「野球肘」の予防と早期発見をサポートする超音波診断装置

古島 弘三 先生  
慶友整形外科病院 整形外科部長 / スポーツ医学センター長 / 胸郭出口症候群治療研究センター長  
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近年、少年野球での練習過多による肘の障害「野球肘」が問題視されている。慶友整形外科病院でスポーツ医学センター長を務める古島弘三先生は、小学生からプロまで数多くの野球選手を診察し、障害予防の検診にも取り組まれている。昨今、スポーツ医療の検診において超音波診断装置(以下、エコー)が活用されるようになってきた。古島先生は、タブレット型エコーViamo sv7を用いて、野球肘検診などを行われている。その実際について伺った。


選手としての将来を見据えた治療方針の決定
 

ー スポーツ整形外科医としての日頃の活動内容をお聞かせください。

私は肩と肘など上肢スポーツを中心に診療を行っており、必然的に野球選手を多く診ています。患者さんは小学生からプロまで幅広い世代に及びます。治療方針は、選手としての将来を見据えた上で決定しますが、選手は皆、早く復帰して練習や試合をしたいものなので、治療に専念してもらえるよう、日常生活での注意点も含め丁寧に説明しています。また、グラウンドに出向いて治癒の状況を確認したり、指導者に、体に負担をかけず、けがをしにくい練習方法などを提言することもあります。


野球肘の予防と早期発見には定期的な検診が重要
 

ー 野球選手では、どのような外傷・障害が多く見られますか。

野球の場合は、外傷より障害を診ることが多いです。代表的な障害は「野球肘」でしょう。これは、投球動作を繰り返し行うことに起因する肘の障害ですが、病態や程度は年齢によって異なります。骨が未熟な小学生の場合、肘の内側では裂離骨折、外側では離断性骨軟骨炎(OCD)が多く見られます。高校生になると靭帯損傷も増えてきて、大学生やプロ選手ではさらに骨棘障害が見られるようになります。初期のうちは痛みを感じず、知らない間に進行しているので早期発見が大切です。
中学生から大学生にかけては、「胸郭出口症候群」も少なくありません。これは、鎖骨上窩あたりにある前斜角筋・中斜角筋・第一肋骨で形成される間隙(胸郭出口)が狭い場合、その中を走行する鎖骨下動脈と腕神経叢が圧迫され、肘に痛みや痺れが現れるものです。これらの障害は、早期から適切な治療や指導を行わないと、野球の継続が困難になるだけでなく、将来、日常生活に影響を及ぼすことにもなります。定期的に検診を行い、痛みを訴える前に気づいてあげることが重要です。


発症初期の異常も鋭敏に発見できるエコー検査
 

ー 野球肘の検診について詳しくお教えください。

当院では青少年野球選手の肘を守るため、野球肘検診として、個別検診とチームを対象とした集団検診を行っています。
検診では、身体の柔軟性や運動能力を調べた後、エコー検査を行います。エコー検査では、肘外側のOCDと内側の裂離骨折の状況、胸郭出口症候群の素因となる胸郭出口の狭さなどを主に調べます。1人にかける時間はトータルで5分程度です。これにより障害の有無や今後の障害発生リスクを評価し、集団検診ではチームにも結果をフィードバックし、練習方法などをアドバイスします。
私は野球肘検診を始めた当初からエコーを活用してきました。むしろ、障害の予防と早期発見に有用なエコーがあるから、野球肘検診が可能になったともいえます。

