~一般撮影装置「RADREX」&X線デジタルラジオグラフィ「CXDI」システム~
田中 亨*1/ 岩井 春樹*2/ 池﨑 理恵*2/ 向笠 恭司*3
田村 敏和*4/ 高橋 直人*4/ 小林 剛*4/ 池田 勇一*4
1.ノイズ低減能力の確認方法
ここで評価の対象としているノイズは,線量の違いによって変動するカンタムノイズ(X線量子ノイズ)と,FPD内部の素子,回路で発生するシステムノイズが重畳されたものである。そこで,被写体なしでいくつかの線量のX線をFPDに照射して得られたnonNR画像にconvNR,INRを適用し,以下の物理特性を測定した。
① ノイズ振幅特性
「X線量に対するノイズの振幅」のグラフで表現され,各線量における各処理を比較確認する。ノイズの振幅が小さいほど,ノイズが低減されていることになり,ノイズ低減処理の効果を推測できる。
② NPS(noise power spectrum)
「空間周波数に対するノイズ強度」のグラフで表現され,ノイズ低減処理の周波数依存性や処理強度による特性の変化を確認できる。X線条件は,標準据付条件下において,線質条件をIEC61267に定義されるRQA9(120kVp,付加フィルタアルミ当量:40mmAl,第一半価層AL厚:11.6mm)とした。
図1 模擬腫瘤の撮影配置とNORMI RAD/FLUファントム画像
② CTF(contrast transfer function)
「空間周波数に対するコントラストの伝達特性」のグラフで表現され,伝達特性は0~1の値をとり,1に近いほどその周波数の情報を劣化なく伝達できている。各処理で比較することで,ノイズ低減処理によるコントラストの伝達特性の変化を推測できる。測定は,PTW社製「NORMI RAD/FLUファントム」のチャート部(図1右下←)を用いて実施した。X線条件は,標準据付条件下において,被写体を配置した状態で120kVp,AEC density=0で撮影した条件を100%線量とし,mAs値を変化させることで低線量条件を作成した。
図2 ノイズ低減処理とノイズのX線量特性
図3 ノイズ低減処理とノイズの空間周波数特性(NPS)<処理強度10,RQA9(120kV)>
図4 ノイズ低減処理とMTF特性<処理強度10,RQA9(120kV)>
2.必要な画像信号が維持されていることの確認
2‒①MTF(modulation transfer function)
ノイズ低減処理とMTF特性を図4に示す。nonNR,convNR10,INR10のMTFはほぼ一致しており,このことから,INR処理は信号の鮮鋭度に影響を与えない,すなわち必要な画像信号の鮮鋭度を維持できていることが示唆された。なお,線質や処理強度を変更しても同様の結果となった。
図5 ノイズ低減処理とCTF特性<X線量50%,処理強度5,10,120kV>
2‒②CTF(contrast transfer function)
ノイズ低減処理強度5,10,X線量50%のCTF特性を図5に示す。図1に示したNORMI RAD/FLUファントム内のチャートを使用してCTFを測定した結果,nonNR,convNR,INRのCTFはほぼ一致した。これは,INRは信号のコントラストに影響を与えない,すなわち必要な画像信号のコントラストを維持できていることが示唆された。なお,X線量100%の場合もほぼ同様の結果となった。
2‒③胸部ファントムに配置した模擬腫瘤の信号解析
胸部ファントムと模擬腫瘤の撮影は,京都科学社製胸部ファントムN-1ラングマンと同社製模擬腫瘤(φ8mm,CT値+100)を使用し,図1の配置で撮影を行った。これは,模擬腫瘤の着脱操作の過程で,胸部ファントムがわずかでも動いてしまうと,画像の差分処理においてアーチファクトが発生するため,模擬腫瘤をファントムの下に配置し,模擬腫瘤の着脱作業で胸部ファントムに接触しないようにするために考案した配置である。
