ADCTの技術を継承した80列CTが専門性の高い整形外科診療に貢献

0.5mm厚撮影やSEMARを活用した高スループット検査を実践し、BBIにも挑戦

弘前記念病院

医療法人整友会弘前記念病院は、整形外科単科病院として東北随一の手術実績を誇り、北東北全域から来院する患者に専門医による診療を提供している。同院は2018年5月、CT装置を16列CTからキヤノンメディカルシステムズの80列CT「Aquilion Lightning/Helios Edition」に更新した。上位機種である320列ADCTから継承した高精細画像や金属アーチファクト低減技術“SEMAR”を活用し、専門性の高い診療ニーズに応える検査を実施している。今回は、整形外科単科病院へのAquilion Lightning/Helios Editionの導入と使用経験について、水木貴博技師長とCT担当スタッフに取材した。

北東北全域から患者を受け入れ専門性の高い整形外科診療を展開

医療法人整友会弘前記念病院は、整形外科の単科病院として1989年に青森県弘前市に開設された。現在は、脊椎、股関節、膝関節、手外科、関節リウマチのチームに分かれ、専門医による診療を提供している。171床の病床はすべて整形外科の急性期病床であり、1日あたりの平均外来患者数は約200名、入院患者数は約140名、年間で約1400件の手術(うち約1000件は全身麻酔下手術)を実施。特に、脊柱管狭窄や椎間板ヘルニア、人工関節置換術においては、東北随一の手術実績を有しており、津軽地方だけでなく北東北全域から患者が来院する。また、手外科やリウマチ、スポーツ整形の専門外来も開設しており、弘前大学整形外科の石橋恭之教授らが診療にあたるスポーツ整形外来には、10~20歳代の患者も多く訪れる。
画像検査においては、同院は“MRIファースト”を掲げ、1.5T装置2台による当日検査が可能な体制を整えている。MRI検査室は、本棟に隣接するリハビリ棟内に設けられており、CT、一般撮影、骨密度測定などその他の検査については、本棟の放射線科エリアに集約している。放射線科には、診療放射線技師8名と助手3名が在籍。検査室が離れているMRIは、水木技師長を含めた専任技師2名で運用し、CTは澁谷清人副技師長、加藤智也技師、蔦谷侑紀技師、平川さゆり技師が主な担当として検査を行っている。水木技師長は、「頭部と明らかな骨折以外はMRIファーストで検査を行いますが、細かい骨折線やアライメント評価、計測などはCTでしかできません。術前には、脊椎と膝関節以外はCT撮影を行い、3D画像を作成しています」とCTの位置づけを説明する。

ADCTの技術を継承し高い専門性にも応える80列CT

同院のCT装置は、シングルCT、16列CTを経て、2018年5月に80列のAquilion Lightning/Helios Editionが導入された。装置更新の理由について水木技師長は、「装置の老朽化もありますが、腰椎手術の患者さんでも全脊椎を撮影するなど、広範囲撮影の検査が増えてきたことがあります」と、診療におけるニーズの変化を挙げる。
同院での整形領域のCT検査は、腰椎を中心とした脊椎系や、股関節などの評価が7割、骨折など外傷が3割となっている。このほか、術前やリウマチの合併症評価のための胸部CT、術前の下肢静脈瘤や深部静脈血栓症の評価なども行っている。造影検査は件数が少ないため、技師のテクニックを装置性能でカバーすることも、装置更新のねらいの一つであった。
機種の選定では、整形外科単科であることにポイントを置いた検討が行われた。水木技師長は、「今後、病院として生き残るために、CTには診療の専門性をより高められる性能・機能が求められますが、単科であるがゆえに、不必要な部分は削ってコストを抑えることも必要でした」と述べる。そして、その要求に合致したのが、Aquilion Lightning/Helios Editionであった。金属アーチファクト低減技術“SEMAR”や、0.5mm撮影スライス厚、必要十分な5MHU X線管の搭載など、整形外科領域の検査に必要な機能や性能を備えていることに加え、ランニングコストを抑えられる経済性も評価された。
水木技師長は、他院へのリサーチなどを通じて同社のCTには信頼感があったと述べ、「320列ADCTの技術を80列CTに移植するというコンセプトに将来性を感じました。Aquilion Lightning/Helios Editionならば、10年後まで第一線で活躍してくれると見込んで導入を決めました」と、装置への信頼と期待が決め手になったと話す。

