MR Vantage Galan 3T
Aplio i700 / Prism Edition
Canon Clinical Report 02

高精細画像をベースにした迅速・的確な診断で
アスリートの競技復帰を支援

AI技術を活用したMRIや携帯型超音波診断装置がスポーツ整形外科領域の診療をアップデート

帝京大学医学部附属病院

スポーツ整形外科領域では、即時性や携帯性に優れた超音波診断装置や高解像度のMRIの活用が広がりつつある。スポーツ医科学クリニックの院長を務める笹原潤准教授は、帝京大学医学部附属病院整形外科で超音波診断装置や高精細MRIを積極的に診療に取り入れている。帝京大学におけるスポーツ整形外科の取り組みと、同院や関連施設に導入されているキヤノンメディカルシステムズの3T DLR(Deep Learning Reconstruction)-MRI「Vantage Galan 3T」、1.5T DLR-MRI「Vantage Fortian」、超音波診断装置「Aplio i700 / Prism Edition」などを用いた画像診断の現状や今後の展望を取材した。

日本のスポーツを強化するための整形外科医療を提供

本院では「Aplio i700」など5台の超音波診断装置を診療に活用
帝京大学のスポーツ診療の中心となるのが、2011年に組織化されたスポーツ医科学センターだ。同センターは、最新のスポーツ医科学によるサポートによって、帝京大学、さらには日本のスポーツを強化して、「スポーツの力で日本を豊かにする」ことを目的に設立。2018年には画像診断機器などを備えたクリニック、トレーニング・リカバリー施設、研究機関などが入る専用棟が同大学八王子キャンパスに整備された。同センターの活動について笹原准教授は、「大学の強化指定部(ラグビー、駅伝競走、チアリーディング、硬式野球、女子柔道)を中心に血液検査や画像検査など定期的なメディカルチェック、合宿や試合に帯同したサポートなど、医師だけでなくアスレティックトレーナーや栄養士など多職種が連携した医学的、科学的なサポートを行っています。クリニックでは強化指定部以外の部活や近隣大学の選手など、学内外のアスリートに幅広く診療を提供しています」と述べる。
また、その活動はプロ野球の埼玉西武ライオンズ、JリーグのFC東京などプロスポーツチームの医学的な支援にも拡大している。2023年にスポーツ医科学センターに先端野球研究寄附講座が開設され、その業務の一環として埼玉西武ライオンズに対する医科学サポートや、2024年4月に本拠地(埼玉県所沢市)に隣接して開院した「ライオンズ整形外科クリニック」での診療も行っている。
本院では「Aplio i700」など5台の超音波診断装置を診療に活用

超音波やMRIを活用したスポーツ整形外科を展開

笹原准教授は、スポーツ医科学クリニックのほか帝京大学医学部附属病院(以下、本院)では週1回、ライオンズ整形外科クリニックで週半日の外来を行っている。本院のMRIはVantage Galan 3Tなど4台が稼働しており、整形外科で使用する超音波はAplio i700など5台。そのほか、ライオンズ整形外科クリニックではVantage FortianやAplio i700が稼働する。
スポーツ整形外科領域における画像診断の役割を笹原准教授は、「選手が知りたいのは、いつ競技に復帰できるのか、試合に間に合うのかということです。超音波では、動的評価を含めて患部の状態をその場で確認でき、障害や痛みの原因を把握して次の検査や治療に迅速につなげることができます。また、最近はDLR搭載のMRIによって、高精細な画像が短時間で得られるようになり、超音波と組み合わせることで的確な治療方針を示すことが可能です」と述べる。
笹原 潤 准教授
笹原准教授は、スポーツ整形の診療に超音波を積極的に導入してきたが、そのきっかけは2011年のスポーツ医科学センターの立ち上げだったという。「X線撮影装置などの設備もなく、大学の保健室で徒手で診察していました。X線を撮るには近隣施設まで行く必要があり、超音波ならば遮蔽の必要もなく、その場で患部の状態が確認できるのではと考えて使い始めたのがスタートです。超音波で多くのアスリートを診ることで、その可能性や限界を理解することができました」(笹原准教授)。

浅部から深部まで高精細画像を提供するAplio i700

携帯型超音波診断装置「Aplio air」の活用風景。試合や合宿などに持ち込んでその場で診断が可能
Aplio i700は、高いビーム送受信精度による高精細画像、「iBeam+」による広視野角の検査、フルフォーカスなど多彩なBモード画像を提供するほか、Superb Microvascular Imaging(SMI)やCTやMRIとのSmart Fusion技術などさまざまなアプリケーションを利用できる。笹原准教授は、「Aplio i700では、浅部から深部まで鮮明な画像を得られます。ヒラメ筋の肉離れなど深部の損傷具合もクリアに描出されるので、見逃しが少なくなっていると感じます。そのほか低流速の血流を描出できるSMIや、超音波ガイド下の手技を支援するSmart Fusionが搭載されており、診断から治療まで迅速に対応できます」と評価する。
携帯型超音波診断装置「Aplio air」の活用風景。試合や合宿などに持ち込んでその場で診断が可能
キヤノンメディカルシステムズは、携帯型超音波診断装置「Aplio air」を新たに発売した。試合や合宿先にポータブルの超音波診断装置を持ち込み診断に活用してきた笹原准教授はAplio airについて、「ポケットに入る大きさですが、このサイズの装置の中では高画質の画像が得られます。合宿や試合の際の検査では、従来の装置では画質的に判断が難しく、さらに詳細な検査が必要と感じることがありましたが、Aplio airでは画質の向上によって現場で完結する割合が増えるのではと期待しています」と述べる。

