昨年ご好評いただいた【Global Sports Medicine Forum~トップアスリートの筋、腱、靭帯損傷の診断最前線】に続き、今年はJOSKAS-JOSSMのランチョンセミナーでプログラムの続報をお届けします。
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第12回日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会
第46回日本整形外科スポーツ医学会学術集会       ランチョンセミナー22

トップアスリートの筋、腱、靭帯損傷の診断最前線とコロナ禍における選手の管理

日時:2020年 12月19日(土) 11:35am-12:35am
会場:第1会場(神戸国際展示場 1号館2階 展示室A)

座 長

熊井 司 先生
早稲田大学スポーツ科学学術院 教授


ウェビナー1

スポーツ選手の競技復帰(RTP)の最適化:最高のパフォーマンスへの復帰のための鍵となる要素

Optimizing Return-to-play (RTP) in athletes: The key elements for return to full performance


ジル・ロダス 先生(Dr. Gil Rodas)
FC バルセロナ バルサ・イノベーションハブ、FCバルセロナメディカルサービス(スペイン)
Barça Innovation Hub and Football Club Barcelona Medical Services, Spain

FCBの医療ケアシステム

FCバルセロナは総合スポーツクラブであり14種類のスポーツチームを所有している。サッカー、バスケットボール、ハンドボール、フットサル、ローラーホッケーの5つのプロチームの他に、9つのアマチュアチームがあり、メンバーは2,400人以上いる。
FCバルセロナの内部組織として医療チームがあり、全ての選手の医療ケアにあたっている。医療従事者の数は75人(チームドクター 16人<放射線科医 2人、整形外科医 1人、循環器専門医2人、足治療医 2人、他>、理学療法士 55人、栄養士 2人、ナース2人)である。医療チームは、グローバルな医療原則に基づいて協力しあい、他部門とも密接に連携している(例:「パフォーマンス」と「スポーツアナリシス」)。

競技への復帰(RTP)
RTPは、ベルン2016年コンセンサスにて導入された段階的な競技復帰プロトコルである。FCバルセロナの臨床・実践医療者はRTPをよく熟知していて、ここ10年間、RTPを適用して実践にあたっている。怪我に対する治療目標は主にふたつある。
  (1)なるべく早く競技に復帰すること、
  (2)再発を防ぐことである。
RTPは動的で複雑な個別プロセスであり、複数の専門職が協働することで初めて実現する。 最終的なRTPの判断は、各症例・各選手で異なるため、非常に複雑である。RTPの基準が確立されていない段階では、医療チームの経験およびチーム・スタッフ間でのコミュニケーションが最も重要となる。

診断と予後
FCバルセロナ医療チームは、怪我の最適な管理のための鍵となるのは「診断」であると考え、正確な診断を得るために尽力している。 その実現のために、MRIおよび超音波装置の最高機種など、医療従事者にとって最高の機器を備えた基盤を構築している。さらに、スペイン国内外の各地での第一人者との広いネットワークがあり(必要なときに、適宜)連携をとっている。
選手個人やチームのニーズについて、日々、より深く把握する必要がある。そのため、毎日、外部(GPS-EPTS)および内部ロード(Sportomics)をモニターし、チームのスタッフが最適な判断をできるように支援している。

COVID-19が全世界に流行している中での競技への復帰
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な大流行より、世界中のスポーツが大きな影響を受けている。2020年の夏に予定されていた東京オリンピック、UEFA欧州選手権、コパ・アメリカなどの重要な競技などがキャンセルされた。
ロックダウンの期間中、スポーツ専門医は自分の担当する選手や選手の周囲にいるコーチやフィジカルトレーナーなどに適切な情報を確実に届け、故障の予防のためのアドバイスに従ってもらうように尽力した。
FCバルセロナ医療部は、スペインのプロサッカーリーグLaLigaの指針に従って、包括的かつ詳細なプロトコールを作成した。これはARS-CoV-2の感染予防対策よりもさらに厳しいクラブ環境づくりにより、競技に復活するまでに選手が最適な健康状態を保ち、最高の身体パフォーマンスを発揮できるように目指すものである。
  


ウェビナー2

筋骨格系病理における超音波の役割 ー 現状と未来

Role of Ultrasound in Muscloskeletal Pathologies:Present & Future

イニゴ・イリアテ先生(Dr. Iñigo Iriarte)
ARSメディカルクリニック(スペイン)

 ARS Medical, Bilbao, Spain 超音波診断装置はこの10年間で飛躍的に進化し、ヨーロッパで実践されている最新のMSK超音波診断にも重要な技術的改善をもたらした。
最新の高周波トランスデューサーにより画像の解像度が大幅に向上し、これまで描出されていなかった1 mm未満の組織の正確な評価が可能となった。これは医師にとって診断の新しい可能性への扉が開くことだ。
また、微小血管の可視化のための高感度と高フレームレートを備えた高度なドップラーイメージングテクニック(スパーブマイクロバスキュラーイメージング)も、腱と関節の有用な情報を得ることができる興味深いツールである。超音波ガイド下の手技は、病院や外部コンサルテーションで迅速に導入され、筋骨格系のケアで広く行われている。筋骨格系病理の知識の蓄積により新しい超音波技術が絶え間なく世の中に送り出されている。
その他の新しい可能性、MRI/超音波のフュージョンまたはエラストグラフィなどにも医師の関心が高まっていて、臨床応用が有望な分野と思われる。
ただし、MSK超音波診断は、長い時間の難しい学習曲線を経て習得する必要があり、これまでのやり方、本や専門誌からの学びでは十分とは言えない。今、まさに医師が簡単に習得できるような新しい教育ツールが求められている。



共催 :
  第12回日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会(JOSKAS)
  第46回日本整形外科スポーツ医学会学術集会(JOSSM) 
  キヤノンメディカルシステムズ株式会社
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