Vantage Elan / Vantage Gracian
整形外科 導入事例

成長期腰椎分離症におけるMR Bone Imagingの臨床活用

社医療法人社団三水会 北千葉整形外科

北千葉整形外科は、「医療を通して、社会貢献をする」を理念に地域の健康を整形外科の分野から支えており、千葉市内の稲毛、美浜、幕張に3つのクリニックを持つ医療法人グループです。2002年の開院当初より疾患別専門の外来を提供する体制を整えており、各疾患・分野を専門とする医師が日々の診療にあたっています。有床診療所である幕張クリニックでは、キヤノンメディカルシステムズ社製の1.5テスラMRI Vantage Elan、無床診療所である美浜クリニックでは同社製のVantage Gracianが稼働しており、寺門理事長の専門である成長期腰椎分離症におけるMRIの役割と有用性、そして今後の展望について話をお伺いしました。

北千葉整形外科における腰椎分離症の診療アウトライン

北千葉整形外科では、1週間以上続く腰痛を主訴としたスポーツをしている子供たちには、原則としてMRIを撮像することを勧めているという。

理事長 寺門 淳 先生
寺門理事長は「当院では過去に腰痛を主訴とした成長期の患者に対して全例にMRI を実施したことがあります。その結果、小学生では40%-50%、中高生では65%(男性7 割、女性4 割)が腰椎分離症であることが分かりました。つまり、成長期の腰痛患者を診察する場合に最も考えるべき疾患は腰椎分離症なのです。腰椎分離症は様子をみていくうちに腰痛が改善してしまい、検査をいやがる場合もあります。なるべく早期にMRIを行い、腰椎分離症を発見して治療方針を決定する必要があります。」と述べる。

理事長 寺門 淳 先生

成長期腰椎分離症の診断におけるMRIの活用

幕張クリニックのVantage Elan、美浜クリニックのVantage Gracian双方においては、STIRにおける椎弓部の骨髄浮腫の検索、MR Bone Imagingを用いた分離の形態把握など、分離症の診断に十分な高画質の画像が得られていると評価する。

「キヤノンメディカルシステムズ社製1.5TのMR Bone Imagingであっても腰椎分離症の小さな亀裂を描出することが十分に可能です。図1は分離症の症例で、L5に辺縁が不正な完全分離が見られ、進行期(Ⅱ型)と診断した症例です。MR Bone ImagingではCT画像と比較しても遜色のない評価ができ、フォロー後の分離部の骨癒合の様子も観察することができました。成長期の患者さんが多い腰椎分離症において、放射線被ばくなしにフォロー検査が行える点はMRIの大きな強みです。」(寺門理事長)

図1. CT画像とMR Bone Imagingの比較

腰椎分離症におけるMR Bone Imagingの診断能

表1.腰椎分離症のMR Bone ImagingとCT画像の対比(文献1より許諾を得て改変転載)
北千葉整形外科ではMR Bone Imagingを腰椎分離症の診療に活用するにあたり、どれ程の診断能があるかCTをgolden standardとしてVantage Elan、Vantage GracianのMR Bone Imagingを用いて腰椎分離症の診断率を算出した(表1)1)。その結果、「MR Bone Imagingは陽性的中率と特異度が高い検査であることがわかり、STIRを併用することで感度を補完し、診断精度を向上させることができることが判明しました。」と寺門理事長は述べる。

表1.腰椎分離症のMR Bone ImagingとCT画像の対比(文献1より許諾を得て改変転載)

腰椎分離症におけるMR Bone ImagingのCTと比較した病期の相関について

腰椎分離症の治療方針を決定するためには、分離の程度を評価して装具の選択や安静期間を決める必要がある。そのためにはCTが必要であり、矢状断像をもとに初期(Ia型、Ib型)、進行期(Ⅱ型)、終末期(Ⅲ型)の4段階の病期に分類(図2)1)して治療方針を決定する。そこで、寺門理事長はMR Bone ImagingがCTの代用になるかを検討するためにCTとMR Bone Imagingの矢状断の画像を用いて腰椎分離症の病期の比較を検討した。「MR Bone Imagingで完全分離である進行期(Ⅱ型)または終末期(Ⅲ型)と診断した部位はいずれもすべてCTの病期と完全に一致していました。一方、MR Bone Imagingにて不完全分離である初期(Ib型)と診断した部位のCTとの病期の一致率は47.6%であり、一致しなかった部分は完全分離である進行期(Ⅱ型)でした。MR Bone Imagingで不完全分離である初期(Ia型)と診断した部位とCTの病期との一致率は67.6%であり、一致しなかった部分についてはCTの病期が初期(Ib型)か進行期(Ⅱ型)で、MR Bone Imagingで診断した病期よりも亀裂が大きい結果となりました。MR Bone Imagingにて正常と診断した部分のCTの病期との一致率は58.7%であり、一致しなかった部分はCTで初期(Ia型またはIb型)の分離という結果でした。以上を総括すると、病期で不一致であった部分のほとんどは、MR Bone ImagingがCTよりも分離の病期を過小に評価する傾向があることが分かります。」とのことだ(表2)1)

