Case Study

─最新式高機能16列CTの有用性を探る─

地域に根差した外来・在宅医療充実化のためにコンパクトかつ高機能な最新CTの導入を決断



地元に根差した在宅・外来治療に力を注いでいる薬院内科循環器クリニック。同クリニックでは、診断の質の向上を図るため、2019年5月に最新型16列MDCT「Aquilion Start」を導入し、既に1年間の運用で確かな実績を挙げている。同CT導入の経緯やその有用性について、同クリニック理事長・院長の村岡聡一氏に話を聞いた。

(企画・制作:月刊新医療 編集部)

ビルクリニックに設置可能な高機能16列MDCTを選択

外来だけでなく手術や往診もするという、地域完結型医療を実践し続けた叔父の姿を見て医師を志したと語る薬院内科循環器クリニック理事長・院長の村岡聡一氏は、同クリニックの診療の現況を、つぎのように話す。

「2010年10月、私の出身地でもあるこの地にビルクリニックとして開業し、外来と在宅医療に取り組んでいます。現在、医師は常勤医4名と大学病院から非常勤医として循環器専門医を派遣していただいています。スタッフは、この他に看護師8名、ソーシャルワーカーや事務スタッフ、ドライバーなどスタッフは総勢24名ほどいます。なお、患者数は、在宅が約300名、外来は季節にもよりますが1日50 ~ 100名ほどになります。駅前という立地の良さもあり、当クリニックが入居しているビルには他に整形外科や乳腺科、消化器科、皮膚科、歯科が開業しており、意図したわけではないのですが、クリニックモールのようになっています」
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薬院内科循環器クリニックは、2019年5月、キヤノンメディカルシステムズが同年販売を開始したばかりの最新型16列MDCT「Aquilion Start」を導入した。同CT導入の経緯と選定の理由について、村岡氏はつぎのように話す。

「開業当時、当クリニックは60坪ほどの広さだったのですが、すぐに手狭となり、100坪に広げました。CTについては、この頃からクリニックにおける診断精度の向上を図りたいという思いが芽生え、ぜひ導入したいと考えていたのです。
しかし、当初はCTを導入したくてもスペース的に設置するのが難しく、複数のメーカーや代理店から提案を受けたのですが、なかなか当クリニックの事情にマッチした提案がありませんでした。そのときにキヤノンメディカルシステムズから省スペースで運用可能なCT『Aquilion Start』の提案があったのです。収まりの良くCTを設置することができる点と、2019年の大型連休を利用して患者さんに迷惑をかけることなく工事ができる点が決め手となり、導入を決めたのです」
「Aquilion Start」の最小設置面積は9.8㎡。CT導入の際、最大の課題であった設置スペースについても、同CTであればレントゲンとの同室設置など、既存の検査スペースを最大限に活用し、改修工事を最小限に抑えることが可能である。

診療放射線技師が不在でも質の高い検査画像を描出

16列MDCT「Aquilion Start」の運用の現況について、村岡氏はつぎのように話す。

「CT導入の際に最も不安だったのは、診療放射線技師不在でどこまで質の高いCT検査を実施できるかという点でしたが、それは杞憂に終わりました。
この『Aquilion Start』は、事前にプロトコル設定を行うことで、後はワンボタン、ワンクリックで検査を実施できます。画像処理能力も高いので、放射線が専門でない私でも質の高いCT検査を実施することが可能です」

