“AI”による新しいSNR向上技術
Advanced Intelligent Clear-IQ Engine(AiCE)導入事例

AiCEにより検査運用の効率化を実現




社会医療法人景岳会 南大阪病院 放射線科
平岡 一弘 先生
大阪府大阪市住之江区に位置する南大阪病院は、地域に喜ばれ信頼される病院を目指すという理念のもと、急性期一般病棟310床(HCU8床を含む)と回復期リハビリ病棟42床、地域包括ケア病棟48床を有し、多くの患者さんのニーズに対応しています。
同院では、2019年4月より3テスラMRIが稼働し、2020年6月にはAIを用いたSignal to Noise Ratio(以下、SNR)向上技術Advanced Intelligent Clear-IQ Engine(以下、AiCE)を搭載したVantage Galan 3T / Focus XG Edition(以下、Focus XG)にバージョンアップしました。AiCEを導入してからのMRI検査の変化についてお伺いしました。

患者さんが動くことによる再撮像が減少

当院では、日常の様々な部位・種類の検査オーダーに対して、3テスラMRI 1台のみで対応しています。このため、限られた時間内で最大限の情報が得られるように、撮像時間と画質のバランスには日頃より気を配っていました。しかしながら、それでも痛みに耐えきれずに患者さんが動いてしまい、再撮像となる場合がありました。時には「あと数秒で検査が終了」というタイミングで患者さんが動いてしまうことも経験しています。AiCE導入後は、従来に比べて短時間で診断に有用な画質を得ることができるようになり(図1)、患者さんの動きによる再撮像が減少しています。次の検査が遅れてしまうことも少なくなり、技師のストレスも軽減されました。
撮像時間が1/2以下に短縮しているが、画質の劣化は感じられない。1シーケンスの時間が短いので、患者さんが動いてしまうことも少なくなる。

SNRの厳しい撮像においてAiCEの効果を実感

指や手などの小さな領域もしくは薄いスライス厚が必要な検査や、Short TI inversion recovery(以下、STIR)法など、SNRが厳しい撮像においては、良好な画質を維持するために撮像時間を長く設定しています。しかし、撮像時間を長くできないことも多く、その場合はSNRと分解能のどちらかを犠牲にせざるを得ませんでした。このようにSNRが厳しければ厳しいほどAiCEはその威力を発揮し、MRI検査における「撮像時間」「分解能」「SNR」というトレードオフの関係を打ち破ってくれる技術であることを日々の検査で実感しています(図2)。
小さなField of View(FOV)、薄いスライスでも短時間で高SNRが得られている。 病変部の淡いコントラストも低下していない。

AiCEでより質の高い画像情報を提供

AiCEは単に時間を短縮するだけでなく、検査の情報量を増やすことにも役立っています。今までは、決められた条件を時間内に撮像するのがやっとの状況でした。しかし、AiCE導入後は時間の余裕ができ、操作者が実際の画像を見ながら、「他の断面があれば病変の範囲が特定しやすい」「もう1つコントラストの違う撮像をすれば情報量が多くなる」と、検査中に考えることができるようになりました。今は、必要に応じて検査を追加し、より質の高い画像情報を読影医や診断医に提供するように心がけています。

AiCE導入後は飛び込み検査にも柔軟に対応

MRI検査のほとんどは予約検査ですが、「ERCP前にMRCP**を至急で」などの飛び込み検査の依頼も多く、診療科の医師や看護師より「今日検査ができませんか?」「一番早いと何時から検査ができますか?」といった電話が毎日のようにMRI室にかかってきます。今までは「予約で一杯なのでできません」「何日以降しか空きがありません」と答えざるを得ないことも多く、どうしても当日の検査が必要な場合は、昼休みを短くしたり、病棟からの予約検査を別の日にずらしたりと、他科との調整にも苦労をし、「終わってみれば全体数の1/3は飛び込みの検査だった…」といった日も多く経験していました。AiCE導入後は、空いた時間を飛び込みの検査に充てることができるようになり、「何時ならできますが大丈夫ですか?」「空きができたら連絡します」など前向きな対応ができるようになりました。特に3Dの高速化技術であるFast 3Dモードを用いた1回の息止めで撮像する3D MRCPの画質が、AiCEで向上したことが大きいです。呼吸が不安定な患者さんに対しても安定した画像が得られるので、飛び込み検査でも有用です(図3)。

*ERCP:Endoscopic Retrograde Cholangiopancreatography
**MRCP:Magnetic Resonance Cholangiopancreatography

呼吸が不安定な患者さんは1回だけ息止めを頑張ってもらって3DMRCPを撮像している。AiCEを加えることにより、背景ノイズが低減されいる。

紹介元の先生や患者さんからの評価が向上

当院では、近隣の施設からの紹介検査も多く受けていますが、AiCEは画質が良くなったことで紹介元の先生方からの評価向上にも貢献しています。患者さんからも予約が取りやすくなったことや検査時間が短いことなどが好評です。今後は紹介検査の件数アップや新規紹介検査の開拓に繋げていきたいと思っています。

健全かつ安定した病院経営に貢献

AiCEを搭載したFocus XGにバージョンアップして約6ヵ月ですが、「検査の効率化」「質の高い画像情報」「病院の収益向上」と、あらゆる面でAiCE はMRI検査になくてはならないアプリケーションとなっています。ワクチン開発などにより現在のコロナ禍が解消されて社会全体が以前のように戻った時に、さらなる収益向上により安定した病院経営に貢献できるようにこれからも努めていきます。

*記事内容はご経験や知見による、ご本人のご意見や感想が含まれる場合があります。
*記事内の製品に関する薬機情報は以下の通りです。

一般的名称 超電導磁石式全身用MR装置
販売名 MR装置Vantage Galan 3T MRT-3020
認証番号 228ADBZX00066000
一般的名称 MR装置用⾼周波コイル
販売名 Atlas SPEEDER ヘッド/ネックMJAH-172A
認証番号 227ADBZX00152000