個別化医療が本格化する乳がん診療の画像診断とこれから

中村 清吾 
昭和大学医学部乳腺外科教授/ブレストセンター長 

乳がん治療は、細胞レベルでの根治の時代へ

乳がんの診断・治療の発展は、3つのフェーズに分けられます。最初は、乳房を含め大胸筋からリンパ節まで郭清することで転移・再発を抑える方法で、1900年頃から長らく続きました。次に、1970年代になると、術後に化学療法や内分泌療法を中心とした薬物療法による全身治療を行うことで転移を防ぎ、予後を大きく改善しました。そして現在、遺伝子を軸にした個別化医療が始まっています。細胞内での増殖機序に応じた分子標的薬を術前に使用することで、がんを根治できるような時代が、もうすぐ訪れようとしています。

個別化医療の時代に求められる画像診断の役割

乳がんが転移・再発する可能性を遺伝子レベルまで正確に調べて、治療方針に役立てるのが今の個別化医療です。そのような時代において画像診断には、がんの早期発見はもちろん、分子標的薬を上手に使うために、薬物療法の効果予測や効果判定が正確にできることが求められます。画像診断で最初の投薬による変化の有無がわかれば、適切な治療方針の決定に寄与でき、医療経済にも貢献します。
また、BRCA1遺伝子変異を原因とするがんの8割近くはトリプルネガティブ乳がんで、しかも若くして発症します。これを5mm以下で見つけることができれば、抗がん剤治療を回避できる可能性があります。そのためには、より分解能が高く、がんと非がんの境界がわかるような高精度な画像が得られるかがカギになります。今後は、画像診断への人工知能(AI)の活用にも期待したいと思います。

さらに低侵襲でリスクに応じた乳がん診療をめざして

私たちは現在、遺伝性乳がんについては、どんな人たちにどのモダリティによる検査が必要かを明らかにすることをめざしています。遺伝性リスクが高い人は、若いうちからMRI検査を受けることが有効であることがわかっており、デンスブレストなども含め、リスクに応じたスクリーニングを十分に議論しなければなりません。トモシンセシスや超音波の有用性が検討されていますが、それぞれ一長一短があるため、どれが最適かを明らかにするには臨床試験を行うことが必要と考えます。
遺伝子や画像等の検査技術の進歩に伴い、乳がん診療は変わらなければなりません。新たなフェーズを迎える乳がん診療のあるべき姿を考える時が来ています。