IT Vision No.49(2023)
Canonの技術で切り拓く次世代医療ITの可能性
Case Study│CanonヘルスケアITの最前線

クラウドを活用して遠隔モニタリングのデータを集約し,院内の情報共有や業務効率化でCIEDの診療を支援

ペースメーカー統合管理サービス「CardioAgent Pro for CIEDs」

勤医協中央病院

公益社団法人北海道勤労者医療協会 勤医協中央病院(病床数450床)の循環器内科では,2016年から植込み型心臓電気デバイス(CIED)の植込み術を受けた患者の遠隔モニタリングを開始した。年々増加する遠隔モニタリング患者の管理を限られたスタッフで確実に行うため,2023年2月にキヤノンメディカルシステムズのペースメーカー統合管理サービス「CardioAgent Pro for CIEDs」を導入し,管理業務の効率化に取り組んでいる。導入前後の運用の変化や効果について,循環器内科の郡司尚玲医長と,臨床工学部の柿崎正詞主任に取材した。

専門性の高い医療で地域を支える急性期基幹病院

札幌市北東部に位置する勤医協中央病院は,2013年の新築移転を機に救急・急性期医療,がん医療,専門医療を診療の柱に据え,急性期基幹病院としての使命を果たすために発展を続けている。循環器内科においても,5名の医師がそれぞれの専門性を生かし,冠動脈疾患,不整脈,心不全,高血圧などの治療に当たっている。不整脈専門医の郡司医長は診療の状況について,「心不全については道内でトップクラスの患者数となっています。不整脈に対するカテーテルアブレーションや,心臓ペースメーカー,植込み型除細動器(ICD),両心室ペースメーカー(CRTP)などのCIEDの植込み術は,私と若手医師の2人で行っています。CIEDの植込み術は新規・交換を合わせて年間で30~40例ほどで,現在,約350名の患者の植込みデバイス管理を行っています」と述べる。
郡司尚玲医長(左)と柿崎正詞主任(右)

遠隔モニタリングにおける運用管理の課題

CIED植込み患者の管理では,近年,遠隔モニタリングが普及しつつある。遠隔モニタリングでは,CIEDの情報は患者の自宅に設置した送信機からデバイスメーカーのデータセンターに送信される。医療者側はWeb上で情報を確認できるため,デバイス外来の受診回数を減らして患者の負担を軽減できるほか,不整脈の発生やデバイスの不具合などが迅速に把握でき,より詳細な患者管理が可能となる。同院では2016年6月より遠隔モニタリングを開始し,現在は約170名の患者を管理している。遠隔モニタリングのチェックは,心臓血管カテーテル室(以下,心カテ室)に従事する6名の臨床工学技士が担っている。
遠隔モニタリングによって患者の外来受診回数は減るが,心臓ペースメーカー指導管理料(遠隔モニタリング加算)の算定には,月に一度,データのチェックが求められている。さらに,その内容を診療録に記載することが必要で,遠隔管理のための医師や臨床工学技士の業務負担が増えた。CIEDのデータはデバイスメーカーごとに異なるWebサイトに保存されており,個別にアクセスして確認が必要となる。また,外部への接続のため,院内のネットワークとは別の端末となり,データのコピーも難しい状況だった。そこで,同院では,遠隔モニタリングのレポート作成のためデータベースソフトウエアClaris FileMakerでシステムを自作して管理していた。月次の作業としては,①臨床工学技士がインターネットに接続された心カテ室のPCでデータを確認しながら,別端末のFileMakerにデータを手入力,②患者ごとに印刷した記録用紙を郡司医長が確認し,所見や指示を書いて署名,③記録用紙を臨床工学技士がチェック,④スキャナー室に引き継ぎ,記録用紙をスキャンして各患者の電子カルテに格納,という流れで行われ,2~3週間の時間と多くの人の手間がかかっていた。郡司医長は,「比較的システム化しているつもりでしたが,昨年,スキャナー室の職員が長期で休んだ際に数か月分の記録が電子カルテに取り込まれておらず,加算が取れない事態に陥ってしまいました」と振り返る。ほかにも,FileMakerのトラブル時に開発した本人しか対応できないことや,スキャンデータが別の患者のカルテに格納されるミスが生じるなどの課題もあった。

