患者さんのために
そして地域の医療に貢献する姿勢を支える1.5テスラMRI

高画質だけでなく耐久性の良さ、そしてコンパクト性
クリニック全体の良い雰囲気作りに役立つ静音性の提供
さいたま市緑区のたや脳神経外科クリニックは、地元に生まれ育った田屋圭介院長の下、2019年5月に開設された脳神経外科専門診療所である。開業と同時に導入したキヤノンメディカルシステムズ社製1.5テスラMRI装置「Vantage Elan」は脳梗塞、脳動脈瘤などの頭部領域、ならびに頸椎や腰椎椎間板ヘルニアなど脊椎領域のより細かな診断、さらに造影剤を使わずに脳血管や頸部の血管が撮影可能となったことから、脳動脈瘤や脳血管狭窄などに活用されている。田屋院長に同装置の導入の経緯、ならびに使用経験についてお話を伺った。
田屋圭介 院長

MRAならびにASLの実施が適切な治療方法決定に寄与

田屋院長は1999年に東京慈恵会医科大学を卒業後、同附属病院などを経て2006年、米国バージニア州立大学に留学。帰国後、地域医療を学ぶために江東病院(神経内科医長)、三愛会総合病院(内科・脳神経外科)そして本郷脳神経外科クリニック(院長)などの施設を経験し、2019年5月に「たや脳神経外科クリニック」を開設した。以来、半年を経過した現在、1日平均外来患者数が約40名。MRI検査数は1日平均14件、月300件前後に上り、その9割が頭部、1割が頸椎・腰椎であり、その数はさらに増加傾向にある。
外来患者の半数は頭痛で、つづく2~3割が認知症ともの忘れ、めまいやしびれ、そして外傷による来院である。なかでも認知症の方は70~90代、頭痛の方は40代前後が多く、20代と若い方でも頭痛、片頭痛、まれに群発頭痛に悩まされる方が多い。同院は脳神経外科の専門クリニックとしてこれらの疾患に関する診断と治療を行うほか脳ドックや一般健康診断の実施、そして地域医療連携に注力する。
クリニック外観
同院の診療コンセプトについて、田屋院長は以下のように述べる。
「危険な頭痛(二次性頭痛)は、くも膜下出血、椎骨動脈解離、脳腫瘍、慢性硬膜下血腫、脳出血、脳梗塞、髄膜炎など、緊急を要する疾患が考えられますが、当院では緊急時の頭部MRI検査を受け付けています。また脳MRIや認知症血液検査により、認知症の早期発見を可能とし、治療可能な認知症の発見・治療を積極的に行っています。そして脳卒中(くも膜下出血、脳梗塞、脳出血)を心配されている方は、脳卒中の前段階である隠れ脳梗塞や脳血管の詰まり具合、脳微小出血そして脳動脈瘤などを脳ドックで発見し、急な発症を防ぎ、突然の病気を予防できます」。同院長はさらに、認知症を心配されている方も早期発見・早期治療が重要であり、「認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)をアルツハイマーMRI(VSRAD)、認知機能検査や血液検査などにより発見することが可能」と話す。
田屋院長によれば、認知症患者では「血流が悪化している/していない」による、通常のアルツハイマー病と血管型認知症の鑑別が必要だが、この2つはしばしばオーバーラップする、という。「当院では血管狭窄部分をまずMRAで診断し、さらにASL(Arterial Spin Labeling: MRIによる非造影脳血流動態評価)で、実際に血流がどの程度減少しているかをある程度評価することが可能です。これらの検査で血管不整と血流低下が一致する場合もあり、血流が落ちている可能性を考慮し、治療に生かせる可能性があります。通常のアルツハイマー病の進行予防薬だけでなく、血流改善剤も加えるなど適切な治療法決定に生かせる点で、MRAならびにASLは非常に有益なのです」。同院では認知症検査にASLをルーチンで実施するほか、脳主幹動脈狭窄症などのケースでは後からASLを行うこともあるという。

脳血管疾患における鑑別でどうしても必要だった1.5テスラMRI

脳神経外科は一般にはなかなか馴染みが薄いとされる。田屋院長も「この土地への開設を決断した当初は、画像診断装置はCTのみにしようと思っていました。しかし今の患者さんはインターネットなどで情報を広く入手しており、MRIを希望する方が多かったのです」。それまでに経験した他施設でもMRIがメインであった状況から考え、その大きな可能性に気づいた田屋院長は方針を変更し、MRI導入に踏み切った。「ある程度、考える時間があったことはラッキーでした。開業以来、さまざまな幸運が積み重なったこともあり、MRI装置の導入が集患効果に結びついたことは明白です」。
田屋院長は自身の経験から、あらためて脳神経外科診療における画像診断、ひいてはMRIというモダリティの重要性について語る。「脳疾患診断において、診察だけでは見逃しが起こりがちであることから、画像診断の果たす役割はきわめて大きなものがあります。なかでも脳血管疾患における鑑別では、MRIがCTに比べ圧倒的に優位です。また同じMRIでも、0.4テスラあたりの装置では血管が鮮明に描出できず、動脈瘤の見逃しなどが起こる可能性が高いことは私自身、他施設での経験で把握していました。ですからMRI装置を導入するのであれば、最低限でも1.5テスラ装置が必要だったのです」。
事実、開業以来半年で、同院ではMRI検査によりかなりの脳疾患を見つけ、近隣のさいたま市立病院脳外科、ならびに自治医科大学附属さいたま医療センターの紹介・手術に至ったケースが20件あまりに達しており、「MRI導入は明らかに有効だったと言えます」(田屋院長)。