CTによる検査件数は1 ヵ月で60件程度、そのうち紹介検査は5 ~6件ほどであると村岡氏は話す。

「当クリニックでは、呼吸器疾患や、悪性疾患が疑われる患者さん、エコーや検診の二次検査で来院された患者さんなどにCT検査を実施しています。その結果、循環器領域における血管の石灰化や動脈硬化、これまで診断の難しかった悪性疾患やさまざまな感染症などの診断が可能になるなど、診断精度が大いに向上しました。患者さんにとっても、わざわざ病院に赴いて、検査待ちなど時間を取られることなく 検査を受けることができますので、評判も良く、わざわざCT検査を受けに来院する患者さんもいます。
また、同じビルクリニック内の乳腺科から術後のフォローアップの依頼、消化器科から胃カメラやエコーでは詳しい所見を見つけることができない検査依頼も結構多いです。なお、乳腺科のクリニックからは、専門的な検査の依頼があるのですが、その際は都度、同クリニックに勤務している診療放射線技師に細かな設定をしてもらっています」
最新型16列MDCT「Aquilion Start(キヤノンメディカルシステムズ)」。患者中心のプライマリ・ケアの実現と、快適で先進的なCT検査を提供するため、16列CTながら、フラグシップマシン「Aquilion ONE」で採用した画像処理技術等、多彩な機能を搭載している。

クリニックでのCT検査の実施は紹介患者等の集患など経営にも貢献

「Aquilion Start」には、金属アーチファクトを低減するSEMAR(Single Energy Metal Artifact Reduction)、モーションアーチファクトを低減する体動補正技術 APMC(Advanced Patient Motion Correction)、アームアーチファクトを低減する遂次近似応用再構成 AIDR 3D Enhanced など、高度な画像処理機能を多数搭載している点も、村岡氏は高く評価している。

「循環器系の検査ではペースメーカーなどの植え込み型デバイス、整形外科系では人工関節などが要因で引き起こ されるアーチファクトも除去され、大変見やすい画像を描出してくれます。
なお、きれいな画像は、患者さんへの病気の説明にも説得力と安心感を与えてくれますね」
「Aquilion Start」は、シンプルなボタン設計により、CT操作に不慣れなスタッフでも、迷いなく、安全に、直感的に操作することができる。
クリニックで高性能CTを導入したことの経営面への影響を、村岡氏はつぎのように話す。

「CTそのものの費用に加え、遮蔽や電源工事等、導入コストはそれなりに大きいですが、診療放射線技師を雇わずに検査が実施できるので、ランニングコストの負担は大きくはありません。また、自施設で検査できる点は、他施設に患者さんを紹介することが減り、逆に他施設からの紹介や集患にもつながります。施設往診の患者さんや在宅診療の患者さんも検査が可能なので、経営上のメリットは大きいと実感しています」
肝機能障害と腹部エコーでS3の腫瘍性病変があり、造影CTを施行。左葉外側区の腫瘤性病変は動脈相で辺縁から増強され、平衡相で周囲肝実質より高吸収を呈し、血管腫の所見、他は嚢胞が散見される。造影検査においても、管球待ちを発生させずパワフルな検査が可能。
新型コロナウイルス感染症の問題が、今後の医療の在り方を変えると村岡氏は予想している。

「新型コロナウイルス感染症の流行によって、遠隔医療の進展など、医療の在り方が根本から見直されていくでしょう。
病院完結型医療から地域完結型医療に転換していく中で、地域のクリニックが生き残っていくには、従来の診察をして薬を処方するだけのクリニックでは難しいと感じています。今回、CT導入により、外来における検査の幅を広げることができたことは、クリニックとしての診療機能の幅を広げることにもつながりました。当クリニックも、今後どのような医療の体制になっても、患者さんに満足してもらえる医療を提供し続けていけるよう、努力していきます」
「Aquilion Start」の最小設置面積は9.8㎡。CT導入の際、最大の課題であった設置スペースについても、同CTであればレントゲンとの同室設置など、既存の検査スペースを最大限に活用し、改修工事を最小限に抑えることが可能である。

Hospital Information

医療法人あさかぜ 薬院内科循環器クリニック
理事長・院長:村岡聡一
所在地:福岡県福岡市中央区渡辺通2-6-12 八千代ビルYA55 2階
一般的名称 全身用X線CT診断装置
販売名 CTスキャナ Aquilion Start TSX-037A
認証番号 230ACBZX00022000