図6に,模擬腫瘤画像抽出の概念図を示す。[模擬腫瘤あり各種NR画像-模擬腫瘤なしnonNR画像の加算平均画像]が,模擬腫瘤なし画像との差分画像(b)である。模擬腫瘤は複数配置したが,今回報告するのは赤枠で囲ったφ8mm,CT値+100の模擬腫瘤のみである。図6a,bの拡大画像(c)のとおり,模擬腫瘤の信号成分は,nonNR,convNR5,INR5,INR10のいずれの処理においても,適切に検出できていることが認められた。
図6 模擬腫瘤画像抽出の概念図
図7 各NR処理によって除去されたノイズ成分
図8 X線量50%での各処理によるROIごとのCNR<120kV>
3.低線量画像での画質
3‒①NORMI RAD/FLUファントムによるCNR評価
PTW社製NORMI RAD/FLUファントムのX 線撮影像を図1(右下)に示す。赤枠(□)が円盤の画素値を計測したROI,緑枠(□)が円盤の周囲の画素値を計測したROIである。
X線量50%での各処理によるROIごとのCNRを図8に示す。すべてのROIにおいて,CNRはnonNR<convNR5<INR5<convNR10<INR10となり,INR10が最もCNR特性に優れている。なお,X線量100%の場合もほぼ同様の特性を示した。
図9 X線量50%での各処理によるROI-3のCNR<120kV>
図10 X線量100%のconvNR5に対するX線量50%のINR5,10のCNR<120kV>
X線量100%のconvNR5に対するX線量50%のINR5,10のCNRを図10に示す。convNRは強度5を標準値として推奨しているため,これを基準にINRの効果を比較した。
X線量100%のconvNR5(以下,従来基準)に対し,INR5はX線量を50%まで低減するとCNRが従来基準より若干低くなるものの,INR10はX線量を50%まで低減しても,従来基準より高いCNRが維持できている。すなわち,INR10は,X線量の50%低減と高画質化を両立できることを示唆する結果となった。
図11 模擬腫瘤のCNR解析画像(例:INR10)
3‒②胸部ファントムと模擬腫瘤によるCNR評価
図11に,胸部ファントムに配置した模擬腫瘤の撮影像において[腫瘤ありINR10画像-腫瘤なしnonNR画像の加算平均画像]によって抽出した模擬腫瘤像に対し,CNR解析のために設定したROIを示す。ROI-BはバックグラウンドROIで,ROI-SはシグナルROIである。ノイズはROI-Bの標準偏差,コントラストは[ROI-Sの平均画素値-ROI-Bの平均画素値]で算出し,CNRはコントラストをノイズで除した値である。
図12 X線量100%,50%での模擬腫瘤(φ8mm,CT値+100)のCNR<120kV>
図13 X線量50%での模擬腫瘤(φ8mm,CT値+100)のCNR<120kV>
| 一般的名称 | 販売名 | 認証番号 | 製造販売元 |
| X線平面検出器出力読取式デジタルラジオグラフ | デジタルラジオグラフィCXDI-410C Wireless | 229ABBZX00049000 | キヤノン株式会社 |
| X線平面検出器出力読取式デジタルラジオグラフ | デジタルラジオグラフィCXDI-710C Wireless | 229ABBZX00020000 | キヤノン株式会社 |
| X線平面検出器出力読取式デジタルラジオグラフ | デジタルラジオグラフィCXDI-810C Wireless | 229ABBZX00029000 | キヤノン株式会社 |
| 据置型アナログ式汎用X線診断装置 | 一般X線撮影装置MRAD-A80S RADREX | 224ADBZX00125000 | キヤノン株式会社 |
| 据置型アナログ式汎用X線診断装置 | 一般X線撮影装置MRAD-A50S RADREX | 224ADBZX00110000 | キヤノン株式会社 |
本稿に記載されている各社製品の名称は各社の登録商標または商標です。