2D+トモシンセシスを実施した件数は、2018年5月~11月15日までで1215件に上る。何森医師は、2D画像や超音波画像との詳細な比較により、トモシンセシスの評価を行ってきた。「当院ではこれまで、スクリーニングのほとんどを超音波併用で行ってきたので、マンモグラフィ単独検診が増えるにあたり、トモシンセシスの導入を行いました。良悪性に限らず、病変や乳腺構造がどのように見えてくるのかを自分自身で検証するために、全例実施してきました」
2Dでは組織の重なりで病変が見にくく見逃しにつながったり、重なった乳房内の正常構造が病変に見えて偽陽性の原因になるが、トモシンセシスを加えることで診断能の向上が期待される。トモシンセシスは現状、乳癌診療ガイドラインの推奨グレードはC1であり、2Dに加えることで診断能が向上するのか、日本国内での検証が求められている。乳腺超音波診断で著名な何森医師がトモシンセシスを使用するのには、トモシンセシスへの期待の高さがうかがえる。
トモシンセシスが有用だったケースについて、具体的な例をいくつか挙げていただいた。
- 腫瘤(mass):2D画像で指摘された腫瘤について、トモシンセシスで辺縁が明瞭に確認でき、自信を持って診断できる。
- 構築の乱れ(architectural distortion):乳腺構築の歪みは、乳腺濃度が高いと2D画像ではわかりにくいが、トモシンセシスでは長いスピキュラなどがはっきりと確認でき、拾い上げが確実となる。
- 石灰化(calcications):一方向撮影の際には、石灰化の分布(散在性、びまん性、領域性、区域性など)が、パターンとしてわかりやすい。
腺葉の間の脂肪組織の状態なども、トモシンセシスでは明瞭に見えてくる。そういった乳腺構造をガイドにして、超音波検査で詳細な検索を行うことが可能となる。
何森医師は、「トモシンセシスは、FADかな?と迷った時に乳腺の重なりだった、ということが判断しやすくなり、不要な精査を減らすことにつながります」と、トモシンセシスを評価した。さらに、「日本人女性の特徴とも言える高濃度乳房(デンスブレスト)に適したトモシンセシスの画質を追究し、マンモグラフィで十分検索できるようになればメリットが大きいと思います」と、国内メーカーとしての技術開発や画質改善に期待を述べた。