平成28年度診療報酬改定速報

2月10日、中央社会保険医療協議会(以下、中医協)から塩崎厚生労働大臣に対し平成28年度の診療報酬改定に関する答申書が提出されました。今後、この中医協の答申に基づき、3月上旬までに厚生労働大臣が内容を決定し、告示・通知の発出がされることとなります。最終決定ではありませんが、この答申の中において当社取り扱い製品・サービスに関わると思われる項目について以下に抜粋しましたので、ご紹介いたします。

Ⅰ-2(医療機能の分化・強化/医療従事者の負担軽減等の推進)-⑦

画像診断管理加算の夜間等における負担軽減

第1 基本的な考え方
画像診断管理加算の算定に当たっては、現行、常勤の医師が保険医療機関において読影する等の要件があるが、当該保険医療機関の常勤の医師が夜間休日にICTを活用して自宅等で読影した場合も、院内での読影に準じて扱うこととする。 

第2 具体的な内容
画像診断管理加算1、加算2及び遠隔画像診断における画像診断管理加算について、現行、常勤の医師が保険医療機関において画像診断をするとしているところを、当該保険医療機関の常勤の医師が、夜間・休日の緊急時に当該保健医療機関以外の場所で、画像を読影した場合も院内の読影に準じて扱うこととする。

現行 改定案

画像診断管理加算1、加算2及び遠隔画像診断を行った場合の画像診断管理加算
[施設基準等]

(新設)

画像診断管理加算1、加算2及び遠隔画像診断を行った場合の画像診断管理加算
[施設基準等]

夜間又は休日に撮影された画像について、自宅等当該保険医療機関以外の場所で、画像の読影及び送受信を行うにつき十分な装置・機器を用いた上で、読影した場合も対象となる。
なお、患者の個人情報を含む医療情報の送受信に当たっては安全管理を確実に行った上で実施する必要がある。

Ⅱ-2(患者の視点等/ICTの活用)-①

診療情報提供等の電子的な送受に関する評価

第1 基本的な考え方
現在、署名又は記名・押印が求められている診療情報提供書、訪問看護指示書及び服薬情報等提供文書等について、電子的に署名を行い、安全性を確保した上で電子的に送受した場合にも算定可能とする。
診療情報提供書への検査結果・画像情報等の添付について、電子的に送受・共有する場合についても評価する。

第2 具体的な内容

1. 医科診療報酬点数表に記載する診療等に要する文書、訪問看護管理療養費の算定に係る文書及び服薬情報等提供料の算定に係る文書の電子化。 

[算定要件] 

  1. 電子的方法によって、個々の患者の診療に関する情報等を他の保険医療機関 等に提供する場合は、厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン(平成25年10月)を遵守し、安全な通信環境を確保する。 
  2. 署名又は記名・押印を要する文書については、電子的な署名を含む。その場合、厚生労働省の定める準拠性監査基準を満たす保健医療福祉分野の公開鍵基盤(HPKI :Healthcare Public Key Infrastructure)による電子署名を施すこと。 


2. 診療情報提料(Ⅰ) 検査・画像情報提供加算の新設

(新)検査・画像情報提供加算
イ 退院する患者について、当該患者の退院日の属する月又はその翌月に、必要な情報を提供した場合 200点
ロ 入院中の患者以外の患者について、必要な情報を提供した場合 30点

[算定要件]
保険医療機関が、患者の紹介を行い際に、過去の主要な診療記録を、他の保険医療機関に電子的方法で閲覧可能なように提供した場合に加算する。ただし、イについては、注7に規定する加算を算定する場合は算定しない。 


3. 電子的診療情報評価料の新設

(新)電子的診療情報評価料 30点

[算定要件]
保険医療機関が、別の保険医療機関から診療情報提供書の提供を受けた患者について、過去の主要な診療記録を電子的方法により閲覧でき、当該診療記録を診療に活用した場合に算定する。

[2及び3に係る施設基準]