経済性に優れた日本製品ならではの信頼性

1.5テスラMRI装置導入にあたりキヤノンメディカルシステムズ社製の「Vantage Elan」を選定した決め手について田屋院長は、「高画質であることはもちろんですが、さらに耐久性の良さ、そしてコンパクト性という、日本製品のもつ得意技であり信頼感ですね」と語る。「その信頼感は、多少のトラブル時にも迅速かつ柔軟な対応をしてくれるアフターケア体制の充実度にも抱きます。最も大切である患者さんに迷惑をかけないで済んでいる点で、非常に助かっています」。
また同院施設が賃貸である点も、選定を後押ししたという。「使用面積が広がると、その分どうしても家賃は高くなってしまいます。その面では他社と比較し使用面積が狭小な「Vantage Elan」は実に経済的でした。日本の土地にマッチする点で、非常に優れていると思います」。さらに電気料金の観点からも、「自身が想定していた数字の3分の2で収まっている」と、ランニングコスト面での優秀性がクリニック経営面でもプラスに寄与している、と田屋院長は述べる。
「Vantage Elan」のもう一つの特長である静音性についても、田屋院長は「非常に優れている」との手ごたえを患者の声から感じるという。「当院はすでにMRI検査を他施設で経験されているご高齢の患者さんが多く、どうしても比較されることが多いのですが、こうした工夫については皆さん、高評価してくれています。クリニックではコンパクトなスペースになる分、装置が処置室などと近くなってしまいます。その意味でも静音性は、クリニック全体の良い雰囲気作りに役立つと思います。評判の良さは噂として広がり、『検査が楽だった』となれば『じゃあ私も検査してみようかな』となると思うのです」。加えて検査時間短縮のメリットにも同院長はふれ、「当院では『頭部プラス頸部』のMRA検査を頻繁に行っています。昔はこの2検査を行うとかなり時間がかかったのですが、今は全体20分で終わってしまう」点も、患者さんの負担軽減という意味で効果をもたらしたとしている。
このほか「Vantage Elan」は頭側にチルト機能をオプションで搭載し、高齢者の検査に合わせ、首を伸ばし仰向けになることが難しい患者が楽な姿勢で検査を受けられる点も、好評を得ているという。
1.5テスラMRI装置「Vantage Elan」

画像診断装置によるClinical value向上が一層期待される

同院で稼働するキヤノンメディカルシステムズ社製品には、「Vantage Elan」のほかにも超音波診断装置「Xario 100 TUS-X100」、一般X 線撮影システム「R-mini」、またPACSシステム「RapideyeCore / Smart Edition」がある。「R-mini」は頭部外傷ならびに健康診断における胸部一般撮影、また「Xario100 TUS-X100」は開業以降に導入し、頸動脈検査メインで使用している。「1メーカで統一したことは補完性に優れ、何かあったときも一括して責任をもってお願いできる点で、正解だったと感じます」。その優れた補完性はPACSでも実証されており、「超音波検査画像も直ちにPACSに送り、ストレスのない読影作業ができています」。
開業してまだ半年という状況ながら「自分でも予想外の多くの患者さんに来ていただきました。オーナーをはじめ、家族やスタッフすべてが良い方向に導いてくれました。本当に皆さんの力のおかげだと思います」と田屋院長は振り返る。「これに満足することなく、さらなる高みを目指していきたい。私が開業した最大の目的は、専門家として患者さんのため、そしてこの地域の医療に貢献することであり、今後もこのことを忘れずに、診療を行っていきたいと思います」。同院のさらなる発展に向け、「Vantage Elan」をはじめとする画像診断装置によるClinical value向上が一層期待される。
田屋院長とスタッフ
たや脳神経外科クリニック
埼玉県さいたま市緑区芝原2-2-6
TEL:048-764-8526
映像情報メディカル 2020年1月号掲載


一般的名称 販売名 認証番号
超電導磁石式全身用MR装置 MR装置 Vantage Elan MRT−2020 225ADBZX00170000
汎用超音波画像診断装置 超音波診断装置 XARIO 100 TUS-X100 225ACBZX00065000
汎用画像診断装置ワークステーション用プログラム 汎用画像診断ワークステーション用プログラム
RapideyeCore SVIW-AVLE01
227ADBZX00059000
据置型アナログ式汎用X線診断装置 一般X線撮影装置 MRAD-A25SC R-mini 224ADBZX00122000