スポーツ整形外科診療を変える画像診断の発展と今後の期待

熊井 司 
早稲田大学スポーツ科学学術院 教授 医学博士(整形外科学) 

整形外科領域における画像診断技術の進化と深化

整形外科領域における画像診断は、モダリティの技術発展に伴い進化しています。骨の形態情報としては、アライメント評価も含めX線撮影が最も有用ですが、CTではより詳細な形態情報と骨配列、さらに骨梁の配向性も評価可能です。また、3D-CTは術前プランニングにも有用で、3Dプリンタで骨モデルを作製することで手術のシミュレーションを行うことができます。MRIは、T2マッピングなどの新しい評価方法により、さらに詳細な質的診断が可能になっていることに加え、ultrashortTEによる腱の描出能の向上や、短時間シーケンスによる検査時の患者負担の軽減など、臨床的有用性が高まっています。超音波診断装置(以下、エコー)は画質とポータビリティの向上で活用の場が広がっており、私が専門とする足の外科での診療や、スポーツ医科学においても欠かせないものとなっています。

スポーツ診療を変える超音波診断装置の可能性

アスリートにとって手術はできるだけ避けたいものです。骨折以外のスポーツ傷害としては、筋肉損傷や肉離れ、靭帯損傷などの軟部組織損傷が多く、MRIとエコーで的確に診断し、適切な治療に結びつけることが重要となります。エコーは、高周波プローブなどの登場により、ここ10年で診察室への導入が急速に普及しました。また、ポータビリティの向上により、スポーツの現場で活用されるようになり、早期診断、早期治療が可能となってきています。
治療においては、インターベンション(局所注射)や手術のガイドとしてもエコーは有用です。私は関節鏡手術を多く行ってきましたが、手術中にエコーを併せて使用することで経験を積み、現在はエコーガイド下手術も行っています。さらにエコーガイド下での伝達麻酔を併用することで,より低侵襲な外来ベースでの手術が可能となります。また、エコーが理学療法士をはじめ多職種の共通言語となることで、迅速かつ的確にスタッフ間での共通認識を持つことが可能となりつつあります。

新しい診断・治療方針基準の構築に向けて

整形外科領域では、現在もX線撮影が診断や計測のベースですが、今後は診断・治療方針の基準がX線像によるものだけではない時代へと変わっていくでしょう。例えば診断・治療基準としての超音波分類が構築できれば、簡便に侵襲性なく治療方針を決定できます。
高画質、高精細、検査時間の短縮など、CT、MRI、超音波の各モダリティの要素技術の進歩により、スポーツ整形外科診療は変わりつつあります。若者にかぎらず、スポーツを楽しむ高齢者も増えていますので、より多くの人がその恩恵を享受できるものと期待しています。