Case Study Vantage Galan 3T

Vantage Galan 3T / Supreme Editionの初期使用経験

本城 和光 先生 本城クリニックPET画像診断センター 院長

本城クリニック

山口県周南市の本城クリニックPET画像診断センターでは、35年以上MRI診断に携わる本城院長を筆頭に、画像診断専門医や各専門スタッフによる高度な診断を行っています。
同院では2024年2月よりキヤノンメディカルシステムズ社製のVantage Galan 3T / Supreme Editionを導入。AI技術を活かすためにハードウェアを一新した、次世代の3T MRI装置です。Vantage Galan 3T / Supreme Editionの選定理由や初期使用経験について伺いました。

Vantage Galan 3T / Supreme Edition導入の理由

本装置の製品化にあたって、キヤノンが新しい3T MRIシステムをマグネットから自社で開発しており、さらにその磁場の均一性が非常に高い点、傾斜磁場システムや高速演算システムも含めて一新され、主なハードウェアが全てキヤノン製になった点に非常に興味をもった。さらにAdvanced intelligent Clear-IQ Engine*(AiCE)やPrecise IQ Engine*(以下、PIQE)といったAI技術を用いた再構成技術が加われば、より良い画像診断を受検者に提供できるのではないかと思い、この先進の技術が凝縮されたキヤノンの3T MRIを購入しようと決断した。

New Made-by-Canonマグネットについて

マグネットはMRIにとっての心臓部に相当するもので、その磁場均一性をいかに高く保つことができるかという点が画質や解像度に大きく影響してくる。また、体幹部の広い範囲を撮影する場合には、画像の端において発生する磁場の不均一性による歪みが問題になることがある。
Vantage Galan 3T / Supreme Editionで実際に撮像された画像を見てみると、非常に歪みが少ない画像が得られていたことに驚かされた。例えばFOVを50cmまで広げて脊椎を撮像しても、歪みがほとんどない非常に綺麗な画像を得ることができている(図1)。
兵庫県の赤穂にあるマグネットの工場を視察した際には、製造スタッフの方々が全ての工程において高い技術力で丁寧に静磁場均一性の高いマグネットを製造している姿に匠の技を感じた。

PIQEの初期使用経験

PIQEはDeep Learning Reconstruction(DLR)をベースとした再構成技術であり、ノイズリダクションだけでなく画像の解像度を上げることにより、予想を超える高解像度の画像を様々な領域で得ることができる。
PIQEは、ほぼ全ての2Dパルスシークエンスにおいて3倍まで解像度を上げる設定が可能であるため、非常に使い勝手がよく、中枢神経や脊髄領域はもちろんのこと、上腹部領域の呼吸停止撮像においてもマイクロメートルオーダーの空間分解能を持った画像が得られている。
例えば膵臓の検査では、T1強調画像も膵管が非常に明瞭に描出でき、今まではなかなか捉えきれなかった1~2mmの小さな膵嚢胞も検出できる画像が得られている。胆嚢の撮像では空間分解能として100μm程度の画像も得られており、具体的には、胆嚢の表面の構造や小さなコレステロールポリープなどの検出能が上がっている。
PIQEのもう一つの利点として、撮像時間の短縮が挙げられる。例えば、今まで撮像マトリクスを256×256で設定していた撮像条件において、位相エンコード数を半分に減らせば(128×256に設定)、撮像時間は半分に短縮できる。位相エンコード数を減らした条件にPIQEを適用すると、撮像時間を短縮した状態で、空間分解能は元の条件と同等、もしくはそれ以上の画像が得られる。これは呼吸停止の難しい受検者の腹部領域検査において非常に有効である。特に撮像時間の短い2D FASEにPIQEを適用したプロトコルを使用することにより、撮像時間を短縮することができ、受検者への負担も軽減することができた(図2)。また、位相エンコードマトリクスを減らして短縮した時間分で撮像枚数を増やすなど、応用例が広がり、状況に応じたフレキシブルな条件設定をPIQEは可能にしている。

Zoom DWIの初期使用経験

Zoom DWIは励起パルスを再収束パルスに対して特定の角度だけ回転させることで、フェーズエンコード方向の折り返しアーチファクトのない撮像を行う機能である。当院ではZoom DWIを膵臓および前立腺の2カ所で主に使用しており、従来よりも非常に解像度の高い拡散強調画像が得られている。3T装置において躯幹部の拡散強調画像を撮像すると信号が不均一になるが、Vantage Galan 3T / Supreme EditionのZoom DWIで得られた画像ではこの信号均一性が非常に安定している。実際に臨床では約1cmの膵頭部癌を発見できた(図3)。今までの撮像条件とZoom DWIを比較したところ、通常の撮像条件では捉えきれていない病変がZoom DWIによって高信号に描写されていたのは驚きであった。
前立腺の検査においても、従来の拡散強調画像では見えていなかった外科的皮膜の部分、内線と外線の境界領域などの解剖学的構築まで見える画像が得られている。Zoom DWIにはPIQEも併用でき、ADCも正確に測れるため、非常に有用な撮像法であると考える。

最後に

Vantage Galan 3T / Supreme Editionの臨床稼働は始まったばかりだが、発見は多く、特に躯幹部においては、今までにない高解像度の画像が得られている。使っていて楽しくなる装置であり、快適性、操作性もさることながら、一新されたハードウエアに加え、ソフトウェア、特にAIを利用した画像処理PIQEと、本当にキヤノンスタッフのプライドを感じている。
今後の課題は膵癌の早期診断である。PanINと呼ばれる膵癌の早期変化をこの高画質MRIでいかに捉え、膵癌の早期発見に役立つかチャレンジしていきたい。

*本システムは画像再構成に用いるネットワーク構築にDeep Learningを使用しており、本システム自体に自己学習機能を有しておりません。
*DLR:Deep Learning Reconstruction

記事内容はご経験や知見による、ご本人のご意見や感想が含まれる場合があります。掲載内容は予告なく変更する場合があります。掲載内容はオプション構成品を含みます。

一般的名称 超電導磁石式全身用MR装置
販売名 MR 装置 Vantage Galan 3T MRT─3020
認証番号 228ADBZX00066000