もともと「がん教育」に目を向けるきっかけとなったのは、がん検診を受診されている方々に「周囲から誘われて・勧められて」というケースを耳にする機会が増えていたことにあります。私たちが直接検診の重要性を伝えた方から、さらに周りの方々へ広がっていけば、がん検診の受診率向上に大きく役立つのではないかと考えたのです。

特に重点的に行っているのが、学校での「がん教育」です。私たちが行っている中学校・高校での乳がん教育の授業では、女子生徒だけでなく男子生徒も積極的に質問をしてくれます。実際、先日の授業後に実施したアンケートでは、ほぼ全生徒さんが「授業を受けてよかった」と答えてくれました。それに加えて、半分近い生徒さんが「身近な人が、がんになっている」という体験を持っていたことも分かったのです。現に今でも、突然がんを告知されて狼狽されてしまう方や、親ががんだと知って自分を責めてしまわれるお子さんも多くいらっしゃいます。周囲の人が、がんになるというのがどういうことなのか。そして、自分には何ができるのか。男女を問わず知りたがっているのだと感じられました。

ピンクリボンアドバイザーが果たす役割

現在、文部科学省からは外部講師による「がん教育」ガイドラインがまとめられています。その担い手として、がん経験のあるピンクリボンアドバイザーが、がん教育講師として活躍しています。特に、がんを経験されているピンクリボンアドバイザーから語られる体験談というのは、実際に経験をしているからこその重みがあります。子どもを育てながら罹患された方の体験談などは、普通に生活している感覚では思いもよらないことでしょう。しかし、目の前で話すアドバイザーに実際に起きていることを聞くことで、中高生にとっても「命の大切さや、がんになっても自分らしく生きていきましょう」というメッセージを、心から理解できるのではないかと思います。

このように、病気・医療の知識だけでは、どうしても語りつくせない部分があります。毎年、ピンクリボンアドバイザーの皆さんと那須にあるキヤノンメディカルさん本社の工場を見学させて頂いているのも、医療機器についての見識を深めることで、多くの方が医療の現場を支えていることを、アドバイザーに肌で感じとって欲しいからなのです。

※写真は、ピンクリボンアドバイザーの、キヤノンメディカルシステムズ本社工場見学風景

一人ひとりの力を信じている。私たちは裏方として

乳房健康研究会が掲げている目標として、2030年までに乳がんで亡くなる方を1万人以下にすることを目指しています。一方で、2018年に亡くなられた方は1万4千人にのぼり、今後も増加の一途をたどるというデータが出ています。目標を実現するには、まず増加から減少へとベクトルを転じることが必要なのです。だからこそピンクリボンアドバイザーを始め「がん教育」を受ける人数をこれまで以上に増やし続けなくてはいけません。

アドバイザーが積極的に登壇できるように、協会としても全力でサポートするべく、模擬授業のプログラムを織り込んだ「がん教育講師養成講座」や、講演が不慣れな方向けの「講演デビュー実践講座」といったワークショップを、アドバイザー向けに用意しています。自分たちは無力じゃない、できることがある。この信念のもと、一人ひとりの能力や思いを引き出して行動に結び付けていく。私たちはそのための舞台づくりができるよう活動していきたいと思います。

文部科学省 | がん教育
認定NPO法人 乳房健康研究会
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