  1. 他の保険医療機関等と連携し、患者の医療情報に関する電子的な送受信が可能なネットワークを構築していること。
  2. 別の保険医療機関と標準的な方法により安全に情報の共有を行う体制が具備されていること。

Ⅲ-5(重点的な対応が求められる分野/救急医療の推進)-⑨

生体検査、処置及び放射線治療等に係る小児加算の見直し

第1 基本的な考え方
小児医療のさらなる充実を図るため、生体検査、処置、放射線治療等に係る小児加算等の見直しを行う。

第2 具体的な内容
生体検査料の通則、画像診断・処置料の一部及び放射線治療の通則等に規定されている、新生児加算、乳幼児加算、幼児加算及び小児加算等について、加算の引き上げを行う。

現行 改定案
[生体検査料の通則] [生体検査料]
新生児加算 60/100 新生児加算

80/100

乳幼児加算(3歳未満) 30/100 乳幼児加算(3歳未満)

50/100

幼児加算(3歳以上6歳未満) 15/100 幼児加算(3歳以上6歳未満)

30/100

[画像診断](例)【E002 撮影】 [画像診断](例)【E002 撮影】
新生児加算 60/100 新生児加算

80/100

乳幼児加算(3歳未満) 30/100 乳幼児加算(3歳未満)

50/100

(他3項目)   幼児加算(3歳以上6歳未満)

30/100(新)

[処置料](例) [処置料](例)
【ドレーン法(ドレナージ)】
注 3歳未満の乳幼児の場合は、100点を加算する。
【高位浣腸、高圧浣腸、洗腸】
注 3歳未満の乳幼児の場合は、50点を加算する。
(他35項目)
【ドレーン法(ドレナージ)】
注 3歳未満の乳幼児の場合は、110点を加算する。
【高位浣腸、高圧浣腸、洗腸】
注 3歳未満の乳幼児の場合は、55点を加算する。
(※)既存の加算項目について、点数を1割増点する。
[放射線治療] [放射線治療]
新生児加算 60/100 新生児加算

80/100

乳幼児加算(3歳未満) 30/100 乳幼児加算(3歳未満)

50/100

幼児加算(3歳以上6歳未満) 15/100 幼児加算(3歳以上6歳未満)

30/100

小児加算(6歳以上15歳未満) 10/100 小児加算(6歳以上15歳未満)

20/100

【救急搬送診療料】 【救急搬送診療料】
新生児加算 1,000点 新生児加算

1,500点

乳幼児加算(3歳未満) 500点 乳幼児加算(3歳未満)

700点

長時間加算(診療に要した時間が30分以上) 500点 長時間加算(診療に要した時間が30分以上)

700点

Ⅲ-8(重点的な対応が求められる分野/イノベーションの適切な評価)-①

質の高い臨床検査の適正な評価

第1 基本的な考え方
E3区分で保険適用された新規の体外診断用医薬品について技術料を新設する等、質の高い臨床検査の適正な評価を進める。

第2 具体的な内容
1.新規臨床検査として保険適用され、現在準用点数で行われている検査について、検査実施料を新設する。

(新)悪性需要遺伝子検査 ヌ RAS 遺伝子検査 2,500点

2.体外診断用医薬品の保険適用に係る取扱いについて、保険医療材料専門組織及び保健医療材料専門部会で議論を行うこととし、所掌事務等の変更に伴い、中医協議事規則等の変更を行う 

3.保険適用希望書が提出された体外診断用医薬品について、医療機器と同様に、保険適用希望書提出後から保険適用されるまでの間、評価療養の対象とできるよう、評価療養に係る告示等の修正を行う。 

4.国際標準化機構に定められた国際規格に基づく技術能力の認定を受けている施設において行われる検体検査の評価を行う。

(新)国際標準検査管理加算

40点

[算定要件]
別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において、検体検査管理加算(Ⅱ)、検体検査管理加算(Ⅲ)又は検体検査管理加算(Ⅳ)を算定した場合は、国際標準検査管理加算として40点を加算する。 

