関連するSDGs

sou

目標3  すべての人に健康と福祉を

医療機関や患者さんに寄り添った事業活動を展開し、「画像診断」「ヘルスケアIT」「IVD( 体外診断)」の分野に注力するとともに、新たな価値創造につなげていきます。
sou

目標9  産業と技術革新の基盤をつくろう

国内外の大学などの先端研究機関、他企業などとの共同開発やオープンイノベーションを推進し、社会環境の変化に対応し続ける製品・サービスを展開していきます。
sou

目標17  パートナーシップで目標を達成しよう

グローバル・パートナーシップの強化により、あらゆる国々における医療課題の解決に貢献していきます。

患者さんの負担軽減と高精細画像を両立させる技術開発を通じて
医療課題の解決に貢献します。

考え方

世界的な高齢者の人口増加が進む中、健康増進・疾病予防から、高度な検査・診断・治療といった幅広いヘルスケア分野のニーズが増大しています。質の高い医療サービスの提供には、医師による的確な診断が欠かせません。そのために、医療現場における膨大な情報や蓄積された患者さんの医療情報を有効活用していくことが求められています。医療従事者の負担軽減もまた、持続可能な社会を目指す上での大きな課題です。
当社グループは、約100年にわたりメディカルシステム事業を推進し、X線CTやMRI、超音波診断システムなど、患者さんの負担軽減と高精細画像を両立させる技術開発を行ってきました。また当社は今後も継続して「画像診断」・「ヘルスケアIT」・「IVD(体外診断)」の分野に注力し、医療機関や患者さんに寄り添った事業活動を行うことにより、これまでにない新たな価値を提供し、医療課題の解決を目指します。

世界の研究機関との共同研究

キヤノンメディカルシステムズグループでは、医療におけるイノベーションの推進のため、また新たな医療ニーズへ応えるために、世界各地で現地研究機関との共同研究を実施しています。

Austin ICU SMI プロジェクト(豪州)

本プロジェクトでは、低血圧状態またはショック状態にあるICU患者に対する組織/臓器末梢血流の質的評価および量的評価を研究しています。この評価が可能であることが確認されれば、重篤な患者の管理に革命的な変化がもたらされることになります。

ボルドー大学、熊本大学 ディープラーニングのMR応用(フランス、日本)

ディープラーニング技術を応用してMR画像ノイズの低減、超高分解能の実現、画像再構成の高速化を目指しています。

京都大学iPS研究所 再生医療プロジェクト(日本)

高品質な自己由来iPS細胞の実現に向けて、再生医療分野への貢献を目指しています。

患者さんの負担軽減

研究パートナーとの緊密な連携による新たな臨床アプリケーションの開発

TOPICS: 痛風のイメージングと定量化

抄録:
元々、コンピューター断層撮像方(CT)の放射線学的応用は、CT画像所見の定性分析に焦点が当てられてきました。これには、画像内の組織の組成分析は含まれません。しかしながら、CTにおけるDual Energy技術(DECT)の到来により、臨床情報に関する新たなタイプの貢献の模索のなかで、画像内の組織の化学分解に関する研究が、さらに進められました。
痛風は整形外科領域の疾患で、患者さんの抹消関節の表面で、尿酸が痛風結節を形成します。欧米の人口1~2%が罹患するこの関節炎は、再発を繰り返す炎症性疼痛発作を特徴とします。ドイツ、ベルリンのCharité大学病院放射線科のDr T. Diekhoffとキヤノンメディカルシステムズとの、長期にわたる臨床研究における連携の一環として、キヤノンメディカルシステムズのDECTを用いた痛風の研究を進めてきました。この研究は、ファントムを用いたフィジビリティーの検討から始められました。初期に得られた研究成果に更なる開発を重ね、最終的に日常の診療における痛風患者さんの診断、治療、フォローアップのための新しい臨床DECTアプリケーションへと変貌を遂げました。
Dr. DiekhoffとCharité大学病院エントランス
この研究プロジェクトを通じて、痛風結節の大きさ自体は、疾患の予後を左右するような指標ではないことが分かってきています。長期間にわたって痛風結節の大きさが変化しない場合でも、結節内に含まれる尿酸の質量含有率は変化します。DECTを用い、疾患の進行を評価するにあたって重要な医学的指標となる、尿酸の質量含有率を定量化します。今日では、フォローアップCT検査を実施し、尿酸の質量含有率を前回検査と比較することで、治療効果の適切な管理が可能となり、患者さんの利益に資することができます。
この新しい臨床アプリケーションは、今日の痛風イメージングにおけるルーチン診療計画の一端を担っています。
症例:Bitte anderes Bildbeispiel, gewünscht ein zeitlicher Verlauf in gleicher Projektion(同じ投影部位を時系列で示す別の画像の提供をお願いします。)

