の診断に幅広く使用できます。例えば、頭部領域の検査では、脳血管障害による診断に不可欠とされるDiffusion、Perfusion、MRA(MR血管撮影)検査をルーチンで行なえるほか、血管系の検査では、造影MRA検査のほかに、非造影MRA検査も選択できます。
また、心臓の検査では、虚血性心疾患の病態の把握に必要とされる、形態や動き、機能に関する診断情報を提供する撮影機能を備えています。新開発のRMC(Realtime Motion Correction)機能によれば、画像の劣化の原因となる撮影中の患者さんの動きの影響をリアルタイムに補正しながら撮影を行いますので、画像の劣化を抑えた安定した画像が得られます。
さらに新開発の3Dインタラクティブロケータ機能によれば、心臓などの複雑な形態の臓器でも、最適な撮影断面の設定が迅速・確実に行えるほか、動画像を用いた機能診断の適用が広がります。
5.東芝だけの「患者にやさしい静かな高磁場MRI検査」
騒音を90%カットする静音化機構「Pianissimo™」に加えて、大半のルーチン検査の騒音を60dB台にまで低減するソフトウェア「QuietScan」パッケージを標準搭載しています。「QuietScan」は、基本的な撮影条件のほかにMRA用の撮影条件にも対応しており、例えば脳ドック検査を行なう場合でも静かな検査環境で検査が行えます。
これら世界一の静音性に加えて、ショート・ワイドの磁石架台による高い開放性や、撮影スピードや処理スピードの向上による拘束時間の短縮など、患者の負担を軽減したMRI検査が可能です。
商品名 | 超電導式磁気共鳴画像診断装置
EXCELART™ | ||
形式 | MRT-2001/P3 | MRT-2001/P2 | |
磁石システム | 方式 | 高均一、軽量・コンパクト超電導・
アクティブシールド方式 | |
磁場強度 | 1.5 T(テスラ) | ||
傾斜磁場システム | 傾斜磁場コイル | アクティブシールド方式 | |
最大強度 | 30mT/m(/チャネル) | ||
最大スリューレート | 130mT/m/ms(/チャネル) | 50mT/m/ms(/チャネル) | |
RFシステム | 同時接続可能な
RFコイルエレメント数 | 最大16 | |
RFコイル | 頭部QDコイル(QD方式)
CTL脊椎QDコイル(6チャネルQD方式) QDトルソSPEEDER(8チャネルQD方式) ほか(*) | ||
コンピュータ・制御システム | ホストコンピュータ | CPU:RISC型
64ビットメモリ容量:768MB(最大 8,192MB) 磁気ディスク装置:9GB+18GB(榎湊囲・) 光磁気ディスク装置:4.1GB(榎湊囲・) | |
収集・再構成部 | 方式:Interactive対応型
CPU:RISC型64ビット×2(Dual) メモリ容量:3,072MB(最大4,096MB ※)) | ||
ユーザインタフェース | シンプルスキャンモード、ナビゲート機能ほか | ||
ネットワーク接続 | 100BASE-TX、DICOM 3.0 | ||
患者アメニティシステム | 静音化技術 | Pianissimo™QuietScanパッケージ
静音型冷凍機 | |
検査空間 | 患者開口径:655mm、全身コイル内径:600mm | ||
その他 | 双方向音声通話機能、照明・送風機能等 | ||
臨床アプリケーション
ソフトウエアパッケージ(*) | EPI 2002、MRA 2002、
SuperFASE 2002、 Cardiac 2002ほか | ||
設置条件 | 最小設置スペース | 34.4m² |
以上