”AI”による新たな超解像技術
Precise IQ Engine(PIQE)導入事例

SoftwareVer.9.0がもたらした新たなMRI検査について

小川 匡史 先生 日本医科大学付属病院 放射線科 主任
日本医科大学付属病院は、東京都文京区千駄木に位置し「つくすこころ」で良質な医療を提供するという理念のもと、地域の基幹病院として急性期医療を担っています。
同院では2022年1月よりキヤノンメディカルシステムズ社製の1.5T MRI Vantage Orian(Ver7.0)が稼働しており、2023年8月にソフトウェアVer 9.0へ更新しました。バージョンアップにより新たに使用可能となったディープラーニングを用いた超解像技術Precise IQ Engine*(以下、PIQE)を含むいくつかの撮像技術が同院のMRI検査にもたらした変化について伺いました。

脳神経領域でのPIQEの活用

ソフトウェアVer9.0へ更新したことによる大きな変更点は“PIQE”が使用可能になったことである。PIQEとは、ディープラーニングを用いて空間分解能を向上させる超解像技術である。また、Advanced intelligent Clear-IQ Engine*(以下、AiCE)を継承したSNR向上技術も含まれるため、撮像した画像に対して鮮鋭度、SNRを向上させた画像を取得することが可能になる。
当院ではもともと面内の高精細再構成を使用して見た目の解像度向上を図っていたため、比較的高い収集マトリクス数で撮像していたT2WIでは、そのままPIQEを使用してもその恩恵は小さいという印象であった。
そのため、収集マトリクス数を少し下げてからPIQEを使用し、より短時間で以前と同等の画質が得られるように調整した(図1)。撮像時間の観点からFLAIRのように収集マトリクス数を高く設定しにくいシーケンスや、FOVが小さく収集マトリクス数がもともと低いプロトコールではPIQEを高分解能化の目的で使用している(図2)。
このように、PIQEは高分解能化とそれによる時間短縮の両面に貢献する技術である。

四肢関節領域でのPIQEとExsperの活用

今回のアップグレードではPIQE以外にもさまざまな追加技術が搭載されている。その一つが、適用拡大されたExsperである。
Exsperとは、k-spaceとimage spaceを組み合わせた展開性能の高いパラレルイメージング法であり、この技術により高い倍速率を設定しにくい場面でも撮像時間を短縮することが可能になった。当院では、四肢関節領域で特にその恩恵を感じている。膝関節の検査においては従来と同等の画質を担保した状態で、検査時間が約40%短縮した(図3)。
当然、倍速率上昇によりSNRは低下するが、PIQEを併用することが可能なため、収集マトリクス数を下げることで、SNRの低下を軽減させ、且つ整形領域で重要な組織構造をPIQEの高分解能化により担保することができている。

動きの影響のある部位におけるPIQEとExsperの活用

PIQEによる超解像技術は以前と同等の画質をより短時間で撮像することを可能にするため、その恩恵を撮像時間の短縮に利用するのも一つの手ではある。
一方、呼吸などの動きの影響を受けやすい肩関節や骨盤領域の撮像では、PIQEとExsperの併用によって得られた撮像時間短縮を加算回数(NAQ)の増加に使用して、動きに対してより堅牢なシーケンスとなるように利用するのも有用である(図4)。
呼吸同期を使用した撮像において加算回数を2として撮像することは撮像時間の観点から今までは考える余地がなかったが、PIQEとExsperの併用により、このような撮像条件の調整も実行可能になった(図5)。
撮像時間の短縮は患者の負担軽減や検査の効率化の面で重要だが、検査部位によってはPIQEによる恩恵を画質の向上に利用し、診断しやすい画像を提供することも必要と考えている。

今後のPIQEの適用範囲拡大への期待

Ver9.0への更新により、特に四肢関節領域では3Tに匹敵する画像が1.5Tでもより短時間で得られるようになった。一方で、今後AiCEのように適用範囲が拡大されれば、1.5T MRI装置の新たな臨床的価値がさらに見いだされる可能性があると考えている。
PIQEの実装に合わせてExsperの適用範囲が拡大されたことは、PIQEの恩恵を最大限検査に反映させるうえで非常に大きいと感じている。

*本システムは画像再構成に用いるネットワーク構築にDeep Learningを使用しており、本システム自体に自己学習機能を有しておりません。
記事内容はご経験や知見による、ご本人のご意見や感想が含まれる場合があります。資料中の比較画像・数値はすべて当社従来比です。掲載内容は予告なく変更する場合があります。掲載内容はオプション構成品を含みます。

一般的名称 超電導磁石式全身用MR装置
販売名 MR装置 Vantage Orian MRT-1550
認証番号 230ADBZX00021000