医療スタッフへのトレーニング

キヤノンメディカルシステムズグループでは、医療におけるイノベーションの推進のため、また新たな医療ニーズへ応えるために、医療スタッフへのトレーニングを実施しています。

TOPICS: 製品教育(System Optimisation Courses)(豪州)

キャノン超音波システムのユーザーである医療機関の皆さまに、患者さまに対して正確かつ確信に基づいた診断を実施していただくため、さまざまな診療科において、システムの能力を最大限活用した最適な条件での撮影が可能となるよう、経験豊富な当社の技師による講義と実習からなるカリキュラムを実施しています。
超音波システムは進歩が速く、本コースにご参加いただいた受講者には、最新のキヤノン超音波システム運用メソッドを身に着けていただき、勤務先の医療機関でご活躍いただいております。

新たな医療ニーズへの対応

TOPICS: 高品質な自己由来iPS細胞の実現に向けた共同研究を通じて再生医療分野への貢献を目指す

体外で人工的に培養した細胞や組織を利用し、病気や怪我などで失われた臓器や組織の機能を修復・再生する医療技術、「再生医療」。これまで有効な治療方法がなかった疾患の治療が可能になることから、大きな期待が寄せられています。そして、その再生医療の普及の鍵を握っているのが「iPS細胞*」です。
当社は2019年より、キヤノンおよび京都大学iPS細胞研究所と共同研究を開始し、より高品質な自家移植用のiPS細胞(my iPS細胞)の実現に向けて取り組みを進めています。
my iPS細胞は、患者さん自身の細胞から作られることから、移植時に拒絶反応を起こすリスクが少ないとされています。安価なmy iPS細胞を短期間で製造できるようになれば、多くの人が自家移植による再生医療を受けられるようになると期待されます。しかし、その実現には、品質の保証されたiPS細胞を、安定的かつ安価に、短期間で供給できる新たな技術の確立が不可欠です。
当社は、本共同研究において、キヤノングループのコア技術である光学技術や計測技術、画像診断技術を用いて、低コストな検査手法の開発、iPS細胞の分化能(どの臓器や組織に分化するか)を判別するマーカーの探索に取り組んでいます。さらに、キヤノングループのものづくりで培った品質管理技術や製造技術を活用し、iPS細胞の品質に影響を与える因子を特定・制御することで、高品質と安全性を保ちながら、iPS細胞製造の低コスト化と期間短縮の実現に向けて取り組み、再生医療のさらなる発展と普及を目指しています。

* iPS細胞:人工的に作られた多能性幹細胞のこと。多能性幹細胞は、さまざまな組織や臓器の細胞に分化する能力と、ほぼ無限に増殖する能力を持つ。

TOPICS: 米国電気電子学会にて当社先端研究所所長の藤田博之が権威ある「Robert Bosch Award」を日本人初受賞

当社の先端研究所所長である藤田博之は、「マイクロアクチュエータ、オプティカルMEMS、バイオMEMSにおけるパイオニアとしての貢献とMEMSサイエンスにおける強力なリーダーシップ」が評価され、電気・電子技術の最高峰の国際学会、IEEE(米国電気電子学会)のEDS(電子デバイス)部門賞である「Robert Bosch Award*」を受賞しました。
MEMS(微小電子機械システム)は、半導体のシリコン基板・ガラス基板・有機材料などに、機械要素部品のセンサ・アクチュエータ・電子回路などをひとまとめにしたデバイスの総称で、スマートフォンの加速度センサーやマイクなどに搭載されています。また自動車のエアバッグの作動や車体安定システム、カーナビゲーションなどにも搭載されており、自動運転の重要な鍵を握ると考えられています。他にも、ロボットやAIスピーカー、ドローン、スマートグラスなど、多岐にわたる製品に搭載され、現代の生活に欠かせないものとなっています。
これらの先端技術を当社の医用機器へ応用し、医療課題の解決へ貢献してまいります。