[施設基準]
(1)検体検査管理加算(Ⅱ)、検体検査管理加算(Ⅲ)又は検体検査管理加算(Ⅳ)に係る届出を行っている施設であること。
(2)国際標準化機構に定められた国際規格に基づく技術能力の認定を受けた施設であること。

Ⅲ-8(重点的な対応が求められる分野/イノベーションの適切な評価)-②

放射線撮影等の適正な評価

第1 基本的な考え方
64列以上のマルチスライス型CT及び3テスラ以上のMRIといった高機能の診断装置について、適正かつ効率的な利用を促進する観点から、新たに施設共同利用での撮影を評価することとする。
また、ポジトロン断層撮影の施設共同利用率の要件については、現在の共同利用の状況を鑑み、さらなる共同利用の推進を図る観点から要件の見直しを行う。

第2 具体的な内容
1.64列以上のマルチスライスCT及び3テスラ以上のMRIについて、共同利用による撮影を行った場合及び施設共同利用率が10%以上の基準を満たす保険医療機関において撮影を行った場合に評価を行うとともに、その他の撮影の評価の見直しを行う。

現行 改定案
【コンピューター断層撮影】 CT撮影 【コンピューター断層撮影】 CT撮影
イ 64列以上のマルチスライス型の機器の場合 1,000点 イ 64列以上のマルチスライス型の機器の場合  
(新設)   (1)施設共同利用において行われる場合 1,020点(新)
(新設)   (2)その他の場合 1,000点(新)
ロ 16列以上64列未満のマルチスライス型の機器による場合 900点 ロ 16列以上64列未満のマルチスライス型の機器による場合 900点
ハ 4列以上16列未満のマルチスライス型の機器による場合 770点 ハ 4列以上16列未満のマルチスライス型の機器による場合 750点
ニ イ、ロ、ハ以外の場合 580点 ニ イ、ロ、ハ以外の場合 560点
【磁気共鳴コンピューター断層撮影】 【磁気共鳴コンピューター断層撮影】
1.3テスラ以上の機器の場合 1,600点 1.3テスラ以上の機器の場合  
(新設)   イ 施設共同利用において行われる場合 1,620点(新)
(新設)   ロ その他の場合 1,600点(新)
2.1.5テスラ以上3テスラ未満の機器による場合 1,330点 2.1.5テスラ以上3テスラ未満の機器による場合 1,330点
3.1、2以外の場合 920点 3.1、2以外の場合 900点

2.ポジトロン撮影等について、施設共同利用率の要件を厳格化する。

現行 改定案
【ポジトロン断層撮影、ポジトロン断層・コンピューター複合撮影、ポジトロン断層・磁気共鳴コンピューター複合撮影、乳房用ポジトロン断層撮影】

当該撮影に使用する画像診断機器の施設共同利用率について、100分の20以上であること。
【ポジトロン断層撮影、ポジトロン断層・コンピューター複合撮影、ポジトロン断層・磁気共鳴コンピューター複合撮影、乳房用ポジトロン断層撮影】

当該撮影に使用する画像診断機器の施設共同利用率について、100分の30以上であること。

[経過措置]
平成28年3月31日に施設共同利用率の要件を満たしている保険医療機関については、平成29年3月31日までの間、当該要件を満たしているものとする。

Ⅲ-8(重点的な対応が求められる分野/イノベーションの適切な評価)-⑥

手術等医療技術の適切な評価

第1 基本的な考え方

  1. C2区分で保険適用された新規医療材料等について、適切な評価を行う。 
  2. 外科的手術の適正な評価を行うため、外保連試案の評価を参考に、診療報酬における手術の相対的な評価をより精緻化する。
  3. 診療報酬調査専門組織医療技術評価分科会における検討結果等を踏まえ、医療技術の評価及び再評価を行い、新規技術の保険導入及び既存技術の診療報酬上の評価の見直しを行う。
  4. 先進医療会議における検討結果を踏まえて、先進医療として実施している医療技術について検討等を行い、優先的に保険導入すべきとされた医療技術の保険導入を行う。

