呼吸器内科の診療の幅を拡げるために開業に外せなかったCT

クリニックにも設置できるコンパクト設計
神奈川県三浦市に2019年5月にオープンしたショッピングセンターの2階に「三浦メディカルクリニック」はある。この2階には「三浦市民交流センター」も入っており、好立地といえる。日本呼吸器学会の専門医資格を持つ、井上哲兵院長は開業当初よりCTを中心とした医療体制を整えてきた。大学病院に近い検査体制で、地域を巻き込んだ医療体制を作り上げていく井上院長に画像診断装置と画像ファイリングシステム(PACS)の導入経緯や活用方法についてお話を伺った。

井上哲兵 院長の声

井上哲兵 院長

CTでなければ見つからない病気を見つける

井上院長は2009年に聖マリアンナ医科大学を卒業、同大学病院呼吸器内科助教を経て、三浦市立病院などで勤務。2019年8月に地元・三浦市で三浦メディカルクリニックを開設した。1日の平均外来患者数は60〜80名。そのうちCT検査数は6〜8件となっている。来院する動機となる呼吸器疾患のうち多いものは慢性閉塞性肺疾患(COPD)と喘息だ。専門医資格を持つ井上院長のところには、難病指定された疾患が疑われるケースや悪性腫瘍が疑われるケースも少なくない。
同クリニックの理念として、「生まれ育った三浦の地で、地域に寄り添った医療を提供したい。その中でも専門性を持って、高度な医療を提供したかった」と井上院長は語った。専門とする呼吸器内科は、肺癌・COPDや肺気腫・間質性肺炎・感染症、喘息を含めたアレルギーなど、疾患が多岐にわたる。それらの呼吸器疾患の鑑別で必要不可欠なのがX線撮影装置だ。肺炎や、肺気胸、間質性肺炎が疑われるような症例では胸部単純X線検査により診断できることもあるが、より詳しい検査をするにはCTが欠かせない。CT検査でなければ見つからない肺炎や肺癌があるからだ。同クリニックでは主に間質性肺炎の経過観察やCOPDのスクリーニングでCT検査をしている。他にも肺炎や感染症の精査や健康診断で精密検査を指摘された患者へ応用している。

開業する上でどうしても外せなかったCT

井上院長はCT導入の経緯について次のように語った。「開業するときは必ずCTを導入しようと決めていました。開業している呼吸器内科において診る幅を広げるにはCTが必要不可欠だからです。三浦市は人口4万人に対して、三浦市立病院の1台しかありません。人口対比で考えたとき、地域にもう1台導入することで適切な医療資源になると思いました」。
井上院長が今まで勤務してきた他施設でもCT検査をしていたことから、国内CTシェアトップのキヤノンメディカル社製16列マルチスライスCT「Aquilion Lightning」を導入した。井上院長はAquilion Lightningを導入した決め手について次のように話した。「やはり国産メーカという点は大きいです。それに国内シェアトップの実績がありました。今まで働いていた他施設でもキヤノンメディカル社製のCTが多く、私自身が使い慣れていたこともポイントです。さらに、当院は放射線技師がいません。このCTは自分一人で簡単な操作で細かな設定ができ、見たい部位を撮影できる。他社のCTと比較して、簡単に診断に必要な画像が撮れるというのはとても魅力的だと思います」。
撮影されたCT画像はタイムラグなく患者へ説明される。検査してから1、2週間待たされる身となれば検査結果を聞きたくて落ち着かない人もいるだろう。また、一刻も早く大きな病院で入院が必要になるケースもある。一開業医というだけでなく、フットワークの軽い医療を実現しているのもCT導入の強みといえる。「CT検査の結果、悪性腫瘍や入院治療が必要なケースがあれば三浦・横須賀市内の病院か横浜市内の病院へ紹介する。フォローアップまで考えると三浦・横須賀市内の病院へ紹介することが多いですね」。近隣の病院で勤務していた経験があるからこそ、地元の患者のことを考えた病院へ紹介している。

互換性の高い画像診断機器連携

同クリニックでは、Aquilion Lightningの他にキヤノンメディカル社製の一般X線撮影システム「R-mini」、DR「CXDI -710C」、PACS「RapideyeCoreSmartEdition」がある。
X線室 CT「Aquilion Lightning」と一般X線撮影システム「R-mini」、DR「CXDI-710C」を同室に設置
R-miniは胸部X線検査で使用され、DRでデジタル画像化を行う。RapideyeCore SmartEditionではAquilion LightningやR-miniで撮影した画像データの保存を行い、必要な画像を遠方の医療機関へ送信でき、遠隔読影を依頼することも簡単にできる。
「当院は医師自らが画像の選定をするため、CT撮影をしたあと本当に必要な画像だけPACSへ保存しています。高性能なPACSを導入したことで1検査あたり数百枚となるHRCTのデータでも同様に管理でき、スピーディーな読影が可能となっています。CTとPACSシステムをキヤノンメディカル社製で統一したため、画像処理もスムーズにおこなえています」。と井上院長は話した。また、トラブルが起きたときでもサポートセンター1つで対処できることも利点である。
三浦メディカルクリニック システム構成図
Aquilion Lightning最大の特長は設置面積の小ささだ。限られたスペースを有効に活用するために、R-miniと同部屋に設置している。こうしたことでX線検査を必要とする患者の動線が同一となった。重量のあるCTをショッピングセンターの2階に設置することは容易なことではないが、建物を建てる段階から、キヤノンメディカル社の担当がつき、撮影室のレイアウトの提案・図面作成・導入までの細かな打ち合わせをコンサル、建築会社と行ってくれたという。井上院長は「私は装置の選定をしただけ。あとはスムーズに進めていただいたので、大変助かりました」と開業当初を振り返った。

※胸部高分解能CT
(high-resolution computed tomography ; HRCT)

クリニック図面

CTを中心とした地域医療

井上院長はクリニックで所有しているCTを「自分のもの」ではなく「地域のもの」という考え方を持っている。「現在、歯科医院から要請があれば、歯科用CT撮影という形で協力しています。また、地域の先生からの紹介でCT撮影をさせてもらう機会が増えました。他院より紹介された患者さんをCTで撮影して、それに放射線専門医の読影レポートを付け紹介元の医療機関へ返す。そんな医療連携をもっと潤滑にできるように進めていきたいと思います。」と井上院長は話す。院内には地域の介護タクシーや特別養護老人ホーム・グループホームのパンフレットがあり、情報発信を進めている。地域全体で患者をバックアップする環境作りが始まっている。CTを有する医療機関を受診していなければ検査できないのではなく、近隣の医療機関にかかればどこからでもCT検査が受けられるようになる。開業医同士で総合病院のような環境を作る動きが神奈川県三浦市で始まっていた。CTが中心となって地域医療が盛り上がっていくことが期待される。
井上院長とスタッフ
三浦メディカルクリニック
神奈川県三浦市初声町下宮田5-16
TEL:046-888-0505
映像情報メディカル 2021年2月号掲載