* Robert Bosch Award:自動車やIoTの基盤要素技術となるMEMS分野で、世界的に権威のある賞。

TOPICS: 先進的かつ高品質のクリニカルシーケンス検査サービスの提供によりがんゲノム医療に貢献

当社グループのアクトメッド株式会社(以下、アクトメッド社)は2019年7月、国内におけるクリニカルシーケンス検査*1の受託解析ラボラトリー「湘南アイパークラボラトリー」を開設。医療機関で必要とされる先進的かつ高い品質のクリニカルシーケンス検査サービスを提供し、がんゲノム医療*2に貢献しています。
湘南ヘルスイノベーションパーク*3に開設された湘南アイパークラボラトリーは、次世代シーケンサー*4を含む最新鋭の遺伝子解析機器を導入し、受託した病理検体の品質チェックや、高品質で信頼性の高い解析作業を実施しています。アクトメッド社は、当施設で実施した解析結果を基に、アジア人固有の変異情報や臨床情報を含む、臨床データベースに基づくレポートを提供。解析結果のみならず、そのレポートの内容に関する委託先からの問い合わせにも一貫して対応するなど、きめ細やかで高品質なクリニカルシーケンス検査サービスを提供しています。
今後もクリニカルシーケンス検査サービスを通じて、日本におけるさまざまなニーズに対応しつつ、がんゲノム医療に貢献するとともに、当社のコア事業である画像診断システムとの連携などを通じて、個別化医療の実現を目指します。

*1 クリニカルシーケンス検査:がん患者さん等の疾病関連の遺伝子変異を網羅的に解析することにより、その患者さんに最適な治療薬を調べる遺伝子検査。 *2 がんゲノム医療:主にがんの組織を用いて、多数の遺伝子を同時に調べ、遺伝子変異を明らかにすることにより、一人ひとりの体質や病状に合わせて治療などを行う医療。 *3 湘南ヘルスイノベーションパーク:武田薬品工業株式会社が湘南研究所を開放することにより設立された、企業発のサイエンスパーク。製薬企業のみならず、次世代医療、AI、ベンチャーキャピタル、行政など、幅広い業種や規模の産官学が結集し、エコシステムを形成することで、ヘルスイノベーションを加速する場となることを目指す。 *4 次世代シーケンサー:遺伝情報を持つDNAの塩基配列を、同時並行で大量に読み取る装置。

感染症拡大の予防・阻止

TOPICS: DNAチップを利用した家畜感染症向け新検査システムを開発農林水産技術会議会長賞受賞

牛の呼吸器病に起因する共済金は約80億円、実被害額に換算すると100億円近くに上るなど、牛の感染症による死亡は畜産業に多大な損害を与えています。また、農畜産物の輸出拡大が望まれる中、グローバル競争に向けた基盤整備が急務となっており、牛の死亡率低減による生産性向上が求められています。
当社は、海外で競争力の高い和牛等に焦点を当て、独自技術の電流検出型DNAチップ技術を活かした、「家畜感染症向け新検査システム」を全国農業協同組合連合会と共同で開発。従来法では微生物ごとに検出作業を必要としましたが、本システムでは、当社のDNAチップカード*を使用することにより、簡単、迅速、正確、安価に、複数の牛の感染症原因微生物を一度に検出することを実現しました。家畜感染症の早期発見、早期対策による生産性向上、牧場経営の安定化、畜産物の輸出強化に寄与しています。
なお、本システムは、畜産業の競争力強化につながったことが評価され、2019年11月、「令和元年度(第20回)民間部門農林水産研究開発功績者表彰」の「農林水産技術会議会長賞」を受賞しました。

* DNAチップカード:遺伝子を解析するための分析ツール。

重要課題 1
新たな価値創造、医療課題の解決