図2.CT画像とMR Bone Imagingの矢状断における腰椎分離症の形態分類(文献1より許諾を得て改変転載)
図2.CT画像とMR Bone Imagingの矢状断における腰椎分離症の形態分類(文献1より許諾を得て改変転載)

表2.腰椎分離症の形態別にみたMR Bone ImagingとCT画像の対比(文献1より許諾を得て改変転載)
表2.腰椎分離症の形態別にみたMR Bone ImagingとCT画像の対比(文献1より許諾を得て改変転載)

1.5T MRIを用いた成長期腰椎分離症の診断フローチャート

寺門理事長は、今回の結果から、1.5T MRIを用いた成長期腰椎分離症の診断フローチャート(図3)1)について次のように説明する。「まず、感度の高いSTIR画像において椎弓根部に骨髄浮腫が認められず、MR Bone Imagingで所見がない場合は0型であれば正常でありCT検査は不要です。次にSTIRで浮腫が認められず、MR Bone Imagingで完全分離が見られる場合には全例Ⅲ型(偽関節)であり、それ以上のCT検査は不要です。STIRで浮腫が見られる場合には、MR Bone Imagingの所見の程度により方針を分ける必要があります。STIR陽性でMR Bone Imagingで所見がない場合はほぼ全例が不完全分離です。不完全分離の骨癒合率は80%以上と報告されているため、更なるCT検査を行う必要性はないと考えます。STIR陽性でMR Bone ImagingでIa型、Ib型と診断した場合には病期が過小評価されている可能性を鑑み、CT検査も行い不完全分離か完全分離かの判別をしています。STIR陽性でMR Bone Imagingで完全分離であるⅡ型の場合は、CT画像との病期一致率は100%であったためにCT検査は不要です。このように、STIRとMR Bone Imagingを併用することで、一定の割合でCT検査を省略することができます。」

図3.成長期腰椎分離症の診断フローチャート(文献1より許諾を得て改変転載)

AI再構成が診断能に与える影響と今後の展望

美浜クリニックに導入されたVantage Gracianにはディープラーニングを用いたデノイズ技術である”Advanced intelligent Clear-IQ Engine(AiCE)”が搭載されている。
AiCEの効果について寺門理事長は、「これまでMR Bone Imagingはスライス厚1.5mm(図4左)で撮像し、分離症の形態診断を行っていました。Vantage Gracianの導入でAiCEが活用できるようになり、より薄いスライス厚での撮像が可能になりました。同一の面内分解能でスライス厚を1.0mmに薄くするとノイズが増加してしまいますが(図4中)、AiCEの適用でノイズが低減され高画質な画像が得られています(図4右)。従来法とThin Slice ImagingのMPR画像の比較においても、スライス厚1.0mmの方が、椎弓がよりシャープに描出されており(図5)、CTと比較した病期の比較で過小評価となったIa型、Ib型の診断能向上に期待をしています。」と評価する。
最後に寺門理事長は今後の展望について、「症例を重ねていくことで、完全分離と不完全分離の診断能について検討できればと考えています。また、MR Bone Imagingが腰椎分離症の骨癒合判定に用いることができればさらにCT検査を省くことができるため、CTとMR Bone Imagingの腰痛再発率を比較して評価していく予定です。」とメッセージを寄せた。

図4. MR Bone ImagingにおけるAiCEの効果
図4. MR Bone ImagingにおけるAiCEの効果

図5. Thin Slice ImagingにおけるAiCEの効果
図5. Thin Slice ImagingにおけるAiCEの効果

参考文献 1)寺門淳ほか,成長期腰椎分離症におけるBone imaging MRIの診断率,JSpineRes.2024:15:929-34.
*本記事のAI技術については設計の段階で用いたものであり、本システムが自己学習することはありません。
記事内容はご経験や知見による、ご本人のご意見や感想が含まれる場合があります。掲載内容は予告なく変更する場合があります。掲載内容はオプション構成品を含みます。

一般的名称 超電導磁石式全身用MR装置
販売名 MR装置 Vantage Elan MRT-2020
認証番号 225ADBZX00170000
類型 Vantage Gracian