November 7, 2002
株式会社東芝は、検査の撮影スピード向上と頭部の様々な部分の高画質描出を実現したMRI頭部検査用アレイコイル「QDヘッドSPEEDER」を商品化します。新製品は、被検者からの信号を複数のコイルで並列に受信・処理し、撮影スピードの短縮を可能とするパラレルイメージング法(*1)を頭部検査用アレイコイルに対応させたものです。また、頭部用として世界最多となる10個のコイルエレメントを頭部の前後/左右/体軸の全方向に配置した「Cubic-Geometry(キュービックジオメトリ*2)」構造を採用しました。このことにより、MRI検査の課題であった撮影スピードの向上を実現しながら、高画質で頭部の様々な部位を描写することを可能にしています。
新製品は、パラレルイメージング法への対応として、コイルエレメントを10個に増やし(当社従来製品では2個(*3))、これらを頭部の前後/左右/体軸の全方向に配置しています。断面の方向やエンコード方向などの撮影条件からくる制約を軽減し、頭部の様々な断面の描出にフレキシブルに対応することが可能です。一方、コイルエレメントを多数配列することは、コイルエレメント自体のサイズ設定やエレメント間の磁場の干渉の排除等、技術的課題がありましたが、コイルエレメントを小型化・最適化するとともに、QD(Quadrature)(*4)型コイルエレメントをドーム状に頭部に密着するように配置したことなどにより、従来比、最高約1.5倍から2倍のS/N性能の高画質を実現しました*5。
新製品は、当社の高磁場MRI装置、EXCELART™シリーズ用のオプションとして、国内販売を東芝メディカル株式会社が担当し本日より営業活動を開始します。
*1 パラレルイメージング法とは、被検体からの信号を複数のコイルで並列に受信・処理することによって、撮影スピードを大幅にアップする技術です。当社ではSPEEDER法と呼んでいます。
*2 前後/左右/体軸の全方向に配置する構造を、当社ではキュービックジオメトリと呼んでいます。
*3 頭部QDコイル(形式名:MJQH-127A)との比較
*4 QD(quadrature detection)とは、被検体からの信号を直交配置された2つのコイルで受信し、位相差を補正・加算処理することで信号が2倍、ノイズが約1.4倍となり、結果的にS/N比を約1.4倍向上させる技術です。
*5 頭部QDコイル(形式名:MJQH-127A)に対する同一撮影スピードでの横断面内の平均S/Nの向上率、目の位置で約1.5倍、頭頂部近傍で約2倍
形式 | 標準価格(税別) | 販売目標 |
QDヘッドSPEEDER | MJAH-117A | 2500万円 60台/年 |
パラレルイメージング法は、撮影スピードを大幅にアップし、診断情報の質や検査効率を高める技術として高い関心を集めています。このパラレルイメージング法の利点を最大限に発揮し、かつ高画質を実現するためには、複数のコイルエレメントが多方向に配列されたジオメトリを持った、高S/N性能のアレイコイルが必要とされています。
しかしこれまでは、これらの特性を完備したコイルがなかったため、パラレルイメージング法が適用できなかったり、撮影のスピードアップにともなって原理的に生じるS/N低下に十分に対応しきれずにパラレルイメージング法が適用できるケースが現実的には限られるという問題がありました。
これらの問題に対して当社は、先にパラレルイメージング対応型アレイコイルの第一弾として、高い自由度と高S/N性能を特長とする体部検査用のアレイコイル「QDトルソSPEEDER」を商品化しました(*)。
今回当社は、この設計思想を受け継いだパラレルイメージング対応型アレイコイルシリーズの第二弾として、MRI装置による検査数が最も多く、診断情報の質や検査効率の向上に対する要求が高い頭部検査向けに、アレイコイルを商品化するものです。
* http://www.toshiba.co.jp/about/press/2002_07/pr_j0901.htm 参照この開発に関する学会発表に対しては、第30回日本磁気共鳴医学会大会にて大会長賞(銀賞)を受賞しています。
1.高いフレキシビリティのキュービックジオメトリ(*1)
世界最多の10個のコイルエレメントを前後/左右/体軸の全方向に配置した構造(Cubic-Geometry(キュービックジオメトリ))を頭部用として世界で初めて採用しています。
これにより、断面方向やエンコード方向などの撮影条件に関する制約を受けることなく、パラレルイメージング法(SPEEDER法(*2))をフレキシブルに活用することができます。
*1 前後/左右/体軸の全方向に配置する構造を、当社ではキュービックジオメトリと呼んでいます。
*2 当社ではパラレルイメージング法をSPEEDER法と呼んでいます。
2.約1.5~2倍の高S/Nジオメトリ
コイルエレメントをS/N性能の向上に有利なサイズに小型化したとともに、各エレメントを頭部の形状に合わせてドーム状に配列した密着性の高いジオメトリを採用しています。また、主要な6個のエレメントには高S/N性能を生むQD(Quadrature)方式を採用しています。
これらの高S/Nジオメトリの採用により、頭部全体をカバーする感度領域の広さを維持しながら、従来比で最高約1.5倍から2倍の高S/N性能を備えています(*)。
* 頭部QDコイル(形式名:MJQH-127A)に対する同一撮影スピードでの横断面内の平均S/Nの向上率、目の位置で約1.5倍、頭頂部近傍で約2倍
3.幅広い用途に対応するコイル切り替え機能
検査部位の大きさに応じて使用するコイルエレメントを最適に限定できる機能を備えていますので、頭部全体を対象としたルーチン的な検査から、脳にターゲットを当てた高度な検査に至るまでの幅広いシーンに対応します。
4.患者の圧迫感を和らげるオープンデザイン
患者の目の前の部分を大きく開けた形状を採用したとともに、外の様子を正立像で見ることができるミラーシステムを採用しています。
また、顎の部分のコイルには着脱方式を採用していますので、広い領域を必要としない検査の際にはより開放性を高めることができます。
5.コイルの取扱いに配慮した軽量化設計
コイルの移動や設定などの取扱いに配慮し、各部に軽量化技術を取り入れることによって、回路の高度化に伴って生じるコイルの重量の増加を従来比約10%に抑えています(約11kg)(*)。
* 頭部QDコイル(形式名:MJQH-127A)との比較
商品名 | QDヘッドSPEEDER |
形式 | MJAH-117A |
適用システム | EXCELART™シリーズ(形式名:MRT-2001) |
適用部位 | 頭部 |
コイル方式 | 10エレメント、7チャネル方式(3QD+4リニア) |
エレメント配列方向 | X,Y,Z方向(キュービックジオメトリ) |
外形寸法(ベース部を含む) | 長さ:945mm
幅 :360mm 高さ:425mm |
質量 | 約11kg |
以上