横井 裕之 先生
医療法人健裕会 よこい整形外科 健康スポーツクリニック 院長

よこい整形外科 健康スポーツクリニック

整形外科領域における超音波診断装置(エコー)の活用は、診断だけではなくエコーガイド下でのさまざまな治療にまで広がっている。本稿では、診断から治療までエコーを積極的に使用している医療法人健裕会よこい整形外科 健康スポーツクリニックの横井裕之氏に取材を行い、その有用性などについて伺った。

スポーツ整形外科×レディースクリニック

横井氏は2022年に大阪府の豊中市でよこい整形外科 健康スポーツクリニックを開業し、スポーツ障害や健康増進をメインに幅広い診療を提供している。また、同クリニックの特色として、よこい整形外科に併設されるレディースクリニックとの融合があげられる。「産前産後は腰痛や尿漏れを経験される方が多いと言われていますが、今までは妊婦さんはお腹が大きいから腰痛になることや痛みについても当たり前だと思われてきました。実際は腰痛で立てない方や産後に恥骨部痛などで歩けない方もいます。しかし、産前産後の患者さんは産婦人科にいるのに、治療可能なスタッフは整形外科にいるため、治療対象者と施術者のいる場所が乖離していました。当院は隣にレディースクリニックを併設しているため、そういった患者さんのフォローができるところが特徴の一つです。また、妊婦さんはレントゲンが取れないため被ばくの心配がないエコー検査が非常に有用です。医師としては評価だけでなく、エコーガイド下でハイドロリリースやプロロセラピーといった注射での治療も行っています。他にもエコーは骨盤帯の緩みや動きをリアルタイムに評価することに有用ですので、理学療法士が骨盤底筋やインナーマッスルの動きなどを見ながらリハビリを進めています。」

整形外科領域における超音波診断装置の重要性

横井氏がエコーを使用し始めたのは、スポーツ障害の診断をしていた時だったという。「勤務医時代に患者さんを診ていく中でMRIでは動きに伴う病態を見つけることができない、MRIを撮るには時間がかかるという時に、エコーを使えばその場で患部を動かしながら早急に診断ができます。また、繰り返し検査が簡便にできるので評価をしつつ、経過を追ったりするのに便利だと思いエコーに興味を持ちました。治療としては、自分が目標としている場所に対して正確にインターベンションできるところがとても有用だと思っています。狙った場所に確実にアプローチすることは、エコーなしでは難しいと文献上でも報告されています。エコーを用いることで、その場で動態評価をして診断ができ、そのままインターベンションでの正確な治療を行うことができるという、診察室で診療が完結できるところが患者さんフレンドリーでスマートであると思っています。」

Aplio meが整形外科の診療に貢献

同クリニックでは、キヤノンメディカルシステムズのAplio meを活用して診療を行っている。横井氏はAplio meについて、「画像のクオリティが従来の装置とは全然違います。取り回しも良いので開業医に向いている装置だと思いました。」と評価している。また、手技の選択肢も増えたという。「腰椎硬膜外ブロックと神経根ブロックはAplio meを導入してから始めました。特に脊椎に関して言うと、開業医は診断した後に内服やリハビリなどの保存的治療がメインになります。しかし、解像度が高いエコーを用いることで、従来見えなかった部位を鮮明に見ることができるので、手技の幅が広がり、硬膜周辺にまで安全にアプローチが可能になりました。神経根ブロックや硬膜外ブロックを外来で安全にできると正確な診断だけでなく、治療の幅も広がるため、患者さんとの信頼関係が増したと感じています。患者さんにとっても手術を避ける手段の一つとして、 保存療法の幅が広いことはとても大事だと思います。」
図1 深頚神経叢ブロック (PLU-805BT)
図2 腱鞘内注射 (PLU-1204BT)
図2 腱鞘内注射 (PLU-1204BT)
図3 腰部神経根ブロック(PVU-375BT)
図3 腰部神経根ブロック(PVU-375BT)
また、診療にはリニアプローブPLU-805BTとPLU-1204BT、コンベックスプローブPVU-375BTを使用しているという。「適材適所のプローブを使用することできれいな画像を出せると実感しています。プローブは手技によって使い分けていますが、3cmくらいまでの表在はPLU-1204BTを使用しています。例えば、手や足首などの浅い場所です。Aplio meの新プローブPLU-805BTは3cmよりも深い大腿部や腰部などに使用しています。また、プローブの横幅でも使い分けていてPLU-1204BT は横幅が約4cmですが、PLU-805BT は横幅が約5cmなので、画面に表示される幅が広いです。そうすると血管や神経など危険なものがないかを確認しながら見ることができるので有用だと感じました。特に頸部の神経根や神経叢などはPLU-805BTを積極的に使用しています。目的の神経だけを見るのではなく、その手前にある血管や神経までワンスライスで見えた方がより安全に手技が行えるので良いと思いました。」