ー エコー検査は、どのような点で有用と感じられますか。

▶▶ 障害初期の段階で、迅速に発見可能
野球肘の診断はエコーが得意とするところで、OCDの発症間もない時期は、エコー検査はX線検査より鋭敏に発見できます。靭帯損傷の程度を把握する際も、検査に時間がかかるMRI検査に比べ、エコー検査は迅速に判断できるのがメリットです。
また、エコーは、画像を見せながら選手や指導者に説明できますので、説得力があります。
▶▶胸郭出口症候群の診断に力を発揮
胸郭出口症候群に対しては、エコーは最も有効な画像診断法といえます。胸郭出口の状態を見るだけでなく、腕を挙上させて血流を評価することも容易です。
私は、胸郭出口症候群のエコーを用いた早期診断の意義を広く伝えたいと考え、学会発表や論文作成にも取り組んでいます。
▶▶ 場所を選ばす診断可能なViamo sv7
Viamo sv7は、院外での使用を想定して導入しました。例えば、学童野球における投球障害の早期発見・予防を主目的に2019年1月に開催された「ぐんま野球フェスタ2019」では、私は肩や肘の検診を担当しましたが、その際もViamosv7が活躍しました。携帯できるサイズでありながら画質が良いのが大きなメリットだと思います。
試合中などグラウンドの隅で選手を診断しなければならないこともありますが、Viamo sv7は小型軽量のため、片手で持ちながら使えるので便利です。


エコーは「障害予防」という考え方を後押しするツール
 

ー 野球での肩や肘の酷使といった問題が最近話題になっていますが、どうお考えですか。

エコーを使った野球肘検診が全国的に行われるようになり、肘の障害を早期から発見できるようになりました。検診では、OCDは小中学生の野球選手の2~5%、内側裂離骨折は30~50%の頻度で見つかっています。侍ジャパンU-12代表選手では、OCDは約20%、内側裂離骨折は約67%とさらに高頻度です。
一方、ドミニカ共和国を訪問して少年野球の選手約220人を調べたところ、OCDはゼロ、内側裂離骨折は約19%でした。ドミニカの野球少年の多くは、メジャーリーガーになることを夢みています。その夢を叶えるには、故障しないこと、投げすぎないことが最重要であると指導者の間で徹底されています。日本の指導者も、もっと障害予防に目を向けてほしいと思います。

ー 障害予防におけるエコーへの期待をお聞かせください。

多くの日本の子どもたちが肘の障害を抱えながら野球を続けています。才能がありながら、肘の障害のためにプロになる夢を叶えられなかった子もたくさん見てきました。この問題点を、画像やデータを示しながら訴えられるようになったのはエコーがあるからこそです。
エコーは、病院や医院以外にも接骨院などでも使われるようになってきました。画像の見方をある程度学べば、指導者でも使用できると思います。今後、各チームでViamo sv7のような高性能なポータブルエコーを活用できるようになれば、「障害予防」の考え方をさらに徹底できるだろうと期待しています。
古島 弘三 先生
慶友整形外科病院 整形外科部長
スポーツ医学センター長
胸郭出口症候群治療研究センター長


1998年 弘前大学医学部卒業。同大学整形外科入局
2002年 同大大学院卒業。弘前大学整形外科関連病院勤務
2006年~ 慶友整形外科病院勤務(スポーツ整形外科、関節外科)
現在、整形外科部長・慶友スポーツ医学センター長
医学博士、日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会認定スポーツ医、
日本体育協会スポーツドクター

※ 先生の所属は掲載当時のものです。
一般的名称 汎用超音波画像診断装置
販売名 超音波診断装置 Viamo sv7 US-VSV7
認証番号 229ACBZX00025000
一般的名称 汎用超音波画像診断装置
販売名 超音波診断装置 Aplio i900TUS-AI900
認証番号 228ABBZX00020000
一般的名称 汎用超音波画像診断装置
販売名 超音波診断装置 Aplio i800TUS-AI800
認証番号 228ABBZX00021000
一般的名称 汎用超音波画像診断装置
販売名 超音波診断装置 Aplio i700 TUS-AI700
認証番号 228ABBZX00022000
一般的名称 汎用超音波画像診断装置
販売名 超音波診断装置 Aplio i600TUS-AI600
認証番号 229ABBZX00013000
一般的名称 汎用超音波画像診断装置
販売名 超音波診断装置 Aplio a550CUS-AA550
認証番号 230ABBZX00019000
一般的名称 汎用超音波画像診断装置
販売名 超音波診断装置 Aplio a450CUS-AA450
認証番号 230ABBZX00018000
一般的名称 汎用超音波画像診断装置
販売名 超音波診断装置 Xario 200G CUS-X200G
認証番号 230ACBZX00007000
一般的名称 汎用超音波画像診断装置
販売名 超音波診断装置 Xario 100GCUS-X100G
認証番号 230ACBZX00006000