電子カルテ連携を意識したCIED管理サービスの導入

その課題の解決をめざして導入されたのがCardioAgent Pro for CIEDsである。同院では2022年9月に電子カルテをキヤノンITSメディカルの「PrimeKarte」に更新しており,柿崎主任は,「キヤノンの電子カルテへの更新準備を進める中でCardioAgent Pro for CIEDsがリリースされたと聞き,システム連携の観点からも好機と考えました」と話す。CardioAgent Pro for CIEDsは,キヤノングループの医療クラウド「Medical Image Place(MIP)」とデバイスメーカー各社の遠隔モニタリングサービスをつなぎ,データを一元的に収集・管理するサービスで,MIPと病院側を専用ゲートウェイでVPN接続することで,デバイスのデータを院内の端末から閲覧可能になる。同院では,ID連携によりデータを参照できるように電子カルテを改修し,2023年2月から運用を開始した。導入後の運用について柿崎主任は,「月1回の遠隔モニタリングのチェック作業は,月初に臨床工学技士CardioAgent Pro for CIEDsの患者データ管理画面で前月のデータを確認してコメントを入力します。各社のデータを統合して参照でき,以前のように2つの端末を行き来して作業する必要がなくなったので,業務は格段に削減されました」と説明する。
郡司医長は,臨床工学技士が記載したコメントを確認して,必要に応じて所見を追記する。コメント欄のテキストをコピーボタンでコピーし,クリップボード経由で電子カルテに転記してチェック終了となる。郡司医長の確認作業では,メーカーごとなどでCardioAgent Pro for CIEDsから抽出した患者の一覧をCSVで電子カルテに取り込み,「患者切り替えリスト」機能を使うことで,電子カルテと画面を連動させながら次々に患者データの確認・所見入力が可能となっている。郡司医長は,「紙の記録用紙でチェックしていた時に比べると作業量は増えていますが,過去のデータや電子カルテの診療情報も確認しながら記録が行えるようになり,CIED診療の質を向上できていると思います」と話す。
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図1  CardioAgent Pro for CIEDsのデータフローイメージ
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図2  CardioAgent Pro for CIEDsの患者データ管理画面

データへのアクセス向上で外来や救急の診療にも貢献

CardioAgent Pro for CIEDsは,Webブラウザでデータの閲覧や入力が可能であり,データの活用や業務効率の向上に貢献している。インターネットに接続された端末は院内に数台しかないため,以前は端末が空いている時にしかデータの確認や作業ができなかったが,現在は制限がなくなった。また,外来時には電子カルテ端末からデータを確認できるようになり,郡司医長は,「以前は外来で遠隔のデータを確認するには,臨床工学技士に連絡してメーカーのWebサイトにアクセスしてもらう必要がありましたが,今はその場で電子カルテの端末から確認できるので診察がスムーズになりました」と述べる。柿崎主任は,「外来から問い合わせがあると,心カテ室を途中で抜けたり,診察室へ出力したデータを持って行ったりしていましたが,その負担が軽減したことで,ほかの業務や新人教育に力を入れるなど,時間をより効率的に使えるようになりました」と話す。CIED植込みの患者が救急搬送された場合でも,救急科からの問い合わせに対して院内端末で情報を確認して,MRI検査の可否判断や情報提供を迅速に行えるようになった。
また,柿崎主任はコスト面について,「月々のシステム利用料が患者数にかかわらず一定のため,導入しやすいサービスだと思います」と評価する。

CardioAgent Proとの連携でさらなる効率化をめざす

同院の循環器部門では2016年から循環器動画ネットワーク・レポートシステム「CardioAgent Pro」が稼働しており,2024年にはレポートシステムの更新を控えている。柿崎主任は,「来年の更新に合わせて,CardioAgent Proの植込みデバイス患者台帳とCardioAgent Pro for CIEDsを連携させることで,遠隔と対面診療のデータを一元的に管理することをめざしています」と述べる。郡司医長は,「デバイスメーカー各社が競って独自のシステムを開発する中,それらのデータを統合して一元管理することは非常にチャレンジングな取り組みですが,CardioAgent Pro for CIEDsはとても良くできたサービスだと思います。私たちはそれを上手く活用し,スタッフの負担を軽減しながら質の高い遠隔モニタリングを続けていきます」と話す。今後も高齢化の進行に伴い遠隔モニタリング患者は増加していくことから,CardioAgent Pro for CIEDsが医療現場の負荷を軽減するカギとなるだろう。

(取材日:2023年10月5日)

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