Case Study Vantage Galan 3T

Vantage Galan 3T / Supreme Editionの初期使用経験に基づく将来展望

大野 良治 先生 藤田医科大学 医学部 放射線診断学 同 先端画像診断共同研究講座

藤田医科大学

藤田医科大学では、2024年4月よりキヤノンメディカルシステムズ社製の新3T MRI装置Vantage Galan 3T / Supreme Editionが臨床稼働している。本新システムの画質改善の鍵として自社開発した新たな静磁場マグネットを第1に挙げる。本静磁場マグネットは従来に比べて磁場均一性が向上し、従来使用してきた3T装置よりも大きなFOV撮像も可能となっている。また、最新のSystem Software Ver. 10.0が搭載され、Deep Learningを用いた超解像技術Precise IQ Engine*(以下、PIQE)の適応拡大、拡散強調画像における小FOV撮像が可能なZoom DWIが使用可能になり、新たなMRI診断の可能性や発展性を感じさせる装置になっている。今回は、同院でのVantage Galan 3T / Supreme Editionの初期使用経験について臨床例を供覧しながら述べたい。

一新されたハードウェアによる画質向上

Vantage Galan 3T / Supreme Editionのマグネットは、キヤノンメディカルシステムズ社の兵庫県赤穂市にある工場で開発されている。マグネットの設計段階において、1ミクロンオーダーでコイルの位置を最適化、製造段階においても1ミクロンオーダーで制御するような非常に高精度な巻線機を使用している。この設計と製造の最適化により、30cmDSV(diameter spherical volume)で0.05ppmという高い磁場均一性を達成している。
この新たな自社開発のマグネットによる磁場均一性の向上により、従来よりも大きなFOV(Large FOV)における安定した広範囲撮像が可能となった。具体的には、従来装置では最大FOVが50×50×45cmであったが、Vantage Galan 3T / Supreme Editionでは、最大FOVが55×55×50cmに拡大、安定したLarge FOV検査が可能となった。
現在、世界的に着目されている肺野のMRI with Ultra-Short TE < 200μs(UTE-MRI)において3T MRI装置は1.5T MRI装置に対してT2*が短いことから画質劣化が避けられないとされてきた。しかし、Vantage Galan 3T / Supreme Editionの高い磁場均一性は従来の3T MRI装置におけるUTE-MRIよりも同撮像条件でより高いSignal-to-Noise Ratio(SNR)画像を提供し、1.5T MRI装置におけるUTE-MRI画像と同等以上の画像を提供することも可能になっている。したがって、今後は1.5T MRI装置のみならず3T MRI装置においても肺野のMRIはさらに進歩することが期待される。

PIQEの適応拡大による診断能向上

PIQEは、低SNR・低分解能の画像から高SNR・高分解能の画像を出力可能なDeep Learningを用いた超解像技術である。Zero-fill interpolation(ZIP)により分解能を向上させ、ZIP処理で問題となるブラーリングやリンギングを改善、最適化するよう学習させたニューラルネットワークを適応することで、鮮鋭度およびSNRを向上させた画像が得られる。これまでPIQEは2D FSEへの適応が主であったが、System Software Ver. 10.0ではFSE以外の2Dシーケンスにも適応が可能となった。従来2D FASEのようなシングルショット撮像の高分解能化は、エコー数を増やすことによるブラーリングや撮像時間の延長が問題であったが、2D FASEにPIQEを適用できるようになったことで、短時間で動きに強いというシングルショット撮像の特長を保ったまま高分解能化が可能となった。
図2にて右CD領域乳がん患者のT2WI、Diffusion-Weighted Imaging(DWI)およびdynamic MRIを示す。
また、図3にて膵頭部癌症例を示す。乳腺の脂肪抑制T2WIや膵臓の脂肪抑制T2WIなどにおいて、従来再構成を用いたoriginal T2WIに比して、PIQEを使用することにより再検査をすることなく9倍の画素による高画質のT2WIを撮像後に提供できる。以上から、PIQEを臨床現場で使用することで、今後様々な領域における高分解能MR画像による日常臨床が可能になり、従来よりもさらにマクロ病理を反映した形態画像や高精細なDWIやDynamic MRIなどによる診断能向上が期待できる。

歪みを低減したZoom DWI

Zoom DWIは拡散強調画像における小FOV撮像技術であるが、励起パルスを再収束パルスに対して特定の角度だけ回転させることで、PE方向の折り返しアーチファクトのない撮像が可能となり、FOVを絞ることでEPI由来の歪みを低減することができる。また、前述の適応拡大により2D EPIシーケンスとPIQEの併用も可能となった。図4に膵頭部癌患者における通常撮像法によるDWIとZoom DWIを示す。なお、Zoom DWIにはPIQEを併用し、高分解能DWIとして撮像したが、通常のDWIに比して高SNRでかつ高解像度のDWIを撮像可能である。また、図5に前立腺癌患者における通常撮像法によるT2WI、通常撮像法によるDWIおよびZoom DWIを示す。なお、T2WIは通常再構成とPIQE、通常撮像法によるDWIは通常再構成を行っているが、Zoom DWIはPIQEにて再構成を行っている。PIQE再構成画像にて同一撮像条件においても高分解能化が図れているが、Zoom DWIを併用することでb=1500s/mm2画像およびApparent Diffusion Coefficien(tADC)画像の画質改善及び病変部の描出能や歪みの改善が認められる。

大幅な画質改善による臨床での可能性に期待

キヤノンメディカルシステムズ社製の新3T装置Vantage Galan 3T / Supreme Editionは同社が新たに自社開発したマグネットを使用し、最新のSystem Software Ver.10.0を使用することにより、Large FOV画像やUTE-MRIなどの画質改善、Deep Learningを用いた超解像技術PIQEの適応拡大と小FOV撮像が可能なZoom DWIが使用可能になった。臨床現場における3T MRIの体幹部領域を中心とした画質改善などにより、さらなる臨床3T MRIの可能性を拡大することが可能であると考える。

*本システムは画像再構成に用いるネットワーク構築にDeep Learningを使用しており、本システム自体に自己学習機能を有しておりません。
*DLR:Deep Learning Reconstruction

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一般的名称 超電導磁石式全身用MR装置
販売名 MR 装置 Vantage Galan 3T MRT─3020
認証番号 228ADBZX00066000