第2 具体的な内容

  1. C2区分で保険適用された新規医療材料等について、それぞれ技術料の新設や削除を行う。
    (技術の例)
    小児補助人工心臓(1日につき)
    1 初日    63,150点
    2 2日以降30日まで    8,680点
    3 31日目以降    7,680点 


  2. 今般改訂された「手術報酬に関する外保連試案(以下「外保連試案」という。)第8.3 版」において、人件費の占める割合及び材料に係る費用の占める割合等に配慮しつつ、手術料の見直しを行う。 

  3. 医療技術評価分科会における検討結果等を踏まえ、既収載技術の再評価(廃止を含む。)、新規技術の保険導入を行う。
    [評価・再評価を行う技術の例]
    (1) 経皮酸素ガス分圧連続測定
    (2) 関節鏡下股関節唇縫合術
    (3) 内視鏡下鼻中隔手術
    (4) 無菌製剤処理料1の評価の見直し
    (5) 発達障害の要支援度評価尺度
    (6) 鼻腔・咽頭拭い液採取料
    (7) 血漿交換療法の対象疾患拡大
    (8) 腹腔鏡下膵体尾部切除術の対象拡大   

    [廃止を行う技術の例]
    (1) 気管支鏡検査、気管支カメラ
    (2) 膠質反応(ZTT) 

  4. 先進医療会議における検討結果を踏まえ、新規技術について保険導入を行う。
    [優先的に保険適用すべきとされた医療技術]
    (1) 凍結保存同種組織を用いた外科治療
    (2) 陽子線治療
    (3) 重粒子線治療

    (4) 非生体ドナーから採取された同種骨・靱帯組織の凍結保存
    (5) RET遺伝子診断
    (6) 実物大立体臓器モデルによる手術支援
    (7) 単純疱疹ウイルス感染症又は水痘帯状疱疹ウイルス感染迅速診断
    (8) 網膜芽細胞腫の遺伝子診断
    (9) 腹腔鏡下仙骨膣固定術
    (10) 硬膜外自家血注入療法
    (11) 食道アカラシア等に対する経口内視鏡的筋層切開術
    (12) 内視鏡下頸部良性腫瘍摘出術
    (13) 内視鏡下手術用ロボットを用いた腹腔鏡下腎部分切除術 

  5. 手術内容がほとんど同じであるK721内視鏡的結腸ポリープ・粘膜切除術とK721-2内視鏡的大腸ポリープ切除術(点数同じ。)を合理化し、K721-2は削除する。同様に、K743痔核手術(脱肛を含む。)4根治手術とK743-3脱肛根治手術についても、K743-3を削除し、項目を一本化する。

現行 改定案
【内視鏡的結腸ポリープ・粘膜切除術】 【内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術】
1 長径2センチメートル未満 5,000点 1 長径2センチメートル未満 5,000点
2 長径2センチメートル以上 7,000点 2 長径2センチメートル以上 7,000点
【内視鏡的大腸ポリープ切除術】  
1 長径2センチメートル未満 5,000点 (削除)      
2 長径2センチメートル以上 7,000点
【脱肛根治手術】  
  5,360点 (削除)

【新規保険適用】

粒子線治療の保険適用

改定前 改定案
(新設) M001-4 粒子線治療(一連につき)
1 重粒子線治療の場合   150,000点
2 陽子線治療の場合     150,000点
  • 注1 別に抗背労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において行われる場合に限り算定する
  • 注2 別に厚生労働大臣が定める患者に対して粒子線治療を行った場合は、所定点数の100分の25に相当する点数を加算する。
  • 注3 粒子線治療の適応判定体制に関する別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において、粒子線治療の適応判定に係る検討が実施された場合には、粒子線治療適応判定加算として、40,000点を所定点数に加算する。
  • 注4 別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において、放射線治療を担当する専従の医師が策定した照射計画に基づく医学的管理を行った場合には、粒子線治療医学管理加算として、10,000点を所定点数に加算する。

※詳細は以下をご参照下さい。(別ウィンドウで開きます)