“AI”による新しいSNR向上技術
Advanced Intelligent Clear-IQ Engine(AiCE)導入事例

1.5T DLR-MRIがもたらしたMRI検査の変化

須田 徹 技師 IMS〈イムス〉グループ 医療法人財団 明理会 イムス太田中央総合病院 放射線科

IMS〈イムス〉グループ 医療法人財団 明理会
イムス太田中央総合病院

医療法人財団 明理会 イムス太田中央総合病院は、群馬県太田市に位置し、“あたたかく患者様をつつむこと”、“地域医療に貢献すること”、“近代的な医療を提供すること”の3憲章を元にIMSグループの理念である“愛し愛される病院”を目指し、地域に密着した医療を提供している病院です。
同院では2023年4月にキヤノンメディカルシステムズ社製の1.5T MRI Vantage Fortianを導入。1年が経過した現在、導入前と比較したMRI検査の変化について伺いました。

Vantage Fortian導入に至った経緯

― 装置選定時、重要視されていたことはありますか?
当院では、もともと1件あたり30分で検査を行っていましたが、時間内に検査を終わらせることを優先するため、画質に十分満足しているとは言い難い状況でした。そのため、まずは短時間でも高画質に撮像できることを重視していました。また全身DWIや乳がん検診などの新たな検査を増やしたいという構想がありましたので、DWIの歪みが少ないという点もポイントでした。これらを考慮し、当院のニーズとマッチしていたのが、Vantage Fortianでしたので、導入しました。

導入後、MRI検査が大きく変化

― 実際に装置を導入してどのような印象ですか?
まず、以前よりも短時間で撮像しているのに、高画質な画像が取得できていることに大変満足しています。Advanced intelligent Clear-IQ Engine*(以下、AiCE)は部位やシーケンスの制限がほとんどなく、様々なアプリケーションとも併用できるため、全身で綺麗な画像が短時間で撮像できます。
また、撮像後にデノイズ強度が5段階で変更ができるのもいいです(図1)。当院では、MRI専任の技師以外もMRIを使用していますから、不慣れな技師が撮像条件を変更した場合に、誤ってSNRを確認せず撮像してしまうこともあります。そのような場合も、撮像後に画像に合わせてデノイズ強度を細かく変更することで、リカバリーできるため助かっています。
― DWIの画質に関してはいかがでしょうか?
Vantage Fortianに更新してから、全身で安定して歪みが少ないDWIを撮像できています。従来装置はTEを細かく変更できませんでしたが、Vantage Fortianでは1ms刻みでの変更が可能になったため、撮像条件をより最適化でき、DWIの画質が向上しました。
また、Vantage Fortianでは、DWIの歪み補正技術であるRDC DWIが搭載されているため、AiCEと組み合わせることで、従来では難しかったスライス厚2mmでも、歪みの少ないDWIを撮像できています(図2左)。同様に、これまで難しかった冠状断のDWIも、1分半弱で撮像が可能になりました(図2右)。AiCEによって撮像時間全体が短くなり、DWI自体も短時間ですので、このような画像も積極的に追加撮像しています。
― 頭部以外の部位ではいかがですか?
全身DWIでも歪みの少ないDWIが撮像可能です。スティッチングも利便性が高いため、つなぎ目が目立たず歪みの少ない全身DWIを撮像できています(図3)。つなぎ合わせるための苦労がないことは、技師として嬉しいポイントです。
また、コンソール上で簡単にワンクリックで他の画像とカラーフュージョンできる点も重宝しています。DWIは分解能が上げづらいため、分解能の高い画像とフュージョンすることで精度を補うことが可能です。さらに、DWIの歪みが少なく、重なりの精度が高いため、スクリーニングなどに有用だと考えています。
― Vantage Fortianを導入したことで、検査にどのような変化がありましたか?
検査面の変化ですと、無痛MRI乳がん検診が行えるようになった点が挙げられます。これはドゥイブス・サーチ社が行っている、着衣のまま行えるMRI乳がん検診です。近隣では行っていない新たな乳がん検診の手段になりますし、受診率向上によって地域の方々の乳がんの早期発見・早期治療につながると考え、開始しました。
― 無痛MRI乳がん検診の反響はいかがですか?
想定していた以上に大きな反響をいただいています。痛みがなく、着衣のまま受診できるため大変好評で、群馬県内のみならず県外からも多くの方にご来院いただいています。検査数は、乳腺だけでも1年間で300件以上増加しました。そのため、収益の面でも病院経営に貢献できています。
― 乳腺DWIの画質はいかがですか?
Vantage Fortianに更新したことで、Smart IRによる脂肪抑制効果の向上、RX / TX Correction plusによる輝度補正もあり、均一に脂肪抑制の効いた綺麗な乳腺DWIが撮像できるようになりました(図4)。そのおかげで、より精度の高い画像での検診を行うことができています。
― その他、撮像に関しての変化はありましたか?
全体的に短時間での撮像が可能になったのは、先ほどもお話しした通りですが、特に大きく変わったのは腹部のDynamic MRIです。Dynamic MRIでは、造影コントラストと鮮鋭度を維持しつつ、息止め時間を短縮するために短時間化が必要です。Vantage Fortianに搭載された高速撮像技術であるSequential Wheelでは、信号収集方法を工夫することで、コントラストと鮮鋭度を保ちながら、撮像時間の短縮が可能になりました。これにより、鮮鋭度を保ったまま短時間で綺麗なDynamic MRIを撮像できるようになりました(図5)。当院で読影をお願いしている放射線科の先生に先日お会いしたとき、「画質が良くなってずっと3テスラの画像だと思っていたよ!」と仰っていただきました。

さらなる地域貢献に向けて

― 今後の展望をお願いいたします。
導入して1年が経過し、AiCEやRDC DWIをはじめとする画質向上技術の使用にも慣れてきました。今後は、無痛MRI乳がん検診のように「ここでできるから来た!」という受診者様がさらに増えるよう、新たな検査を追い求めて検討を繰り返し、さらなる地域貢献を実現できるよう、スタッフ一同協力して取り組んでいきます。

*本システムは画像再構成に用いるネットワーク構築にDeep Learningを使用しており、本システム自体に自己学習機能を有しておりません。
*DLR:Deep Learning Reconstruction
記事内容はご経験や知見による、ご本人のご意見や感想が含まれる場合があります。掲載内容は予告なく変更する場合があります。掲載内容はオプション構成品を含みます。

一般的名称 超電導磁石式全身用MR装置
販売名 MR 装置 Vantage Orian MRT─1550
認証番号 230ADBZX00021000
類型 Vantage Fortian