Vantage Galan 3T/SaturnX

-ノイズ除去再構成技術
「Advanced intelligent Clear-IQ Engine(AiCE)」の初期経験-

医療法人五星会 菊名記念病院 画像診断部
和田吉弘/金子直樹

はじめに

医療法人五星会 菊名記念病院は、開院当初から安心と思いやり、良質で信頼される高度医療の提供を基本理念とし、良質かつ安全な画像情報を迅速に提供している。24時間365日いつでも患者を受け入れ、年間12,945件の救急患者を受け入れながら、他院からのCTやMRIなどの検査依頼にも的確に対応すべく、撮影技術の研鑽に努めており、地域の『画像診断センター』としての役割を果たしている。2018年12月より、キヤノンメディカルシステムズ社製3T MRI Vantage Galan3T/Saturn Xを導入した(図1)。ボア内に設置したスクリーンに映像を投影する“MRシアター”も導入し、静かなだけでなく、MRI検査の怖い・暗いといった不安感・不快感を軽減した検査環境で、3Tならではの高画質で短時間にて提供している。本稿では、主に最新のアプリケーションであるノイズ除去再構成技術「Advanced intelligent Clear-IQ Engine(AiCE)について初期経験を述べる。
図1 Vantage Galan 3T / Saturn X

Advanced intelligent Clear-IQ Engine:AiCE

近年注目されているAI技術のひとつとして、ディープラーニングがある。キヤノンメディカルシステムズは、ディープラーニングを用いて設計したノイズ除去再構成技術(Advanced intelligent Clear-IQ Engine:AiCE)を世界に先駆けて製品化した。AiCEは、加算回数を上げた画像データを教師データとし、ノイズ成分とシグナル成分の識別方法を学習しモデル化させることで、新たに得られた画像からノイズ成分のみを選択的に除去できる技術である。AiCEのメリットは、単に画像のSNRを上げるだけではなく、従来では困難であったような高分解能な撮像を短時間で行なうことが可能となる1)。また従来手法であるスムージングフィルタと比較すると、スムージングでは画像の高周波成分である輪郭情報が損なわれるのに対し、AiCEではノイズのみを除去できている2)ことが分かる(図2)。
図2 デノイズ効果の比較

頭部領域への応用

当院は、急性期病院であることからSaturn X導入当初より、短時間での検査を実施してきた。頭部領域におけるAiCEの効果を実際の画像でみると、分解能を上げSPEEDERで撮影時間を同一にした画像を比較した。AiCEを使用することによりSNRを保ちつつ分解能を上げることで淡い信号変化も捉えやすくなり、明瞭に病変部位を表していることが分かる(図3)。また下垂体など、より高い分解能が要求される撮像においてもAiCEは威力を発揮する。通常、高分解能撮像ではノイズが気になり、たとえば加算回数などでSNRを担保する必要があるが、高い分解能でも十分臨床評価可能な画像が得られる(図4)。

またInflow効果を利用しマルチフェーズを撮影する4D MRA(mASTAR)でも、AiCEにより末梢の描出能が向上していることが分かる。末梢血管は分解能だけでなく、SNRの確保が重要となり、通常加算を上げるなどの撮像時間が延長する条件を組まざるを得ないが、AiCEの延長なく撮像を行うことが可能になる。

硬膜動静脈瘻の症例だがmASTARの後期相にてSNR低下により抽出不良となった横静脈洞がAiCE処理により明瞭に抽出することができた(図5)。その他にも抹消血管の抽出がより明瞭に行えるようになることでバイパス血管の評価などにも適応していけると考えている。
図3 FLAIR画像AiCEノイズ除去比較画像 a:FLAIR 解像度0.5x0.4 撮影時間 1:40s,b:FLAIR 解像度0.4x0.4 撮影時間 1:40s,c:FLAIR 解像度0.3x0.3 撮影時間 1:40s,d:FLAIR 解像度0.4x0.4 撮影時間 1:40s AiCE,e:FLAIR 解像度0.3x0.3 撮影時間 1:40s AiCE

