“AI”による新しいSNR向上技術
Advanced Intelligent Clear-IQ Engine(AiCE)導入事例

脳神経領域の専門病院が1.5T DLR-MRIを選んだ理由

平林 秀裕 先生 独立行政法人国立病院機構 奈良医療センター 脳神経外科 院長
岩井 康典 先生 独立行政法人国立病院機構 奈良医療センター 放射線科 技師長 ※文中敬称略
奈良医療センターは、薬師寺や唐招提寺の近くに位置し、東大寺、若草山、生駒山系が一望できる奈良市西部の高台に立つ病院です。当院では、 Deep Learning Reconstruction(以下、DLR)によるSNR 向上技術である Advanced intelligent Clear-IQ Engine*(以下、AiCE)に期待し、2021年 6月にAiCEを搭載した1.5T DLR-MRIであるVantage Orianを導入しました。導入から2年経過し、1.5T DLR- MRI を選んだ理由やその実際をお伝えします。

当初は、3T装置への更新を考えていた

― 装置更新において条件はありましたか?
平林 
当院は脳神経領域を専門とする病院であり、脳深部刺激療法(DBS)というパーキンソン病の治療においては、微細構造の把握が不可欠で高分解能のMRI画像が求められます。脳神経外科医としては、周囲の同科Dr.の意見も聞いていると、「頭部は3T」というイメージが強く、3Tに更新したいという気持ちがありました。
平林 秀裕 院長
岩井 放射線技師の立場からすると、従来の1.5Tでは、脳神経外科医が求める画質を決められた検査時間の中で撮像することは大変困難でした。高分解能で撮像する検査では、ルーチン画像の画質を妥協することも必要でした。また、院長と同じく、3Tへの憧れのようなものはありました。
― それでも1.5TのVantage Orianを選ばれた理由はどこでしょうか?
平林 
率直に予算の問題もありましたが、それ以上に、提示された画像に納得し、これなら“3Tに匹敵する”画像を撮像できると期待できたからです。加えて、脳深部刺激療法(DBS)では脳内に電極を挿入しますが、高磁場装置ではデバイスの発熱による組織損傷や機器の破損などの影響が懸念されます。DBSを多く行う当院にとって安全性と画質を両立できる1.5T DLR-MRIは、大変魅力的だと思ったからです。
岩井 私は、現場の立場ですので、1.5T DLR-MRIの将来性に加え、フォロー体制です。フォロー体制については、EXCELART Vantageを使用していた時から、サービスやアプリの担当者の対応に満足しており、魅力に感じていました。実際、他社のMRIを使用していた当院放射線技師からも、「また来てくれたの?」とアプリ担当の訪問頻度に驚く声もありました。画質に関しても、頭部の特殊撮像が多い当院にとっては、前装置の画質では満足いかないこともありましたが、キヤノンのDLR技術AiCEについて聞き、国産という安心感と将来性を感じ、 Vantage Orianの導入を決めました。

