体表面光学式トラッキングシステムCatalystを使用した乳がん放射線治療

キヤノンメディカルシステムズ株式会社放射線治療営業部 上石 達也

はじめに

C-RAD社のCatalystは,可視光を利用した体表面光学式トラッキングシステムで,無被ばくで体表面イメージガイド放射線治療(Surface Image Guided Radiotherapy:SIGRT)およびリアルタイムの患者トラッキングを可能にした製品である(図1)。
本邦においては,2018年4月から乳房照射に対して体表面の位置情報によるIGRTが保険収載され,Catalystは患者への被ばくなしIGRTが行えるため多くの注目を集めている。また,将来的な心疾患リスクを減らすことを目的に,左乳房照射時に心臓への線量を低減させる深吸気息止め法(Deep Inspiration BreathHold:DIBH)においても,Catalystを利用することでより正確にDIBHを行うことが可能となった。各機能・特長に触れながら,このシステムを紹介する。

Catalystとは

Catalystは患者にスリット状の可視光を投影し,その反射光をカメラでとらえることで体表面の凹凸と距離を認識し,患者の体表面の三次元画像を取得している。
Catalystには3つの機能があり,それぞれcPosition(治療前の患者セットアップ),cMotion(治療中のモニタリング),cRespiration(呼吸波形によるゲーティング)となっている。従来のX線を使用したIGRTシステムと比較すると,可視光を使用しているため,被ばくなく安心してセットアップとモニタリングを行うことができる。さらに,視野が80cm×130cm×70cmと広範囲をカバーしているため,従来のIGRTでは撮影範囲外となる場所もとらえることが可能である。特に乳房への照射時は,顎,腕などの上げ方が照射ターゲット位置に影響を与えるため,照射野外のセットアップの再現性も重要となる。Catalystによる位置決め精度,動作検出精度はそれぞれ1mm以下を実現しており,非常に高い精度で臨床使用が可能である。スキャン速度は200フレーム/秒となっており,モニタリング時には患者の動きを直ちに検知することができ,安全な治療を提供できる。

cPosition:Non-Rigidアルゴリズムを使用した治療前のセットアップ

Catalystは患者の体表を認識しているため,従来の皮膚マーキングと比較すると,より多くの情報を使用してセットアップすることができる。特に,乳房の場合には皮膚マーキングは患者の心理的・肉体的負担につながるが,Catalystはこのようなマーキングを減らせる,もしくはなくせる可能性がある。Catalystを導入している施設では,セットアップ精度を検証しマーキングレス化を始めている。
CatalystのcPositionでは,単純な位置(寝台)の補正だけではなく,患者の姿勢の補正が可能となっている。従来のIGRTシステムでは,患者の姿勢は同じである前提でRigid(剛体)アルゴリズムでの照合で行われる。Rigidアルゴリズムの場合,ROI内に局所的な動きが含まれると全体的に補正計算が不正確になるため,動きのある部分をROIから除外する必要がある。しかし,Non-Rigid(非剛性)アルゴリズムを使用することで,局所的な動きを認識し,患者の姿勢を補正することが可能となる。姿勢を合わせる際には,基準画像とライブ画像にズレがあると,Catalystから患者の体表に直接カラーマップが投影される。図2に,実際のセットアップの様子を示す。カラーマップのプロジェクションにより,術者は患者を直接見ながら迅速かつ正確にセットアップすることが可能となる。

cMotion:治療中のモニタリング

放射線治療では,照射前に確認・補正した正確な患者位置が治療中においても変動していないことが非常に重要である。cMotionでは,セットアップ終了後から治療終了まで常に患者が適切な位置を保持できているかを監視することが可能である。
モニタリングにおいては2種類の動きを監視することができる。1つ目はターゲット位置の動きで,2つ目は局所的な動きである。Catalystでは常に患者の体表画像を取得し続け,セットアップ終了後からの患者ターゲット位置のズレ量をリアルタイムで計算し続ける。ターゲット位置の変動のみならず,腕や顎などの部分的な動きもとらえ,それらのズレが許容値を超える場合は自動で照射を中断する。図3に,乳房cMotion時の画像を示す。ゆっくりとした脱力やわずかな腕の挙動といった,従来の監視カメラでは認識し難い動きに対しても,変化をとらえ不適切な位置では照射を自動で中断する。これにより正確な位置を担保したまま,より安全な照射が実現される。

cRespiration:呼吸波形によるゲーティング

cRespirationでは,非接触で患者呼吸波形を取得することが可能である。従来のシステムでは,デバイスを患者に直接設置し呼吸波形を取得することが必要であったが,Catalystではそれらの作業は不要であり,術者の手間を減らすことができる。図4に,乳房cRespiration時の画像を示す。任意の2点の位置の呼吸波形を非接触で取得することが可能であり,これによりDIBH時には胸式呼吸から腹式呼吸へ変わっていないかなどの患者の呼吸方法の変動も確認できる。呼吸波形を取得する位置や息止めのレベルは記録され,毎回の治療では自動的に設定されるため,息止め再現性の向上が期待でき,より正確な位置への照射が可能である。

まとめ

Catalystの3つの機能であるcPosition, cMotion, cRespirationを使用することで,乳房照射の患者において従来よりも皮膚マーキングを減らす,あるいはなくしながらも精度の高い照射を実現できる。また,照射中の安全性も格段に増し,より安全な放射線治療が実現できる。特に乳房照射の患者においては,皮膚マーキングの低減によって治療中のQOLの改善が,DIBHによって将来的なQOLの改善が期待され,Catalystはその実現に大きく貢献できる。

本ページは月刊インナービジョン2019年6月号に掲載されたものです。
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