高スループットの検査で診療に有用な画像を提供

CT検査は現在、1か月に200件ほど実施している。Aquilion Lightning/Helios Editionは78cmのワイド・ボアを有しており、体格や撮影部位にかかわらずセッティングが容易で、肘や膝を曲げた状態での検査でも安全に施行できている。また、以前の装置と比べて稼働音が静かになったことに加え、悩まされていた管球の冷却待ちがなくなり、ストレスのない検査環境となった。更新後の検査状況について、加藤技師は、「検査件数はあまり変わりませんが、撮影スピードが速くなったことで、一人あたりにかかる検査時間が以前の半分ほどになっています。それにより、患者応対や3D画像作成などに時間をかけられるようになりました」と話す。また、Aquilion Lightning/ Helios Editionでは、整形外科の検査で欠かせないMPR処理も容易で、1画面に3断面がリンクした状態で表示され、各断面を確認しながら作成できる。検査後、迅速に医師に画像を提供できるようになり、水木技師長は、「スポーツ外来は火曜日の午後だけですが、20件ほどの検査を、余裕を持ってできるようになりました」と、スループットの高さを評価する。
Aquilion Lightning/Helios Editionは、上位機種で採用されているX線光学系技術“PUREViSION Optics”により画質の向上を図り、ルーチンで0.5mmスライス厚撮影が可能など、高精細画像の提供を実現している。平川技師は、「細かい骨折線や骨梁がはっきり見えるようになりました。医師からは、血管の描出能が上がったことや、屈筋腱や伸筋腱がきれいに描出できるようになった点を評価してもらっています」と話す。

整形領域でのSEMARの有用性とDECTによるBBIへの挑戦

術後で体内金属がある患者の検査も多いが、SEMARを適用することで、金属プレート固定している骨折などでも、骨癒合の状態を評価しやすい画像を得られている。また、ルーチンで行っている3D画像作成においても、アーチファクトのない画像を得られるSEMARの恩恵は大きい。
蔦谷技師は、SEMARが有用だった例として大腿に釘が貫通した症例を挙げ、「血管の明瞭な描出とSEMARにより釘からのアーチファクトを低減できたことで、釘と膝窩動脈が触れていないことが確認でき、そのまま抜釘できると判断できました」と、治療方針の決定に役立ったと述べる。また、平川技師は、「体格の大きい患者さんや腰椎にスクリューを留置している場合には、“AIDR 3D Enhanced”で処理することでノイズを抑えることも有効です。また、腕を下ろした体位でもストリークアーチファクトを除去でき、無理のない姿勢で検査を受けていただけます」と述べる。
Aquilion Lightning/Helios Edition はDual Energy CT(DECT)にも対応しており、同院では新しい取り組みとして、Bone Bruise Image(BBI)の検討を行っている。BBIは、DECTにより抽出したカルシウム成分を差分して除去する手法で髄内血腫を画像化するもので、これにより不顕性骨折などを検出できる可能性が期待されている。加藤技師は、「まだ研究段階ですが、腰の圧迫骨折や手首・足首の不顕性骨折の症例で試みていて、経時的変化が見られるかにも注目しています。また、一般撮影でわかりにくい肋骨骨折疑いについてMRIのSTIR画像のオーダもあるのですが、呼吸の影響によるアーチファクトもあり難しいため、BBIで検査ができないかと期待しています。BBIでMRIを代用できれば、多くの病院ではMRI検査よりもCT検査を施行しやすいので、有用だと思います」と述べる。

CTファーストの検査を増やすことで待ち時間短縮にも期待

今後のCTの活用については、伸筋腱などの画質向上や、BBIも含めたDECTなどに取り組んでいくことを検討している。さらに、水木技師長は、「MRI検査がかなり混み合っているため、CTAやBBIなどでCTが得意な検査を振り分けられれば、患者さんの待ち時間を短縮できますし、時間外に延長してしまっている検査を減らせると思います」と、CTのさらなる活用に期待を示す。
これからも専門性の高い整形外科診療を提供していく同院で、Aquilion Lightning/Helios Editionが第一線での活躍を見せていくことだろう。

(2019年6月26日取材)

医療法人整友会
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http://www.hirosaki-kinen.or.jp
本ページは月刊インナービジョン2019年8月号に掲載されたものです。
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