SMIの有用性

Aplio meには豊富なアプリケーションが搭載されているが、中でも横井氏は低流速の血流を描出できる技術Superb Micro-vascular Imaging (SMI) を使用しているという。「SMIはとても有用だと思います。特に注射の薬液の流れを見ようと思った時に、カラードプラではどうしてもノイズが全体的にのってしまうのですが、SMIはノイズが少なく、概ね薬液がどこに入っているかわかります。更に実際に注射をしている針先にもSMIがのってくるので針先の位置を確認するのにも有用だと思っています。」また、患者さんとのコミュニケーションにも役立っているという。「例えばSMIで患部にこれだけ炎症があるのでここに注射しましょう、といった言い方ができます。実際にその部位に正確に薬液が入っていくと、その後痛みが治まるという一連の流れで患者さんの満足度も上がります。」
図4 三角靭帯損傷をSMIで観察している様子
図4 三角靭帯損傷をSMIで観察している様子
図5 椎間関節注射への薬液注入時のSMI像
図5 椎間関節注射への薬液注入時のSMI像

満足度の高い外来を行うための工夫

図6 サブモニターで患者さんに説明している様子
同クリニックでは、エコー画面を患者さんとリアルタイムに共有しながら治療を行うため、サブモニターを設置している。「モニターがベッドの両端にあることで、患者さんには寝ている状態のままで注射をしているところを見てもらうことが可能です。こういった工夫で患者さんとの信頼関係が築けていると思います。また医師も注射の度にエコーを動かす必要がなく、どちらか見やすいモニターを見ながら注射ができるのでセッティングの手間も省けます。スペースの少ない外来でも大型の装置を運用できるので非常に有用だと感じています。」
また同クリニックではApliCamも導入している。ApliCamはカメラで撮影した画像を超音波画像と一緒に保存することができる機能である。横井氏は「この機能は必須だと思います。どこを映しているか後で見返した時に左右や細かい部位がわかりにくい事があるので、そういった際に非常に助かります。またサブモニターにも注射をしている実際の画像が映りますので、患者さんから見えない部位への注射も患者さんに手技をしている姿を確認してもらうことが可能です。あとは、学会などで発表するときにも視覚的にわかりやすく便利ですね。」と述べた。
図6 サブモニターで患者さんに説明している様子
図7 肩上方関節唇を観察している様子
図7 肩上方関節唇を観察している様子
図8 腋窩神経ハイドロリリース
図8 腋窩神経ハイドロリリース

開業医がエコーを使う意義

最後に横井氏は開業医がエコーを使用する意義について、「エコーを使うことで治療の幅が広がりますし、実際に手技をしているところを患者さんと一緒に確認しながら注射ができるので、患者さんにとっても満足度が高くなると思っています。実際にエコーガイド下注射を行っていると、患者さんからは『初めて見ました』や『実際にここに入っているのですね』という声が上がることも多く、治療に対する理解が深まり、信頼関係に繋がっています。特にAplio meは開業医にぴったりの装置だと思いますので、是非超音波を使える先生にはおすすめしたいですね。」とメッセージを寄せた。

※記事内容はご経験や知見による、ご本人のご意見や感想が含まれる場合があります。

一般的名称 汎用超音波画像診断装置
販売名 超音波診断装置 Aplio me CUS-AME00
認証番号 305ADBZX00027000
一般的名称 手持型体外式超音波診断用プローブ
販売名 リニア式電子スキャンプローブ 12L4 PLU-805BT
認証番号 305ADBZX00028000
一般的名称 手持型体外式超音波診断用プローブ
販売名 コンベックス式電子スキャンプローブ 6C1 PVU-375BT
認証番号 225ACBZX00023000
一般的名称 手持型体外式超音波診断用プローブ
販売名 リニア式電子スキャンプローブ 18L7 PLU-1204BT
認証番号 225ACBZX00047000