April 28, 2021
この度、宮崎美津恵氏(元キヤノンメディカルシステムズ株式会社)が「造影剤を用いずに血管を良好に描出できるMRI装置の開発」について、令和3年春の褒章において紫綬褒章を受章することとなりました。紫綬褒章は学術研究や芸術、文化などにおいて優れた功績を残した個人に国から授与される褒章です。
【功績概要】 MRI(磁気共鳴画像診断)装置を用いた血管検査は、造影剤と呼ばれる薬剤を血管に投与し血液の信号を増強させて行う方法が用いられます。注射の苦痛や造影剤による副作用リスクに加え、造影剤の流れにくい部位や血流の遅い血管を明瞭に描出できないという課題を抱えています。
受賞者は磁気共鳴現象における血液と背景組織との信号減衰特性の差を利用して血液そのものを信号源として描出することを新たに着想し、心電図に同期して撮像することで、造影剤を用いずとも血管を安定的に明瞭に描出できる非造影MR血管撮像法(FBI法)を平成10(1998)年に確立しました。さらに、心拍同期の拡張期画像と収縮期画像の差分により血管を動脈と静脈に分離する技術(動静脈分離法)、観察したい血液に磁気的標識を与えることにより疾患別に必要な血管のみを描出する技術(Time-SLIP法)を開発し、これらの技術を搭載したMRI装置(東芝製EXCELART)をいち早く製品化しました。
本発明により、これまで造影剤の投与が難しかった小児や高齢者などへ適用範囲が広がるとともに、予防医療に向けた血管スクリーニング検査、治療の前と後の比較、経過観察に必要な繰り返し検査を安全に行えることで、先端医療技術の発展に広く貢献しています。
現在キヤノンメディカルシステムズのすべてのMRIに本技術が搭載され、広く臨床の現場で活用されることで、多くの患者さんに優しい検査環境を提供しています。
【受賞者】
宮崎 美津恵 氏
元 キヤノンメディカルシステムズ株式会社 社長附
現職 カリフォルニア大学サンディエゴ校放射線科教授
【主な受賞歴】
2009年 全国発明表彰 受賞
2011年 市村産業賞 受賞
2012年 文部科学大臣賞 受賞