導入後、“3Tに匹敵する”というPRは過言ではないと実感

― 実際にVantage Orianを導入された印象はいかがでしたか?
平林 
かなり満足しています。導入当初からアプリの担当者が頻繁に訪問して調整を重ねてくれた結果、前装置よりも検査時間が短く、スライス厚も3分の2になったのにも関わらず、高画質な画像が得ら れています(図1)。脳神経外科医から見ても、商談時に聞いていた “3Tに匹敵する”は言い過ぎではなく、むしろDBS電極などの影響と画質の安定性を考慮すると、“3Tを陵駕する”と言っても過言ではな いかもしれません。実際、周辺施設の3Tの画像よりもきれいだとすら自負しています。それまで頭部の画像は3Tが圧倒的に良いと考えていましたが、1.5Tでここまでの画質が撮像できるのであれば、 3Tのコスト面を考慮すると非常にコストパフォーマンスの高い装置だと感じています。
岩井 最も驚いたのは、DWIの画質の変化です。前装置では、他院と比べてDWIの画質があまり満足いくものではなく、最も改善に期待していたところでした。Vantage Orianを導入するにあたって、頭部ルーチンのスライス厚を6mmから4mmに変更しましたが、図2に示すようにSNRや画質はむしろ大幅に向上しました。グラフに示す通り、AiCEによって4mmの方がSNRが高くなっており、これまでの MRIの常識を覆す画期的な技術だと感じています。正直に言って、前装置と同じメーカーの同じ1.5Tとは思えませんでした。また、やはり技師の立場からすると患者さんの反応の変化も感じています。 Vantage Orianはボア径が71cmと広く、閉所恐怖症で前装置では入れなかった患者さんでも恐怖心が軽減し検査を受けられるようになりました。導入前はあまり気にしていませんでしたが、精神科の患者さんも多い当院にとって、Vantage Orianの白を基調とするデザインも検査のハードルを下げる効果があると感じています。
― 1.5T DLR- MRI は今後脳神経外科領域にどのような変化をもたらすでしょうか
平林 
間違いなくこれまでの常識を変えるような大きな変化をもたらすと思います。パーキンソン病患者に対するDBSでは、淡蒼球のAML (accessory medullary lamina)という領域をターゲットにしていますが、1.5T MRIではAMLの描出は難しいというのがこれまでの印象でした。そのため、図3に示すように、Vantage OrianではAMLが明瞭に描出されているのを見て、とても驚きました。前述のように、高磁場装置ではデバイスへの影響や磁化率アーチファクトなどが懸念される一方、1.5T以下のMRIにおいては空間分解能が高磁場装置に及ばないため、DBS術後の患者さんに対してMRIで淡蒼球のターゲットに対して正しく電極を挿入できているかの確認は困難とされていました。しかし今後、V antage Orianのような1.5T DLR-MRIが普及してくれば将来的にDBS術後の評価にもMRIが有用になってくると考えられます。
岩井 患者さんにとって、磁場強度が大きいことで検査音も大きくなり、MRI検査への警戒心が高まる要因となっていると感じます。特に、キヤノンメディカルシステムズ社のMRIの静音性は昔から定評がありますが、装置の性能は上がっても静音機構は変わらず搭載されており、すべての検査において静かな検査を実施できるため、病院としては1つのPRポイントになるのではないかと考えています。画質に関しても、ルーチン画像についてはもちろん、淡蒼球や図4に示すような海馬のように、頭部の微細な構造も明瞭に描出するポテンシャルのある装置だと思います。今後さらにDLRが浸透していくことで、今後、脳神経外科領域においても1.5Tが主流になってくるかもしれません。
― これからMRIの導入や更新を考えているご施設にメッセージをお願いします
平林 
1.5Tでありながら3Tに匹敵する画像が撮像でき、脳手術による金属やデバイスの影響も受けにくく、導入時のコストも3Tに比べて抑えることができます。ですので、病院、クリニック関係なく、 Vantage Orianは非常に満足できる装置だと思います。周囲の脳神経外科医にも、かつては私も持っていた「頭部は3T」という固定観念を取り払ってもらいたいくらいです。
岩井 まだ1.5T DLR-MRIを使われたことのない方はおそらくそうだと思いますが、私も当初1.5T DLR-MRIに対しては懐疑的な部分がありました。しかし、今はほとんど全てのルーチンに使用し、院長をはじめ医師からも高い評価を得ることができており、もはや AiCEのないMRI検査は考えられないくらいになっています。また、装置の性能だけでなく、アプリ担当の定期的な訪問やサービス担当の迅速な対応などのフォロー体制にも大変満足していますので、自信を持ってキヤノンメディカルシステムズ社の1.5T DLR-MRIをおすすめしたいと思います。
(左から)今西技師、乾技師、岩切技師、岩井技師長、増田技師、阪本技師、山田技師

*本システムは画像再構成に用いるネットワーク構築に Deep Learning を使用しており、本システム自体に自己学習機能を有しておりません。
記事内容はご経験や知見による、ご本人のご意見や感想が含まれる場合があります。本記事は体内金属がある被験者の検査を推奨するものではありません。資料中の比較画像・数値はすべて当社従来比です。掲載内容は予告なく変更する場合があります。掲載内容はオプション構成品を含みます。

一般的名称 超電導磁石式全身用MR装置
販売名 MR装置 Vantage Orian MRT-1550
認証番号 230ADBZX00021000