DLR-MRIによって高精細化と検査時間の短縮を実現

キヤノンメディカルシステムズのDLRMRIでは、デノイズ技術「Advanced intelligent Clear-IQ Engine(AiCE)」、超解像技術「Precise IQ Engine(PIQE)」などディープラーニングを活用した技術によって、高画質化と高速化を図っている。スポーツ医科学クリニックには他社製オープン型MRIが導入されているが、DLR-MRIについて笹原准教授は、「MRIでは、超音波では評価が難しい膝の靭帯や軟骨の損傷、疲労骨折や腰椎分離症などの観察を行っています。DLRによって従来のMRIから画質が大きく向上し、細かい組織まで観察できるようになりました。例えば、足関節では三角靭帯の浅層から深層まで線維組織の状態が確認でき、屈筋支帯の状態も詳細に観察できます。DLR-MRIでは描出の精度が大きく向上しており、的確な治療方針の決定に役立ちます」と述べる。
DLR-MRIのもう一つのメリットは撮像時間の短縮だ。笹原准教授は、「撮像時間の短縮で、受傷直後など痛みで静止が難しい場合でもブレのないクリアな画像が得られます。また、検査時間の短縮は検査スループットの向上にもつながっており、本院ではVantage Galan 3Tの導入後、緊急性が低いスポーツ整形外科の依頼でも当日検査が可能になりました。命の危険はなくても、選手本人にとってはその診断が競技人生を左右することもあり、迅速な検査ができるメリットは大きいです」と述べる。また、1.5Tについても、「ライオンズ整形外科クリニックのVantage Fortianでは、DLRの活用で3Tと遜色ない画像が得られています。撮像時間も部位や症状でシーケンスを絞ることで、さらに短時間で検査が可能で、単科クリニックでもタイムラグのない迅速な診療が可能です」(笹原准教授)とのことだ。
笹原准教授はMRIでCTのような画像を描出するBone Imageにも期待する。スポーツ整形領域では、腰椎分離症や足関節インピンジメント症候群における骨折線や骨棘などの描出に有用で、「通常のMRIでは低信号で描出されるため評価の難しい、骨や腱、靭帯などがBone Imageでは高信号で描出されます。CTと同等ではありませんが、CTを依頼する頻度は明らかに減っています」(笹原准教授)と言う。

現場に近い携帯型超音波のさらなる普及・拡大に期待

笹原准教授は、MRIとのフュージョンによる超音波ガイド下の治療の可能性について、「腰の神経根ブロックは、超音波だけではターゲットが見にくいことがありますが、フュージョンによってMRIで神経根の位置を確認して超音波ガイド下で確実にアプローチできます。X線透視下よりも低侵襲に確実に治療を進めることが可能です」と期待する。スポーツの現場での携帯型超音波診断装置の普及については、「チームに1台携帯型の装置があれば迅速に判断できますし、医師が帯同できなくても遠隔で判断することも可能です。Aplio airのような携帯型装置の普及と現場での認識の拡大や理解が進むことを期待しています」(笹原准教授)と述べる。
スポーツ領域においても、データやエビデンスに基づいたより科学的なアプローチが求められている。高精細画像や迅速な検査を提供するモダリティがアスリートの進化を支えていく。(2024年11月25日取材)

※本記事中のAI技術については設計の段階で用いたものであり、本システムが自己学習することはありません。
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帝京大学医学部附属病院
東京都板橋区加賀2-11-1
T’S BRIGHTIA尾山台1F
TEL 03-3964-1211(代)
https://www.teikyohospital.jp
一般的名称 超電導磁石式全身用MR装置
販売名 MR装置 Vantage Galan 3T MRT-3020
認証番号 228ADBZX00066000
一般的名称 超電導磁石式全身用MR装置
販売名 MR装置 Vantage Orian MRT-1550
認証番号 230ADBZX00021000
類型 Vantage Fortian
一般的名称 汎用超音波画像診断装置
販売名 超音波診断装置 Aplio i700 TUS-AI700
認証番号 228ABBZX00022000
一般的名称 汎用超音波画像診断装置
販売名 超音波診断装置 Aplio air CUS-AAR00
認証番号 306ACBZX00021000