AiCEの応用、Compressed SPEEDER(CS)高速化技術との組み合わせ

近年、パラレルイメージングだけでなく、圧縮センシング技術などが発展し、短時間に撮像することが可能になってきた。圧縮センシング技術は、パラレルイメージング法に比べSNR低下が少ない高速化技術として、臨床適応が広がる一方、高速化に伴う画像ボケや淡い信号の消失といった画質劣化が課題となっている。圧縮センシング技術は、ウェーブレット変換でのデノイズ過程では信号値をある閾値でカットオフするため、ノイズと実質信号の間に信号差がなければ実質信号も消失してしまう。特に信号収集量の少ない2D撮像においては画質劣化が顕著となり、圧縮センシング法のみでは高倍速撮像の実現が難しいといわれてきた。キヤノンメディカルシステムズが製品化した圧縮センシング技術Compressed SPEEDER(CS)は、パラレルイメージング法と圧縮センシング技術を組み合わせた高速撮像法である。コイル1チャネルあたり複数の感度マップを取得することで、ノイズや誤差成分を補正した高精度な画像生成が可能となり、2D撮像においても画質劣化を抑えた高速化が可能となる(図6)。
図6 Compressed SPEEDERによる高速化

腹部領域へのAiCE応用

上腹部では急性胆管炎や慢性膵炎などで有効とされている。慢性膵炎などではMRCPなどで主膵管の不正拡張と分枝膵管の不整拡張を捉えるのが重要となる。しかしながら呼吸静止下の撮影が一般的であり撮像時間を短縮するためどうしても分解能およびSNRが犠牲になってしまう。そこで部位、撮像シーケンスを選ばないAiCEを適用し検討した。現在のシーケンスにて検証したがFASE2D法のT2ではほとんど効果を得られなかった。しかし、FFE3DT1や2DMRCPではノイズリダクションされることによりSNRが高い良好な画像が得られ膵管や抹消管内胆管をより明瞭に撮像することができた(図9)。

また前立腺においては、近年PI-RADSが提唱されカテゴリを決定するうえでT2強調画像、DWI、ダイナミックスタディが重要視されている。中でもT2強調画像による分解能とSNRを維持された、辺縁領域、移行域領域など解剖学的構造の把握とDWI(ADC)での診断が重要となる。Compressed SPEEDERとAiCEを用いることで高速化と高画質を両立することができた(図10)。

おわりに

当院でVantage Galan 3T/SaturnXが導入されMRシアターも含め静音など検査環境の改善も患者様から高評価を受けている。各診療科、特に整形領域、脳神経領域からは3Tの特徴である高画質で良質な画像提供で高評価を得ているが今回のAiCE、Compressed SPEEDERの運用によって、さらなる良質な画像の提供に貢献できると考える。なぜならばAiCEはさまざまな撮像シーケンス、撮像部位に適応することができる。そのため従来のCompressed SPEEDERなどの高速化技術の画質低下、ノイズの増強の問題も解決できることから、これまで両立が困難であった短時間撮像と高精細画像を得るキーになる技術であると考えられる。今回はAiCEの初期経験を述べたが、今後もさまざまな臨床に応用していき、より有用な画像診断に貢献していく予定である。

参考文献
1) Kidoh M, Shinoda K, et al: Deep Learning Based Noise Reduction in Brain MRI: Experimental and Clinical Results in Healthy Volunteers. Magn Reson Med Sci, In Press.
2) 大田英揮: AIがもたらすMRI撮像へのBreakthrough.INNERVISION(34・5)2019 別冊付録

本ページは臨床2020年Vol.51 No.14に掲載されたものです。
一般的名称超電導磁石式全身用MR装置
販売名MR装置Vantage Galan 3T MRT-3020
認証番号228ADBZX00066000
一般的名称MR装置用高周波コイル
販売名Atlas SPEEDER ヘッド/ネックMJAH-172A
認証番号227ADBZX00152000